曖昧
電話越しに伝わる君の声
『…この先どうしたらいいのかな?このまま仕事続けられるのかな…』
「うーん、サチはどうしたいの?」
『わからない。でも頑張らないと…この先も楽しいこといっぱいしたいし。』
「そうだなぁ…楽しいことって例えば?」
『タケルと色んなとこに旅行しに行きたいし、普通に遊びにも行きたい。結婚とかもしたいし…』
「そうだね、俺もしたい。まぁ、そんなに難しく考えずにもうちょっと適当に生きてみたら?」
『…うん。そうだね。あ、ごめんね。今日はここで電話切るね。』
「わかった。」
プツリと電話が切れる音が耳に反射した。
最近、彼女のサチが仕事が上手くいかないと悩んでいるみたいだ。
…明日お互い休みだし直接会いに行ってみるか。
翌日、コンビニでサチの好きなアイスを買い、家に向かう。
合鍵は貰っているけど、一応インターホンを鳴らす。急に鍵が開いたら俺でもビビる。
『ピンポーン』
…でも一向に反応がない。
「あれ?どこか出かけてるのかな。サプライズじゃなくて連絡入れてから来れば良かった。」
メールで一通連絡を入れる。
『昨日の話ちゃんと聞きたいから、家に来たけど出かけてた?サチの好きなアイス買ってきてるから家で待ってるよ。』
鞄から合鍵を取り出し、扉に手をかける。
…違和感。鍵がかかっていない。
「またかけ忘れたのか?」
サチはよく鍵をかけ忘れる。
「まあ、いいか。メールで伝えとこ。」
扉を開ける。
自分の家の扉を開けるような速さで。
空気が外に逃げ出してきた瞬間、背筋がゾッとする。嗅いだことのない…いや確かには知っている、食欲が失せるような臭いが。
「うわ、なんだこの臭い。」
靴を脱ぎ奥の部屋へ。
リビングに足を踏み入れた瞬間、片手に持っていたコンビニの袋が床に落ちる。
「え。は、え…?」
その光景がようやく脳で処理される。
サチだ。首を支えにして、足が浮いてしまっているがサチだ。それと足で蹴ったであろう椅子が部屋に倒れている。
俺の声が出る。数年ぶりに聞く、自分でも驚くような声をあげながら、ゆっくりとサチを下ろした。
「どうして…どうして……」
綺麗な首に痣を作って目を閉じているサチの顔に涙が落ち続ける。
「今日ゆっくり話に来たんだよ?サチの好きなアイスだって、ほら、買ってきたんだよ?」
返事はない。
鏡に映った自分。姿を映すのは彼女を抱きかかえた自分だけ。
何とか冷静を装い、警察に連絡し、事情聴取を受けて帰宅する。
一睡もできず朝を迎えた。
カーテンを開け日差しが目に刺さり、反射的に目を閉じる。
その瞬間昨日の自分の姿が脳裏に過ぎる。目を開けた時には涙が溢れていた。
喪って気づいた。まだ全部サチのこと知れてなかったんだ。まだ知っていく最中で、答え合わせをしていく時間だったんだと。
「…どうして。」
俺は床に崩れ落ち行き場のない気持ちをただ、ゆっくりと飲み込むしかなかった。
初投稿で拙い文章でしたが、ご覧頂きありがとうございました。




