表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/38

第23話 一途も一途! めっっっちゃ一途ですよ!!!

 バスを降りて3分ほど歩くと、広い駐車場に面した着物屋さんに到着した。店内はたくさんの美しい着物たちに彩られており、その鮮やかさに、俺はつい目を奪われてしまう。


「男物の浴衣は2階ですね~。奥にエスカレーターがあるので、そこから上がりましょ」

「詳しいな」

「よく来るんですよ~。あたし、小さい時からお着物とか大好きだったので」

「へぇ。知らなかった」


 少し意外だ。

 前に三森とデートした時はフリル付きのワンピースだったし、そういうTHE・KAWAIIな服が好きなんだと思ってた。


「逆にとーまくんはお着物とか着ることないんですか?」

「俺は七五三で来たのが最後かなぁ。浴衣で祭り行ったこともないし」

「お~。じゃあ今回の浴衣デートはなかなかにレアですね」

「まあ、そうだな」

「──あっ、ここです」


 エスカレーターで2階に上ると、1階の雰囲気とはうって変わり、渋い色合いの男性用の着物がずらりと並べられていた。


「まずは浴衣と~、それに合わせる帯を選んで~。次に腰紐とか履物を決めましょうかね~」


 と、言われましても。

 何をどう選んでいいのかさっぱりわからない。大量の浴衣を前にして、完全に思考が停止してしまった。


「さてはとーまくん『俺、浴衣とか選んだことないからわかんないよー』……とか思ってますね?」

「口調に悪意しか感じないけど……まあ、概ねその通りです」


 普段着でさえ、俺はユニ〇ロでしか買ったことないのに。いきなり浴衣を選べと言われても、決められるわけがない。


「ふっふ~ん。そんなとーまくんに朗報です」

「朗報?」

「このメンズ浴衣セットを買えば、初心者のとーまくんでも必要なものを一式揃られますよ」

「おぉ」


 そんな便利なものが……! それはたしかに朗報すぎる。

 比較的デザインはシンプルだが、その辺特に拘りはないし、何より値段がリーズナブルなのがとてもありがたい。


「残念ながらセット物は試着できないみたいですけど……ま、とーまくんならなんでも似合いますよね」

「……それ、本当に言う相手合ってる?」


 言いたかないが、俺の顔面は贔屓目に見ても中の上だ。三森や陽菜や氷護先輩のように、何をしても美しく映る素敵な容姿は持ち合わせていない。


「まあたしかに、イケメンではないですけど~。あたしはとーまくんの顔、好きですよ? 誠実さが顔に出ていて」

「女たらしのヤリ〇ン男なのに?」

「またまた~。とーまくんは童貞じゃないですか〜」

「ぬぐっ」


 紛れもない事実だが、はっきり言われるとなんか嫌だな。そもそもキス以上の関係は高校生にはまだ早(以下略


「見てくださいとーまくん! きれ~い」


 気づけば三森は、成人式向けの特別展示の前で目を輝かせていた。

 黄色を基調とした、夏らしい明るい雰囲気の振袖だ。


「やっぱりいいですよね~、振袖って」

「三森は着たことあるの?」

「ありますよ~、中学の卒業式で。お母さんのお下がりでしたけどね」

「へぇ」


 中学で振袖は珍しいな。

 俺の時は数人しかいなかった気がする。


「いや~、あの時はモテすぎて困りましたよ~。 式が終わった後もひっきりなしに告白されて、なかなか帰れなかったんですよね~」

「だろうな」


 それは容易に想像がつく。陽菜も卒業式の時、顔も知らない後輩にまで告白されてたもの。ある意味で美少女の宿命なのだろう。

 ちなみに俺は、卒アルに寄せ書きする友だちさえほぼいなかったので、速やかに帰宅することができた。嬉しいなー。


「けど誰とも付き合わなかったんだよな?」

「……好きな人がいたので。あたしに、第二ボタンをくれた人が」

「へぇ」

「彼の横に立つために、あたしは中学で変わったんです」

「そうなのか……」


 三森にここまで言わせるとは、どれほどの男なんだろう。

 よほど顔が良いのか、あるいはめちゃくちゃ器がでかいのか


「三森ってもしかして、意外と一途?」

「一途も一途! めっっっちゃ一途ですよ!!!」


 ……やはり信じ難い。NTRを愛する人間だし。


 けど、俺も人のことばかり言えないよな。三森との交際が終わったら、俺も決めなきゃいけないんだから。

 ──誰かを選ぶのか。あるいは誰も選ばないのか。


「明後日のデート、楽しみにしてますね♡」


 そう言って、三森は甘えるような微笑みを、俺に浮かべていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ