第21話 オレ、そんなハーレムに憧れてて……羨ましかったんです
「この通りです! オレ、なんでもしますから……!」
佐藤さん曰く、クラスで一番かっこいいはずの男が、皆の前でテーブルに頭を擦り付け、必死に許しを懇願していた。
とりあえず中山くんの事情を聴くため、近所のファミレスに連れてきたんだけど……なんかイメージと違うな。もっとスカしたイケメンだと思ってたのに、小者感がすごい。逃亡防止のため隣に座る桐谷くんが、いつもよりかっこよく見える。
「中川さ~ん。いまなんでもって言いました~?」
「あっ、えっと……」
「すみませ~ん。イタリア風プリンとイチゴジェラートの追加お願いしま~す」
当然のように奢らせる気満々でデザートを注文する三森。俺はこいつが一番怖いよ。相変わらず名前間違えてるし。
「中山さん。どうしてこんなことをしたの?」
ニコリともせず陽菜が尋ねた。
声を荒げこそしないが、三森と違い、かなり怒っているように見える。
「その……写真を見ちゃったんです。笹原くんの」
「下駄箱に入れていたやつね」
「オレは三森さんに振られたのに、笹原くんは三森さんとも、それに他の女性とも楽しそうで。オレ、そんなハーレムに憧れてて……羨ましかったんです」
涙ぐむ中山くん。
あまり三森たちと楽しそうにした記憶ないけど、傍から見たらやっぱりそう見えてしまうのか。
「でも中山くんイケメンだし、結構モテるんじゃないの?」
「……これ、中学の時のオレです」
そう言って中山くんは、俺たちにスマホの画面を向けた。
「今と全然違うわね」
陽菜の言う通り。顔はかろうじて面影があるけど、髪はぼさぼさで、顔は暗いし、何よりぽっちゃりしてる。お世辞にもイケメンとは言いがたい。
「見ての通りオレ、中学はこんなんで……だけどやっぱりモテたくて」
「なるほど」
「だから高校デビューするために、自己啓発の本読んだり、ジム行ったり、高い美容院通って、やっと雰囲気だけでもイケメンになれたんです。なのに……なのに……」
中山くんが言葉に詰まる。
やったことは許せないけど、彼なりに葛藤があったのだろう。
「中山さんの御事情はよくわかります」
「は、はい──」
「でも男なら、正々堂々ぶつかりましょうよ!!!」
桐谷くんが中山くんに訴える。
熱いのは結構だけど、彼の場合、その正々堂々に暴力も含まれてそうで怖い。
「正々堂々……すか」
「そうです。こそこそと下駄箱に悪戯する、その陰湿なやり方……恥ずかしくないんですか? 笹原さんが憎いと言うなら、正面から気持ちをぶつけましょうよ!」
「け、けど」
「けどもだってもないです! その腐った性根、俺が叩き直してやります。さぁ、歯を食いしばってください。気合を入れて──」
「桐谷ストップ」
その振り上げた手を、佐藤さんが制止した。
「それ振り下ろしたら、バド部がなくなっちゃうよ?」
「うっ……ごめんなさい」
表情はにこやかなのに、なんとも言えない迫力があった。そうだ、暴力は良くない。……前に佐藤さんも、桐谷くんに平手打ちをかましてたけど。
「何はともあれ。結局は笹原くんがどうしたいかじゃないかな」
「俺は──」
別に中山くんに恨みはない。というか興味が無い。他人気持ちなんてそうは代えられないし、悪意なんて考えるだけ時間の無駄。
犯人が見つかって、これ以上の実害を抑えられるなら、それで十分だ。
「中山くんも反省してるみたいだし、俺はこれ以上、責めるつもりはないよ」
「ほんとにそれでいいの? 笹原くん」
「うん。みんな協力してくれてありがとう」
「──そんなのだめよ、絶対」
見ると、陽菜は潤んだ瞳で、俺を睨み付けていた。
「斗真は良くても──私は許せない」




