第20話 その卑劣なやり方、男の風上にも置けません!
放課後。
俺と陽菜は生徒玄関前にある柱の陰に隠れ、下駄箱を監視していた。はたして、犯人は現れるのだろうか──
〜〜〜
遡ること4時間前。
「いや~、実に難解な事件でした。まさか名探偵咲月ちゃんをここまで苦しめるとは……が、しか~し! このあたしの手にかかればどんな事件もスマートに解決して──」
「咲月ちゃん、探偵ごっこはもういいから。犯人はわかったの?」
「で、でも~。ここからが良いところで……」
「手短にお願い。もうすぐ昼休みが終わってしまうわ」
壁の時計を見ると、5限目の授業まで残り10分を切っている。特に俺たち2年生は3階に教室があるので、そろそろ戻らないと間に合わない。
「ぶぅ……花守先輩はせっかちだから困ります」
「何か言った?」
「コホンッ。えぇっと、先週あたし、吹部の男子に告白されたんですよ。中川さん?でしたっけ。もちろん振ったんですけど、性格悪そうな目をしてたのでたぶん犯人はその人です」
また雑な推理だな。たしかに最近三森に振られた吹部の男子なら、かなり怪しくはあるが。
「てか三森って。告白した男の名前、ちゃんと覚えてたんだな」
「もちろん普段はいちいち覚えないですよ? でもその人、とーまくんと同じクラスとか言ってたから、な~んか印象に残ってたんですよね~」
「へぇ」
……うちのクラスに中川なんていたっけ。
「中川くんじゃなくて中山くんじゃないかしら? たしかクラスの男子で吹部に入っているのは彼だけだもの」
「あ~、じゃあたぶんそれです」
適当だなぁ。
中山くんって、あのイケメンだよな。話したことはないけど、イケメンでコミュ力高くてモテるから、俺は正直あまり好きじゃない。
「中山くんってかっこいいよね。クラスの男子なら一番じゃないかな」
「……ちなみに俺は?」
「う~ん、ベスト20には入るかな……?」
あの、佐藤さん。うちのクラス男子17人なんですが。もしや担任と副担任にも負けてる可能性あります?
ついでに桐谷くんがすごく複雑な顔をしているから、佐藤さんは後で責任を持ってフォローして欲しい。
「いずれにせよ。普通に確認すればいいんじゃない?」
「どうやって?」
「犯人は下駄箱に悪戯をするのよね? なら待ち伏せして、現行犯で捕ましょう」
「ああ、なるほど」
力技だが、たしかにそれが確実だ。
……ここまでの推理はなんだったんだろう。
〜〜〜
というわけで待つこと1時間。いまだ犯人は現れない。
でもまあ、よく考えてみたらさ。テストも近い中、いろんな人が俺を助けてくれるなんて、すごくありがたいことだよな。今度改めてしっかり感謝しよう。
「ねぇ、斗真。誰か来たわよ」
あれは……中山くんだ。周りの様子を覗いながら慎重に生徒玄関を移動している。
そして俺の下駄箱に辿り着き、それを開けた時──反対側に隠れていた三森が、彼に接触した。
「あれ〜、何してるんですか?」
「さ、咲月さん!?」
三森が中山くん注意を集めている隙に、俺たちもゆっくりと接近する。よく見ると中山くんの左手には、ゴミ袋のような何かがあった。
「うれし~です~。あたしのこと、覚えていてくれたんですね♡」
「も、もちろんですよ」
「実はあたし~、中川さんに大事な話があって~。いまお時間良いですか~?」
「は、はい! 喜んで!」
嬉しすぎたのか、中山くんは名前を間違えられたことにも気がついていない様子。
「その前に一つ聞きたいんですけど~」
「はい、なんでしょう」
「──その手に持ってるもの、なんですか?」
コクっと首を傾げる三森。
背中しか見えないけれど、きっと超絶あざと可愛い笑顔を見せているのだろう。
「えっと、これはその……そう! ゴミを捨てに行くところです」
「えらいですね〜。でもここ、ゴミ箱じゃなくて笹原くんの下駄箱ですよ~」
「えっと、その」
「悪戯するの、初めてじゃないですよね♡」
「……ぐっ!」
あ、逃げた。
中山くんは上履きのまま外へと駆け出した──が。
「行かせませんよ!!!」
逃げた先、扉の前には桐谷くんを中心にバド部の3人。
中山くんの足が止まった。
「その卑劣なやり方、男の風上にも置けません!」




