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第18話 名探偵咲月ちゃんの出番です♡

「まじかよ……」 


 寝坊した三森を置いて、今日も朝一で陽菜と登校すると、またも俺の下駄箱に異変があった。


 ──下駄箱にお菓子の空袋が詰められている。


 間違いなく、誰かが《《悪意を持って》》入れたものだ。


「……斗真、大丈夫?」


 下駄箱の悪戯に気が付いた陽菜は、呆然と立ち尽くす俺を、心配そうに見つめている。

 同じだ、あの時と。


「大丈夫」

「でも──」

「大丈夫だから。……心配しないで」

「斗真……」


 もう二度と、陽菜に迷惑はかけたくない。これは俺の問題だから。

 とりあえず、しばらくは靴を毎日家に持ち帰ろう。次は生ごみが詰められるかもしれないし、あるいは画鋲が仕込まれるかも。最新の注意を払った方がいい。

 でもその前にごみの片付けだ。早くしないと他の生徒に見られてしまう。急がないと。


「キャッ」

「陽菜!?」


 振り返ると、陽菜の足元に数枚の写真が散らばっている。どうやら下駄箱から落ちてきたらしい。

 見るとそれらはすべて、俺が美少女と2人でいる写真で──もれなく俺の顔には、マジックで×が付けられていた。



「これは大問題ですよ!!!」

「お、おう」


 昼休み。どうやら三森と氷護先輩の下駄箱にも同じ嫌がらせがされていたらしく、バド部の部室にて緊急会議が開かれた。

 テスト前で全部活が休止中なので、ここなら話を聞かれる心配はほとんどない。当然のように佐藤さんと桐谷くんもいる。


「絶対に許せません。あたしを出し抜いて、花守先輩がとーまくんと登校デートするなんて!」


 そう言って、三森は壁際のベンチにドンっと腰かけ、偉そうに腕と足を組んだ。いや下駄箱の件に怒っているわけじゃないのかよ。


「でもそれは三森が寝坊したからで──」

「関係ありませんねぇ。どんな理由があろうとぉ、可愛い彼女がいるとーまくんがぁ、愛人と2人で外を歩くなんてぇ、許されませんよぉ?」

「それは……すまん」


 ねちっこい喋り方がとても気になるが、たしかに軽率だった。三森が音信不通だからそのまま陽菜と登校したけど、周りに浮気と誤解されてもおかしくない。反省しよう。三森も寝坊の件は反省して欲しい。


「……後一週間……後一週間……後一週間……」


 心を落ち着けるためか、陽菜がブツブツ呟いてる。怖い。三森の交際が終わった瞬間、俺は陽菜に監禁されるのではなかろうか。


「えっと、本題に戻ろっか。まず確認だけど、笹原くんの下駄箱にはお菓子のごみが入ってたんだよね?」

「うん。それはもういっぱいに」

「で。三森さんと花守さん、それに雪先輩の下駄箱には、笹原くんの浮気現場の写真が入っていたと」

「浮気じゃないわ。ただ一緒に登校していただけ」

「あの~、花守せんぱ~い? 世間じゃそれを浮気と呼ぶんですよ~」

「何ですって!」


 三森と陽菜の言い合いに、もはや佐藤さんは関与しない。この落ち着きよう、さすがは強豪バド部のマネージャーだ。


「……ご主人様に……野外散歩してもらう……写真もあった」

「笹原さん!?」

「ちょっ、ごめん桐谷くん。これは違って──」

「何が違うんですか!」

「外が暗いから駅まで送っただけで」

「どうして夜中に氷護先輩とそういう状況になるんですか?」

「まあ、それはいろいろ……」


 言えない。家に帰ったらメイド服の氷護先輩が待ってたなんて。

 言ったら今度こそやられる。


「みんな落ちついて。それで、笹原くんの下駄箱は昨日も悪戯されてたんだよね?」

「は、はい。悪口を書いた紙が入ってただけですけど」

「じゃあ犯行は、月曜日の朝より前ってことか……」


 うーんと皆が天を見上げる。現状だと情報が少なすぎるんだよな。

 だが数秒後。この沈黙を三森が破った。


「あ~なるほど~。ということは犯人はバドミントン部か陸上部、それか吹奏楽部ですね~」

「「「なんで!?」」」


 皆の視線を集めると、三森は満足げにパチッとウィンクを決めたのだった。


「名探偵咲月ちゃんの出番です♡」

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