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第16話 in JAPAN で一生暮らすあたしに、英語は必要ありません!!!

「とーまく~ん。あたし勉強飽きました~」

「えっ、もう?」

「咲月ちゃん。始めてからまだ10分よ」

「でも疲れました~。もう無理です~」


 椅子にもたれながら、赤子のように手足をバタバタさせる三森。こいつ、まじで何しに来た?

 しかも10分というのはあくまで生徒ホールに着いた時間に過ぎず、その後で教科書がないだのシャー芯が切れただの騒いでいたから、実際に英文を読んだ時間は3分にも満たないと思う。飽きるとは一体……。


「そもそも生粋の大和撫子であるこの()()()()、なんでこ〜んなにも英語を頑張らなきゃいけないんですか!?」

「ちょっと待て。お前がいつ英語を頑張った?」

「in JAPAN で一生暮らすあたしに、英語は必要ありません!!!」


 フンッと三森が鼻を鳴らす。いやなんでちょっと得意げ? 勉強やばいから助けてくれって言ったのは三森だろ。

 

「咲月ちゃん。戯言ざれごとはまず、be動詞を満足に使えるようになってからにしましょうか」

「でも大和撫子に英語は必要ないので──」

「小学生で習うような範囲よ? 恥ずかしくないの?」

「うっ」


 陽菜がにこやかに三森を詰めている。まあ言葉はきついけど、怠惰や不真面目って陽菜が一番嫌いなやつだもんな。

 それに将来の役に立つか否かで、学びの幅を狭めるべきでないとは俺も思う。勉強して初めて、自分の得意不得意に気付けることも多々あるし。


「あっ、笹原くん! それに花守さんと三森ちゃんも。おはよー」

「あら佐藤さん。おはよう」

「おはよ~ございま~す」


 どうやら佐藤さんも朝勉に参戦するらしい。数学の青い問題集を両手に抱えている。


「みんなお勉強?」

「ええ。そんな感じ」

「頑張りすぎて疲れました~」

「だからお前はまだ何もしてないだろ」


 三森は机に全身を委ねてグデーっとしている。正直に言って、これに朝から付き合わされてる俺と陽菜が一番疲れてると思う。


「佐藤さんも勉強?」

「そうだよー。今日から部活がテスト休みだからね。桐谷もいるよ」

「えっ?」

「……おはようございます。笹原さん」


 続いて生徒ホールに入ってきた桐谷くんは、鋭い目つきで俺に挨拶をしてきた。


「お、おはようございます」


 先日胸ぐらを掴まれたトラウマで、俺の方が歳上なのについ敬語になってしまう。だが桐谷くんは俺に殴りかかりはせず、代わりにチラッと女性陣に目を向けた。


「氷護先輩はいないんですか?」

「えぇ。今日は私と咲月ちゃんだけよ」

「そうですか……」


 それだけ言うと、笹原くんは俺とは長机3個分くらい離れた席に鞄を置いた。やはり嫌われてはいるらしい。

 

「雪先輩、土日の練習来なかったんだよね」

「そうなの?」

「うん。それに休みの連絡も無くて……こんなの初めてだから、桐谷も私もちょっと心配なんだ」


 氷護先輩、本当に練習行ってなかったのか。まさか本当に部活を辞める気じゃないよな……?


「あ~なるほど。でもとーまくんは関係ないですね。土日はあたしとデートしましたし」

「えっ! 聞いてないわよ斗真!?」

「も~。嫌だな~花守せんぱ~い。彼氏とのラブラブデートを愛人に報告するわけないじゃないですか~? ね、とーまくん♡」

「……あー、うん」

「斗真!?」

「えっ、あっ、いや、ごめん。考え事してた」


 俺は昨夜の件がバレないかで頭がいっぱいだった。

 メイド服の氷護先輩が俺の家に押しかけたなんて知られたら、三森にも陽菜にも、それに桐谷くんにもボコボコにされてしまう。何としてでも隠し通さないと。


「ふふふ。3人とも仲良しだね」

「花守先輩はともかく、あたしととーまくんはラブラブですよ♡」

「偽りの交際でよく言えるわね。斗真が本当に信頼してるのは私なんだから。ねっ斗真♡」

「勘弁してくれ……」


 少なくともこの2人と、ついでに氷護先輩のせいで、俺が校内で悪目立ちし始めているのは間違いない。俺の平穏な学園生活を守るために、少し距離を置きたくはあるんだけど……まあそんなことは許されないんだよな。


「じゃあ氷護先輩のこと、何かわかったら教えてね」

「うん、わかった」


 絶対に教えません。


「じゃあ勉強頑張ろうね」


 そう言って、佐藤さんは桐谷くんの隣に移動した。この2人こそ早く付き合っちゃえばいいのに。


「は~、やっぱり朝は集中できませんね」

「え。もう教科書閉じるの?」

「やっぱり住み慣れた家で勉強するのが一番です!」

「……家じゃ集中できないから、学校で勉強教えて欲しいと言ったのは三森なんだが」

「テヘッ♡」

「はぁ」


 こいつ、まじで留年とかしないよな……?

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