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8.アンジェリーナ姫

一ヶ月我慢してよと言われて毎日をどうにか過ごしていたらジ・ゼラル・ローシャン王国から姫様がやって来た。

ジェイミーを無視しているクラスの令嬢達は姫をちやほやと迎えた。

口々に姫を誉めて家から持って来た贈り物を差し出すと順に自己紹介を始める。

これは先日から爵位の高い順にしようと取り決めてお辞儀の仕方や角度や笑顔に至るまで練習を積み重ねていた。


(練習する必要がないから貴族なんじゃないの?)


ジェイミーは冷めた目線を姫のこちら側にいる令嬢達に向けた。

通訳の若い女性は同じような挨拶を端折って名前だけを伝えている。ジェイミーの祖母がジ・ゼラル・ローシャン人なので言葉がわかるのだ。


「貴方がジェイミー・トラックス嬢ね。貴方のお父様のおかげで新しい工場が上手く軌道にのったわ。必ずお礼を言うようにってお父様から言われているのよ。心から感謝するわ!お父様からのお手紙は直接貴方のお家に届けたの。ねえ!ピンクの髪なのね!羨ましいわ!なんて素敵なの!私の国でもピンクに染めたがる人が多いのよ。でも貴方は本当に綺麗ね。お母様にも見せてあげたいわ。私の国に遊びに来ない?招待するわ!」


あまりにも色々言われすぎてジェイミーは何と答えていいのかわからないが取り敢えず悪い子ではなさそうだ。ピンクの髪を羨ましいとまで言われたのは初めてだ。


「貴方だけどうして離れた席にいたの?視力が物凄くいいとか?私が隣に座ってもいいかしら?それより私の国の言葉がわかるみたいね。通訳の方は必要ない?」

「はい。祖母がジ・ゼラル・ローシャン人なので。」

「わあ!嬉しいわ。仲良くしてね。私アンジェリーナよ。ジェイミーって呼んでもいい?王子から聞いたわ、あの子達貴方を無視してるのよね。くだらないわ、馬鹿みたい。王子が貴方を可愛がるから嫉妬してるのよ。どうせ王子様達が人気者なんでしょう?よくある事だわ。それに物凄く格好いい訳でもないのにね。私の婚約者をあの中から選んだらどうかってお話もあったけどお断りするつもりなの。何人かとお話したけれどあんまり好みじゃないわ。でも第一王子様は素敵だったの!貴方はどう思う?」


お姫様が物凄くよく喋る人だという事だけは理解したジェイミーだった。



軽薄とぱっくりが言っていたようにアンジェリーナが来てからはお嬢様達のジェイミーへ対する態度も少しずつ和らいでいた。

だがそれはアンジェリーナがいる間だけなのを知っている。

アンジェリーナが帰れば前よりもっと酷くなるだろう。



歳上の王子様達は忙しいのかあまりジェイミーの所へ来なくなった。



「カート様も私の国の言葉が話せるなんて凄いわ。」

「まあ一応王族だし。一応ね。少なくとも三ヶ国語は覚えさせられるよ。」

「ああ、将来の為よね。あそこで女の子に口説かれている王子も話せるのかしら?」


ランチルームの窓から見える反対側のバルコニーでぱっくりが歳上の女生徒に囲まれてデレ面をしている。


「彼は話せないんじゃ無かったかな。でもあの茶色の髪に金色のリボンを付けている侯爵家の令嬢から婚約の話があるそうだから話せなくても問題ないかもね。」

「モテモテが嬉しくてしょうがない顔ね。何故モテるのか私には理解が出来ないわ。」

「好みの問題でしょ?背が低くても顔が良ければモテるしね。」

「好みもだろうけど身分もじゃないかしら。妃になりたい子なんて沢山いるわ。ジェイミーはどう思う?」

「あの人達に興味ないし早く学園を辞めたい。母さんが言っていたけどイライラが続くと白髪が増えるって。ピンクの髪も好きじゃないけど白髪もいやなの。もう令嬢なんて見たくない。早く父さんと母さんに会いたいし兄さんにも会いたいの。」

「そうね、このクラスの令嬢はちょっと低俗だわ。何も得るものがないから私も国に帰りたいの。」



こう話していた翌日アンジェリーナはジェイミーとカートだけをぎゅっと抱きしめて短い挨拶をすると国へ帰って行った。


「絶対に遊びに来て!手紙もちょうだいね。ずっと友達よ!カートも聞いてる?貴方もよ!私達は友達だからね!」


ジェイミーの初めての女の子の友達だった。


嵐のような数日間だったとぼやっと遠くを見つめていたら教師から呼ばれて行くとジェイミーは家に帰れる事になったのだった。

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