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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第五十五話『証言』

「被告人ローグ・カラミティ。貴方は長きに渡る王国内外の人身売買並びに脅迫殺害を行っていた。これらの罪状に何か意義はありますか?」

「あ、ありますっ!宰相様が読み上げた罪状に私は全く心当たりがございませんっ私は何一つやっていない!」

「やっていない……残念ですが貴方がやって来た事の証拠や証言は、全て証拠としてこちらに渡されています。その言葉には偽りしかございません」

「っ……!違う、わっ…私は本当やってない……っ何かの間違いだ、私は嵌められたんだ…」



 今更で本当に申し訳ないんだけど、施設長の名前ってカミラティって言うんだね、知らなかった。

 音的にだいぶ可愛い感じだけど、本人が全然可愛くないから似合ってないのが、面白いポイントだね。

 まぁ、苗字に似合うとかないか……自分で決められないし、親達でも決められないもんね。

 多少考える人はいるらしいけど、いつ生まれてくるかも変わらない子供のこと考えて、苗字を選んで結婚を決める人とか超稀だろうし。

 再婚とかだと話変わってくるけど。

 


「ねね柊、施設長ってこの裁判が終わったらどうなっちゃうの?」

「うーん、罪を幾つも犯してるし一つ一つの罪が重いから多分……終身刑か、最悪死刑?かな。人も殺しちゃってるしね」

「そっかあ、でもしょうがないんだよね」

「そうだね。罪が軽くなる事はこの国では殆どないからね」

「あんたらコソコソとなんの話してんだい?」

「ん?あの人が今後どうなるのかって話」


 2人で話をしていると隣に座っていたアグリさんが小声で話しかけて来たので、簡潔に答えたら納得した様で直ぐに前を向いてしまった。

 興味失うの早。

 雛菊に話したのはあくまでも施設に置いてあった本の内容を言っているだけ、だいぶ古い本だったから法律が変わっている可能性の方が高いし。

 地球の終身刑とこっちの世界の終身刑が同じ重みの物かも分からないしね。

 ま、死刑で死ぬ事になろうが終身刑で一生独房の中に居る事になろうが、あの人の寿命は持って数日でしょ。



「それでは証人の方は前にどうぞ」



 宰相さんがこっちを見て言葉を発している。

 え、何も聞いてないけどこれは私たちが最初って事なのか?

 


「証人サイモンさん、前の証言台までお越しください」

「はい」


 宰相さんは私達を一瞥すると直ぐにサイモンさんを見て、証言台に誘導した。

 あー、びっくりした。やっぱり1番最初はサイモンさんだよね。

 最初からそう言う約束でここに来てるわけだし、段取りが向こうに伝わってないかと思ったよ。



「サイモンさんはカミラティ氏が経営されていた施設に3年以上いた古株の方です。施設で商品と言われていた人間の統括を担当しており、カミラティ氏の補佐などもしていたそうです。仕事の内容や仕事をしている時に見た事、物、聞いた事などを詳細に教えていただけますか」



 宰相さんは施設長をゴミを見る様な目で見るのに対し、サイモンさんに向ける目は本当に優しい眼差しだった。

 同情もあるんだろうけど優しい声で話しかけていて、いい人なんだろうという事がここからでも分かる。



「はい。私は商品の統括から来客の接待まで様々な事を施設で任されておりました。統括の方に関しましては商品達が怪我をしない様に見張り、監視役の方々に指示を出したり、商品達が行う業務の進捗を報告書にまとめる事もしておりました。来客対応に付きましては、ゲストの方々の好みに合わせ商品を取り繕うことが主な業務でございました」

「なるほど、ありがとうございます」

「…なんとひどい」

「…ゲストの好みの人間……嫌な話だ」



 詳細を丁寧に説明しないとサイモンさんがお客の好みを把握して、好みに沿った人間を勧めていたみたいになるんだな。

 実際はもちろん違うけど、お客の好みを聞いて施設長に伝えるのがサイモンさんの仕事、その後は施設長が沿った人間を選ぶからサイモンさんはただ聞いて答えて、資料を渡しただけ。

 それでも共犯扱いにはなっちゃいそうで怖いけど。



「それから、施設で目にした書類についてですが……他国への武器の売買に関する物にうっかりと目を通してしまいました」



 サイモンさんの発した言葉に周りにいる貴族達はザワザワとし始め、何人かは顔を真っ青にして俯いている。

 きっと武器売買に小さくても関与しているのだろう。

 ちょっと小遣い稼ぎをしよう、今までもバレなかったんだから今度も大丈夫と思っていたのかな。



「そんな書類が……他国とはどこの国だったのか見ましたか?」

「いえ、申し訳ございませんが一介の商品でしかない私には、最初の方を読んだだけで詳細まではとても読み進めることが出来ませんでした。隅々まで読んだことが知れた日には、私は直ぐにお払い箱になり消されていたでしょう。私はお客様方のニーズに合わなかった売れ残りでございますので」



 なーんて、白々しいこと言ってるけど自分の需要1番理解してるでしょうが、書類隅々まで読んだって施設長に知れたら消されるんじゃなくて、これ幸いにと仕事増やされるから見ないふりしただけっしょ。

 てか、私にこの書類はどうしたらいいかって聞いて来たじゃん。絶対隅々まで見てないの嘘だわ、今思った。私に判断させたって事はそう言う事だ。

 今理解した。



「以上になります、サイモンさんありがとうございました。先にお戻りください」

「はい」



 宰相さんに言われてサイモンさんは施設長に軽く頭を下げてからこちらの席に戻って来た。

 てっきり無視するのかと思ったけど、どこまでも律儀でどこまでも執事だなこの人は、自分感情ではなく執事としてどう動くべきかをいつも考えている人。


 サイモンさんの後はマイロくん、アグリさん、ベニさんと続きマイロくんは補佐の事を、アグリさんとベニさんは日常の事を話していた。

 施設で商品達がどんな扱いをされていたかを詳細に話していた。

 洋服や食べ物に関しては貴族のお嬢様方が大層驚いて、悲鳴をあげている人もいた。

 いいね、施設長がやって来た事がどれだけ酷いのかのスパイスになる良い悲鳴だ。



「次で最後になります。証人雛菊さん、柊さん証言台にお願いします」

「「はーい!!」」



 私と雛菊は呼ばれた時はその場に似合わない程に元気に返事をしようと、事前に決めていたので裁判場に響く程に元気な返事をして証言台に向かった。

 向かう途中、周りが騒がしくなる。



「まだ子供じゃないかッ」

「あんなに小さい子が商品として…?」

「なんて…惨いのかしら」

「あんなに小さい子供ではカミラティに丸め込まれて、意見を変えてしまう恐れがあるのではないか」

「変えた所で結果は決まっているんだ。どうと言う事はないだろう」


「ッ雛菊!柊!」



 騒がしくなった会場の中から、施設長の酷く期待を含んだ声で名前を呼ばれた。

 もう結果は変わる事がないのに、私達の意見が施設長にとって良い物であったり、良い物に変わったらワンチャン罪が軽くなるとか思ってないよね?

 私達はあくまでも引き立て役でしょ、施設長は酷い人間…大人だけではなく小さな子供まで商品として扱っていた。

 その子供達が勇気を振り絞って悪へ立ち向かう。

 と言う貴族向け、後に新聞に今日の事が書かれる時に平民達がそんな悪を国王様が成敗してくれたと言うパフォーマンスの為の。

 


「こちらの子達は双子の雛菊さんと柊さんです。サイモンさん達同様に、カミラティ氏の施設に3年以上居た子達になります。2人もカミラティ氏の仕事の手伝いをさせられていたそうです。仕事の内容などを教えていただけますか?」



 宰相さんはサイモンさん達の時と同様に、優しい口調で問いかけてくれた。

 優しそうなんだけど……なんとなく、瑞生さん達と同じ雰囲気がするな。

 ……腹黒の雰囲気が。



「はーい!雛菊は里親さんからの手紙とか、取引先さんの手紙とかの仕分けがお仕事だったよ!後は施設長室の整理整頓!」

「はい!柊はその手紙の内容をチラッと見て、重要かそうじゃないか、急いでるか急いでないか、とかを仕分けるのがお仕事だったよ!後は書類運び!」

「あのねあのね!この前おかしなお手紙があったの!」

「そうなのそうなの!いつもと違って変だった!」

「その手紙の差出人や内容などは覚えていますか?」

「覚えてるよ!えっとね、雛菊達商品を買ってく人はいつも家族になってくれる人が多いんだけど、そのお手紙にはいっぱい人を売って欲しいって書かれてて、お金は言い値で払うって書いてあった!ディオナスさんって人から来たお手紙だよ!」



 雛菊の発言に周りに座っていた貴族連中は動揺を隠せない様で、立とうとしたら座り直したりと落ち着かない感じだった。

 貴族なのに何回動揺した姿を見せるつもりだろう、何度も見せてしまうほどの大きな事なのか……私達と同じ様に大袈裟にやってるのか。

 それは今はどうでも良かって、さすが雛菊完璧。

 私との打ち合わせ通り、ディオナスの事を言ってくれたし何にも知らない子供っぽく人名のように言っててナイス。

 ディオナスってのは人ではなく国で、教国なんだよ。

 じゃ、今度は私の番だね。



「柊が見たお手紙には、武器をいっぱい売って欲しいって書かれてたよ!毒草や薬草も言い値で買うって書いてあった!」



 一度静かになった場が私の発言でまた貴族達が動揺を見せ、あっちこっちで会話が聞こえて来た。



「ディオナスって隣国のディオナス教国の事だよな?」

「それしかなかろう、しかしあちらとは同盟を結んでいたはずじゃ。あの子供の言う事が仮に本当だったとしても、そんなに人と武器を集めて戦争でも始めるつもりなのか?どことやり合う気なのか……全く懲りん連中じゃ」

「本当にあの子供達が言ってる事は本当なの?子供がそんな大事な書類を見せてもらえるのかしら……」

「確かに、あのような幼い子供に文字が読めるとは思えん」

「いや、カミラティも子供には読めないと思ったから仕分けをやらせていたのではないか?ある単語………例えば早急や重要と言った物だけを覚えさせていたら内容を読む事なく仕分けが出来るだろう」


          


 同盟国の不審な動きに動揺を隠せなかった物達が好き勝手に話している。

 最後に聞こえて来た、ある単語だけを覚えさしてと言った人間は探偵の才能があるね。

 文字を読めないふりをしていた私達に施設長は、早急や重要、急ぎ確認などの数個の単語を覚えさして同じものがあったら急ぎ返信の方に、その単語がない様なら遅れても良い方に入れろと指示をしていた。

 普通に読めてたからそんなんしなくても良かったんだけど、色々と情報が欲しかったし役得のお仕事だったよ。

 ありがとうございました。



PVが5,000行きました!

皆様のお陰です!本当に有難うございます!m(_ _)m

贅沢ですが、次は1万を目指して頑張って書いて行きますので、拙過ぎる文章ですがこれからもご贔屓にしていただけると嬉しいです!(*'▽'*)

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