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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第五十三話『宴』

「2人ともどこも痛いところとかないの?苦しいとか、遠慮なく言ってね?」

「雛菊達全然大丈夫だよ!」

「うん!とっても元気!車椅子に乗ってるから全然説得力ないけど、どこも痛くないよ!念の為乗って帰って来ただけだから、明日からは車椅子なしで生活するよ。京お姉ちゃんにはお許しをもらっています!」

「そう、それなら良かったぁ……」



 本当にクルミさんは心配性なんだから。

 てか私地味に気になってることがあるんだけど、3週間眠っていたって事はみんなの手術はとっくのとうに終わってるって事で良いんだよね?

 私が目覚めないのが手術の影響かもって判断されていたら、中止になってるよね。

 検査とかのバタバタでずっと気になっていたけど、誰にも聞かずに今日まで来ちゃったんだよね。



「んあ?私達の手術?そんなのとっくにおわってるぞ!柊が居眠りしているうちにな!」

「ソヒョン……柊、居眠りしてた訳じゃない……」

「そうだった!なんかなっ、初めは中止したほうがいいんじゃないかって大人達は言ってたんだけど、検査しても異常が見当たらないし、みんなのマイクロチップ?の影響とか考えて続行したんだと!」

「……みんな悩んでた。でも……サイモンさん達が続行しようって………柊はそれを望むはずだって……言ってた……」



 疑問に思っていたことをソヒョンに聞いたら、隣にいたルオシーも答えてくれた。

 京さん達が説得したんだと勝手に思ってたけど、サイモンさん達が言ってくれたのか……ありがたいし、流石私の事よく分かってるね。



「て事は私が最後だったんだね」

「そうだぞ!柊が起きるまでご馳走お預けだったんだからな!」

「……ずっとお預けだったお肉……食べれる……」

「あー、とそれは本当に申し訳ない。ん、じゃあ今日はご馳走?」

「え!ご馳走なの?」

「そうらしいぞ!」

「いま………調理場、戦場だよ……はは」

「マジか」


 目が覚めてから時間はあったけど、仕込み出来る物とそうでない物の量が多すぎて今日一日はずっと戦場と化しているらしい。

 ルオシーの話を聞いて面白半分で見に行った子供達が真顔で見るんじゃなかったって言って帰って来た。

 私達は怖いので行かない。



 その後、マイロくんに全員の手術がなんの問題もなく無事に終わっていることを聞かされた。

 ソヒョン達には教えられない問題とかがあるかなと思って聞いたけど、本当に何事も無いみたいで良かった。

 みんなが無事って聞くと、本当に異常があったのは私だけだったんだなぁ。原因分かんないの怖すぎぃー、夢を見てて起きたくなかったってことでもういいかな。

 無事起きられたことだし、今はこの騒がしい場を全力で楽しむ事にしよう。






「テメェらー!今日は宴だ!全員の手術成功と柊が無事目覚めた祝いだ!腹がはち切れる程食って、ぶっ倒れるまで酒を飲めーー!」

「「「「おおーー!!!」」」


 

 総一郎さんの掛け声に組の面々は、ビールが並々に注がれたジョッキを高々と上げて声を上げた。

 


「ふぅ〜、総一郎様ぁ太っ腹ぁ〜」

「あたし達は介抱しないからね!自分の足で部屋に戻れなくなるくらい飲むのはやめなさいよ!」

「まぁまぁ〜、今日くらいはぁいいんじゃぁない?せっかくのぉ、お祝いの席なんだしぃ〜」

「そうですよ。どうせ馬鹿どもは言ったって聞かないんですから、言うだけで労力の無駄という物です」



 声を上げた面々とは対照的な健剛さん達は、盛り上がっている人間達に釘を刺すように声を荒げていた。

 海斗さんの言う通り、言ったところで飲むやつは飲むしセーブするやつはセーブするので、結局は自己責任だね。

 

 若衆達が1番盛り上がってるけど、その中に実さん、一樹さん、虎徹さんもいて、視界に入れたくないけどベニさんも混じって口いっぱいに食べ物を頬張って、酒も浴びるように飲んでいる。

 病み上がりの人間が無理をするな。


 一方、健剛さんや海斗さん、瑞生さん、サイモンさん達は自分の限界をしっかりと把握しているタイプなので、程々に楽しんでお酒はゆっくり味わいながら飲んでる感じだ。

 こちらは一気に大人の色気って感じの人達だね。

 その中には料理を作り終えてゆっくり静かに飲んでいる文哉さんもいた。

 広間の真ん中の方では同じく業務を終えた銀次郎さんが顔を赤ながら、ビールジョッキ片手に若衆と肩を組んで大笑いをしていた。

 文哉さんは多分あの絶好調フルスロットルみたいな銀次郎さんに絡まれたくないから、端の方で静かに飲んでいるんだろうなぁ。

 私も出来れば酔っ払いには絡まれたくない、特にあんなめんどくさそうな人にはね。

 とりあえず、酔っ払いは程々に相手にして雛菊が絡まれないようにガードをしつつ、一緒にご馳走を食べて楽しも。

 


「ひらいく!これ、ころお肉おいひいよ!」

「どれどれ!ーーーっ!んー!おいしい!」



 料理はどれも美味しいし、口いっぱいに料理を頬張ってリスみたいになってる雛菊は可愛いし最高だね。




「おぉーーい!!ヒナヒイ!食ってるかぁ!飲んでるかぁーー!」



 はぁー楽しい時間はあっという間、早速懸念していた酔っ払いは1号がやって来ましたよ。

 銀次郎さん酒臭っ!まだ始まって数十分も経ってないのに短時間でどんだけ飲んだんだよこの人……。

 1日飲み歩きました、みたいな酒の臭さ。



「いっはい、たべてるお!」

「口いっぱいに頬張って偉いなぁー、可愛いなぁ!」

「柊達子供だからジュースいっぱい飲んでるよ!」

「そうかそうか!いっぱい飲んで、いっぱい食べろ!そしていい女になれ!」

「いい女……頑張るよ!」

「ナイスバディなお姉さんになる!」

「素直ないい子達だ!がんばれ!」

「何幼女にセクハラしてんだこの酔っ払いっ!!2人も真面目に答えなくていい!!」

「「はーい!ごめんなさーい!」」

「文哉お兄ちゃんに怒られちゃったね!」

「ねー!」



 真面目に答えた訳じゃないけど、悪ノリしたのは事実なので普通に反省した。雛菊にも悪影響だしね。

 でも……ナイスバディ………かぁ。お母さんが中々に良い体をお持ちの女性だから、私達にも望みはあると思うんだよなぁ。

 今は誰が見ても素晴らしい幼児体型なんだけど、将来背も伸びて胸も大きくなる未来が待ってる……可能性がある。

 お母さん身長は小さいから背が高いナイスバディなお姉さんは無理でも、ロリ巨乳にはなれるかも。 銀次郎さんが想像している良い女とはちょっと路線がずれてるだろうけど、良い女である事に変わりはないからね。

 


 私が胸の事や身長の事を考えてる間に文哉さんに殴られて気を失い、動かなくなった銀次郎さんは引き摺られて回収されていった。

 ご愁傷様です。

 銀次郎さんを見送っているとその視界を遮られて、笑顔の優男が視界に映った。



「雛菊ちゃん、柊ちゃん楽しんでる?」

「海斗お兄さん!とっても楽しんでるよ!」

「お寿司美味しい!」

「それなら良かった」

「海斗お兄さんは楽しい?」

「ん?もちろん楽しいよ。飯も結構食べたし、酒も程々に飲んでいるしね。でもこんだけ用意しても無くなるのが早いね〜あそこの4人がいっぱい食べるからかな」


 話しかけて来た海斗さんは、未来さん達を見て楽しそうに笑って持っている徳利を煽った。



「わお!未来くん達早いしいっぱい食べてるね!」

「この間のお昼よりもいっぱい食べてるよ!……本当にブラックホール………」

「ブラックホール?」

「うん!この世の物をなんでも飲み込んじゃう惑星?のことだよ!」

「へぇ、柊ちゃんは物知りだね」



 未来さん達をが本当に良く食べているから、思わずブラックホールと言ってしまったけどこの世界にブラックホールってないのかな……?

 物知りそうな海斗さんが引っ掛かってるって事は存在しない可能性があるな。

 詳しく知らない説を押そう。



「楽しんでるなら良かったよ。さっきみたいに変な酔っ払いに絡まれないように気をつけてね?」

「うん!分かった!」

「周りのみんなが助けてくれるから大丈夫!」

「そうだね、じゃあ僕は総一郎様の側に戻る事にするよ。あ、それからもう1つ。この間のお茶の約束忘れないでね?近いうちにお誘いするよ」

「楽しみ!」

「待っております!」



 柔らかく微笑んだ海斗さんは、持っていた徳利をカートの上に置いて、隣のカートからその甘々フェイスに似合わないドデカイ日本酒瓶を持って、総一郎さんの元にしっっかりとした足取りで戻って行った。

 私達と数分話しただけなのに徳利のお酒何杯も飲んでたな……。

 酔っ払いよりもあの人が1番怖いんですけど……

 てか、ちょっと喋って帰るだけ?総一郎さんに様子見てこいとでも言われたのかな。

 総一郎さん本人は色んな人に囲まれてて身動き取れないみたいだし、なんかこっちに向かって手振ってるし。

 見かけによらず本当に心配性だね〜。

 私達以外のサイモンさんやアグリさん達にも話しかけてる……結構世話焼きな人だ。



「ふふっ、ねぇねぇ柊!お母さんのお仕事の飲み会に連れて行ってもらった時みたいで楽しいね!」

「そうだね、この宴が私達の手術のお祝いって不思議」

「みんないい人でしょ?」

「……まだ分かんないよ」

「でもでも!雛菊達を心配して、手術頑張ってくれたよ?結構無理してくれたし!ご馳走も雛菊達の好きな物いっぱい作ってくれたし!」

「……それも、私たちを信用させる為の演技かもしれない。私はお母さんと雛菊の事しか家族と思えないし、他人で信用出来て身を預けられるのは……ルゥ達しかいない。頑張ってくれた事も本当に心配してくれてる事も分かってる、理解してる……感謝もしてる。………でも、どうしても私には無理………ごめんね」

「もお〜、難しく考えすぎだよ〜。雛菊みたいにもっと軽く考えても誰も怒んないのに、柊は本当にしょうがない子だねー!」



 湊崎組の人達や京さん達がどれだけ尽くしてくれても信用出来ない私に、雛菊は困った顔をしていたけど笑って優しく頭を撫でてくれた。

 私が落ち込んだり、ドツボにハマっている時はよく雛菊がこうやって励ましてくれる。

 こう言うところは年下なのにお姉ちゃんなんだよね。

 私も雛菊に甘えてしまう事が多々ある。

 前世では社会人としてしっかりと働いていたのに、幼女にあやされて落ち着くなんて超変態じゃん。

 でも、甘えてしまう。

 だって……この世界ではこの子が私のお姉ちゃんなんだもん。



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