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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第五十話『幸せだった日々』

 カーテンからほんのりと除く朝日を浴びて、一瞬遅刻だと焦るが今日は休みだという事にすぐに気づき二度寝に入る休日の朝。

 下の階からは、天音と姉さんが2人仲良く料理をする音と笑い声が小さく聞こえてくる。

 今日はいつもより声が弾んでいて、楽しそうに聞こえる声を聞きながら夢に入る。

 


「〇〇ーーー!おきろーー!!」



 ……………なんて事は出来ずに天音の腹を使ったドデカイ声に起こされる。

 



「もー、天音うるさいよ」

「こうでもしないとお前起きないだろ」

「そうだけど、今日お休みなのに〜」

「あ?そうだったのか、それはすまん」

「いいよ〜」



 何度も無視をしていたが流石に何回も呼ばれたのでリビングに降りることにして、天音に少々文句を言うだけに止めた。



「これからピクニック行くけど、〇〇も行く?」

「行く!天音に姉さん任せるの心配だし」

「んだと?俺ほど頼れる男はいないだろ」

「そこら辺の男よりはマシってだけでしょ〜」

「たく、生意気な口効きやがって」



 天音といつものように喧嘩をして、その様子を姉さんが幸せそうに微笑んでいる。

 


「お父さんと〇〇ちゃんは仲良しですね〜楽しそうな声聞こえてるかな?」

「「仲良く(ねえ)ないから!」」

「ふふっ声が揃うところがその証拠よ」



 姉さんがお腹の子に話しかけながら私達を揶揄う。

 


「ほら、喧嘩してないで〇〇はピクニック一緒に行くなら着替えて来なさい。天音は私と一緒に料理の続きしましょ?」

「はーい!速攻着替えてくるから置いてかないでよ!」

「置いてくわけねえだろ。それとスズヒは動かなくていい、腹もデケェんだから大人しく座ってな」

「あら?少しくらい動かないと逆にお腹の子に良くないわよ?」

「今日は朝から動きっぱなしだろ?これから公園まで歩くんだ、今のうちに休んどけ」

「うーん、そう言うことなら少し座ってようかしら」



 姉さんは少し目を離すと自分で全てのことをやってしまうので定期的に様子を見て注意をしないと四六時中動き回ってしまう。

 だから、天音にいつも注意されている。

 まぁ、天音も料理などを出来るようになって日が浅いので、結局姉さんが動いて一緒に作るのがいつもの流れなんだけどね。



「あ、〇〇今日春日和らしいからそんなに厚着しない方がいいぞ」

「おお、了解!ありがとねー!」







 天音が注意してくれた通り外は暖かくてコートなどいらないほどだった。

 みんなでカーディガンを一枚羽織って近くの公園まで行った。

 平日ということもあり子供達は数人しかおらず、ほとんど貸切状態だった。

 公園で1番大きな木の下にレジャーシートを敷いて、お弁当を広げて遅めの朝食早めの昼食にする事にした。


 お弁当の中身は姉さんが好きな人参とインゲンの豚肉巻きと、天音が好きな姉さん手作りの甘い卵焼き、私の好きなポテトサラダが入っていた。



「やった!ポテトサラダがある!」

「〇〇が好きだから急遽入れてみましたー」

「俺の好きな甘い卵焼きも入ってる、いつのまに作ったんだ?」

「天音くんがレジャーシート探している間に作りました!」

「仕事早、ありがとう!……すげぇ美味い!」

「良かった!」



 最近忙しくて話せない日が続いていたので、久々にのんびりと2人の近況をじっくりと聞けてとても満足だった。



 お弁当を食べ終えたらレジャーシートに寝っ転がって日向ぼっこをしながら、読書をしたり風に揺れる木の葉や花を見ながらゆったりと時間を過ごした。



「そろそろ帰るか?」

「そうだね〜夕飯の時間が近いし帰ろうか」

「〇〇はどうする?」

「私ももちろん帰るよ〜明日仕事だし」

「了解!じゃ撤収作業するぞ!」

「かしこまり!あ、姉さんは何もしないでよ?赤ちゃんによくないかもしれないからね」

「はーい、分かりました」



 私と天音で帰り支度をして、その側でお腹を抱えながら座って微笑んでいる姉さんが待っている。

 姉さんも妊娠初期の頃からなんでも手伝ったり、体を動かしたりしていたけど、私と天音が口煩く注意をするので今では黙って座る様になった。

 自分で出来る事は意地でも譲らないから、それ以外なら全てやらせてくれる。

 料理は絶対2人でやってるけどね。




 



「〇〇、お腹の子の性別知りたい?」

「ん?姉さん知ってるの?妊娠が分かってから性別は、生まれて来た時の楽しみにしたいって言ってたじゃん」

「そうなんだけど、〇〇だけに教えてもらうことも出来るよ?もし知りたいなら先生に言うから私達に付き合わずに言ってね?」

「んー、知りたいけど私も姉さん達と同じタイミングで知りたいから良いよ」

「そう?」

「男でも女でも姉さん達の子供ってだけで私は全力で愛すし」

「ふふ、そう言ってくれると嬉しい」




 姉さん、天音、2人の赤ちゃん、この世で1番愛してるよ。

 







「〇〇!これ可愛くね?!」

「まじ!超可愛いじゃん!天音センスあるね!」

「可愛いから全部買っちまおうぜ!」

「だね!いっぱいあって困る事ないし!」



 赤ちゃん用品店で2人で興奮しながら服やおもちゃを次々とカートの中に入れて行くと、後ろから首根っこを掴まれた。



「こら!性別も分からないのに服をポンポン買わないの!おもちゃもこんなに要らないでしょ?!小学校に上がるまでに全部遊び尽くせない程の量買おうとしない!」

「えー!可愛いのに!!」

「いっぱいあって困る事ねぇだろ?」

「あるわよ!こんな大量のおもちゃや服、どこに収納しておくつもり?家はそんなに大きくありません!」



 姉さんに怒られて2人で渋々カートの中にあった物を棚に丁寧に戻した。

 いい歳した大人2人が妊婦さんに怒られてる光景は、流石に痛すぎる。

 はぁ、全部買いたかったのに母は強しですね。



 本当に幸せ、4人一緒に過ごしているこの時が1番幸せ。

 喧嘩して、遊んで、一緒に寝て本当に幸せ………この幸せが永遠に続いたらいいな。



 

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