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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第四十八話『完璧な治療』

「そうだ、広間に行った時に保弘さんに伝言頼まれてたんだった。2人に研修所に来て欲しいってよ」

「研究所に?」

「なんでだろ?」

「内容は言われてないけど、なんか急用らしいわよ?」

「飯急いで食うたら詰まらせるかもって食べ終わってから伝える様に言われとったの忘れてたわ!」

「そうなんだ、ありがとう!」

「早速行ってみるよ!」



 急用の内容が全く見当がつかない。

 あっ………頭の中に入っている物が何か分かったのかな?

 見当がつかないって言ったけど、唯一思い当たるのがそれくらいだ。

 でもそれなら私達じゃなくて検査を受けたサイモンさんやマイロくんが呼ばれる筈だし……。

 まっ!行ってみれば分かるよね、今あれこれ考えても答えは出ないんだし。

 

 私達はのんびりと研究所に向かう事にした。

 その際に4人が研究所の前まで送ってくれると言うので、ありがたくお願いして色々な話をしながら向かった。

 たわいもない世間話だけどね。

 尚、助けた事が原因なのか分からないけど子猫は私の頭に乗ったまま、しがみつかれて剥がれなかったのでそのまま連れて行くことにした。

 無理やり引っ張ったら毛が抜けて禿げちゃうからね。

 ……ハゲは絶対にいやだ。




「こんにちわー!」

「保弘お兄ちゃん!京お姉ちゃん来たよー!」

「ん、何で2人が来たんだ?」



 研究所に送ってもらったは良いけど、どこに行けばいいか分からなかったので取り敢えず、先日訪れた京さんの研究室?に行ってみた。

 部屋に入ると保弘さんと京さんが何やら真剣な顔で話し合っていた。

 声を掛けると2人は顔を素早くあげて、私達を見て不思議そうな顔をして手招きをしてくれた。



「2人ともどうしたの?」

「あれ?京さん達が呼んでるって言われて来たんだけど…?」

「未来くんから保弘お兄ちゃんが呼んでるって聞いて来たんだけど?……あれ?」

「……あちゃ〜〜」



 不思議そうな顔をしている2人に事情を説明すると京さんは頭を抱えて、保弘さんは若干イラついた雰囲気を醸し出していた。


「保弘、何であの4人に頼むのよ。比較的まともそうな未来もポンコツよりなのに」

「すまん、言伝くらい出来るだろうと思っていたんだが……」

「じゃあ、柊達を呼んだ訳じゃ無かったんだね!」

「あぁ、呼んだのはマイロとサイモンさんだ。お前らと昼飯一緒に食うって聞いたから、雛菊達にマイロとサイモンさんに研究所に来て欲しいと伝えてくれと言ったんだが、マイロとサイモンさんの部分が抜けたな」



 すごく短い言伝だけど、一体何故マイロくんとサイモンさんの部分だけ抜け落ちたんだろ?

 聞いた事がない知らない名前だったから抜けて、知り合ったばかりの私達の名前が強調されてしまったんだろうか?

 


「マイロくん呼んでくるよ!」

「いや、お前らが行く必要はない。俺が連れてくる」



 そう言って保弘さんは足早に部屋を出ていった。

 残された私と雛菊はその場に立ち尽くして、京さんはため息を吐いた。


 

「あれは後で叱られるな」

「未来くん達怒られちゃうの?」

「ん〜伝達ミスが起きてるからね。まぁ、暴言吐いたり殴るとかじゃなくて注意するだけだから大丈夫だよ」

「そっか!なら安心!」

「保弘お兄ちゃんは優しいもんね!」



 京さんが言うほどにポンコツだと知れ渡っているなら、最初から言伝頼まなければこんなすれ違いは怒らなかったのではと思わなくはないけど、保弘さんは幹部の人だから忙しいだろうし人に頼んでしまうのは仕方ないよね。

 たまたま4人がいたのが悪いか……仕事を頼む人を探すのにも時間をかけなきゃいけないの、面倒すぎるもんね。



「そうだ!2人ともお菓子好き?」

「大好きー!」

「クッキーが好き!」

「丁度お土産でもらったチョコレートがあるの、いっぱい貰ったから良かったら食べて?」

「やったー!」

「いただきまーす!」

「鼻血出ちゃうから食べすぎちゃダメだ…よ…………柊ちゃんその右腕どうしたの?」



 私の右腕の怪我を見つけた京さんは笑顔を消して尋ねてくる。



「これ?子猫を助ける為に木に登って、子猫が落ちたから追っかけて柊も落ちたら木に擦った!」

「え、大丈夫!?腕以外に怪我してるところ無い!?頭は!頭は打ってない!?」

「腕しか怪我してないよ?ちゃんと足で着地したから頭も打ってない!」

「んー、心配だからしっかり見せて」



 本当に腕以外は怪我してないし、頭も打ってないんだけど、京さんはすごい剣幕で迫って来て私は押しに負けて見てもらうことにした。



「柊ちゃんが言った通り頭は打ってないみたいね。それで?この雑すぎるガーゼや包帯の巻き方は誰がやったの?怒らないから教えてくれる?」

「……えっとね……ひーくん、だよ!」

「はぁーもうッ出来ないのに適当やるんだから!しないよりはましだけど……いい?柊ちゃん、雛菊ちゃんも。怪我をしたらまず私達の所に来て、ここには治療する道具も手当のプロも大勢いる。遠慮なんてしなくていいから、雑な応急処置を放置してちゃんとした治療を受けずに放置して苦しむのは柊ちゃんなんだから」

「分かりました!今度から京お姉ちゃんにやってもらう!あと、危ない事してごめんなさい!」


 

 京さんの終始心配したような顔に申し訳なくなったので、流石に謝った。

 腕に巻かれていた包帯も、でっかい絆創膏も剥がされて京さんの手でしっかりと消毒をされ、薬を塗られてガーゼと包帯をしっかりと巻いてくれた。

 ひかるさんのは動かすだけで取れてしまいそうで不安だったけど、京さんのは動かしても解ける心配はなく、それでもキツくない完璧な治療だった。

 パックリ切れていたから縫わないといけないかと思ったけど、そんなことなくガーゼ程度で済んで良かった。



「よし、これで終わり!じゃあ約束した通り、次からは私達の所に来るか仁美さんやお姉ちゃんにやってもらってね!」

「雛菊に?」

「雛菊包帯とか巻いたことないよ?」

「ん?あぁー、ごめんお姉ちゃんって言うのは柊ちゃんのじゃなくて私のお姉ちゃん!紛らわしい言い方してごめんね」

「京お姉さんにお姉ちゃんがいるの?」

「うん、湊崎紫って言うんだけどもう会ったかな?」

「紫お姉さん!会ったよ!」

「和花ちゃんとも遊んだよ!京お姉ちゃんと紫お姉ちゃん、髪の色が同じ何だね!」

「そうなの〜髪もだけど、目の形が1番似てるんだよ〜!」

「「本当だー!」」



 髪が1番の共通点に見えるけど、京さんの言った通り優しげな目元や笑った時の形などが、本当によく似ていた。

 その後は私と雛菊の似ているところを少し教えたり、京さんと紫さんの似ているところもいっぱい教えてもらった。

 話をしている間に私の服の中に隠れていた猫がひょっこりと顔を出して、木から助けた猫だと紹介したりとサイモンさんとマイロくんが来るまで全く退屈せずに待つ事が出来た。





「待たせて悪かったな」

「京様、お待たせして申し訳ございません」

「僕からも謝罪を」

「いやいやいや!2人が謝る事じゃないから、完全にこちら側の伝達ミスだから気にしないで。取り敢えず座って?」

「お気遣いありがとうございます。失礼します」

「失礼します」



 来て早々2人は謝罪をしていたけど、京さんは全く気にせずにむしろ申し訳なさそうだった。

 未来さん達がミスったのが悪いからどっちも謝る必要はないと思う、てか未来さん達連れて来て4人が謝罪する案件のような気もする。

 そこは上司の仕事って感じなのかな?


 

 2人が部屋に入ってきてから京さんも保弘さんも何だか重苦しい雰囲気で、さっきまでの明るさは無くなっていた。

 その様子にサイモンさんはいつも通りだったけど、マイロくんは珍しく少し緊張しているようだった。



「なんだか、大事なお話っぽいから雛菊達いない方がいいよね?」

「いや、お前らにも関係がある話だ。いても問題はない」



 退室を申し出たら出ていかなくても良いと引き止められた。

 私達に関係がある事ってやっぱり頭のマイクロチップの事だよね。


 

「昨日検査結果を届けた時にもっと詳しく調べるって言ったでしょ?でその結果がさっき出たんだけど、サイモンさんとマイロくんの頭の中にあるものはマイクロチップの類だと思うの」

「マイクロチップ…?」

「うん、頭の中をCTにかけただけだから絶対マイクロチップとは言えないけど、可能性は高いと思う。朝調べた段階では頭の中にあっても害はないって結果だったんだけど、もしもの事が内容にもう一回別の検査方法を試したら頭のマイクロチップに遠隔操作機能がついている事がわかったの」

「遠隔操作…」

「それはどういった事ができるものなのでしょうか?」



 CT撮って色々やっただけでマイクロチップにどんな機能がついているかまで分かっちゃうんだ、異世界の技術すごいな。

 地球でもそういう機械あったのかな、機械とか医療に詳しくないから分かんないや。

 異世界の技術はすごいけど、遠隔操作の機能がもう既に停止されている事は流石に分からなかったのかな。


 流石はルゥ、元々の依頼は施設長にバレないように機能を停止させて欲しいって依頼をしてたんだけど、ここの研究所のゲキスゴ技術おも欺いてしまうなんて、こりゃ各国の要人たちがこぞって欲しがる天才だわ。

 普段はどうしようもないし、生活能力0のダメ人間だけど。


 …………どんなにお金を積まれてもルゥはどこにも貸さないよ!

 私が見つけて、ルゥが私を選んでくれたんだからね!

 ……私に面白みが無くなったらすぐにどっかに消えちゃいそうだけど。



「遠隔操作で何をするかまでは分からかったの、申し訳ない。でも、これを埋め込んだ人間がどれほど狡猾で卑怯でゲスかって事は知ってるから、何かされる前に手を打ってマイクロチップを取ってしまいたいの」

「京様が謝ることではありません。遠隔操作と言う機能が備わっている事が分かっただけでも、私達は安心できます。取り除いていただけるのであれば、早急に取り掛かって頂きたいです」

「ありがとう、取り敢えずこの事実を施設から来た大人達全員に伝えてもらってもいい?質問とか不安があれば可能な限り答えるから」

「かしこまりました。では、一度持ち帰り話し合ってみます」



 京さんの話を聞き終えたサイモンさんとマイロくんは、こちらを一瞥した後足早に屋敷へと帰って行った。

 


 実のところ、私とルゥは雛菊とマイロくんとサイモンさん、あとはアグリさんだけにはマイクロチップの存在やどんな機能が備わっているかなどを伝えていた。

 2人のあの視線はクルミさん達、伝えていない人達全員に伝えていいんだよね?と言う確認の視線だと私は解釈したので特にリアクションをしなかった。

 リアクションをしないのは了承の合図とみんなで決めているので、2人も私の無反応で理解してくれただろう。

 

 サイモンさん達にマイクロチップの事を伝えた時、3人とも特に動揺した態度は示さずにいつものテンションでどんな形状の物かとか、機能は本当に2つだけなのかとか直ぐに質問をしてきて、流石数々の修羅場を潜り抜けて来た苦労人達は、話が早いなと思ったのを今でも覚えている。

 施設長に不審に思われないようにGPSの機能は停止せずに、遠隔操作の機能だけを停止させている。

 因みに遠隔操作で何が出来るかと言うと爆破が出来ます。

 単純で分かりやすくて面白い機能だよね、埋め込まれた側は全然笑えないけど。

 施設長の奥歯に起爆スイッチが埋め込まれていて、普段の生活でうっかり起動する事はないように起爆する際は死ぬほど噛み締めて押さないと起動する事はないと言っていた。

 因みに作ったのはルゥではないので、人を選んでその人1人だけを爆破する事は出来ず、もしスイッチを押す事になったら全員が爆発して死ぬ事になるというクソ仕様だったんだよ。

 ルゥみたいな天才は世の中にゴロゴロいないって事だ。


 それと、京さん達は見つけられなかったみたいだけど実はマイクロチップにはもう一つ機能が備わっている。

 それは幸太郎さん達が脱走した後に付けられた機能でどんな機能かと言うと、スタンガン的な物だ。

 これは完全に逃げ出した人間を捕まえるようで付けられたもの。

 付けられたから今まで使われた事はないけどね。


 あと、正式に買われていった人達はマイクロチップは綺麗に取り除く決まりになっている。

 施設に問題が起きて全員殺さなければならなくなった時、買われて行った人間も殺してしまったらお偉い貴族達に施設長が殺される恐れがある。

 施設には結構位の高い人達が他国からもお忍びで来ていたりもするので、その人達が買って行った人間にまで手を下したらとても恨まれるので、それを避ける為にマイクロチップは抜いてしまうんだと残念そうに施設長が言っていた。

 

 

累計PVが4,000行きました!

こんなに行くまで読んでくださり本当にありがとうございます!

最近、投稿頻度が落ちているのに読み続けて頂いて、本当に感謝感謝です!

頑張って頻度も上げて行く予定なので、暇な時に読んでいただけたら幸いです!(( _ _ ))

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