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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第四十一話『専門家との合同研究』

 その後私は我を忘れて、貧民街の片隅でいかにルゥの行動が危ないものなのか、自分が持っている薬草に金貨の価値は無いことを事細かに説明をした。

 ルゥは終始不満そうだったけど、頭の片隅にでも残っててくれれば良い、くらいの感覚で話をしていたのでそれで良かった。


 最初は白衣着てるし、すれ違う時に薬品の香りがするから研究者なのかなと思って協力をお願いしようと思っていたけど、この出来事が起きたのでこんな危なげな人に協力者は頼めないな、と早々に諦めた。

 筈だったんだけど、説教をした後に私の手元にある全ての薬草達をチラッと見ただけで何の薬草なのか、効果は何なのかを説明して来たし、私からほのかに薬品の匂いがする。何を作っているんだ?擦り傷に塗る薬とは明らかに匂いが違う。

 そう言われて、薬草や薬品の知識が豊富という事が分かったので見た目や行動の怪しさは全て無視をして、毒草研究に引き摺り込むことにした。

 人間的な欠陥はあるけど、専門家の意見は八方塞がりの私にとってはとてもありがたい。


 引き摺り込む事が確定したので、早速ドンビュの群生地に連れて行った。

 大量のドンビュを見たルゥは何を血迷ったか、私を抱き上げてどうやって見つけたとかテントの中の備品や薬品はお前の物かとか、何故研究をしているなどの重要な事から、テントの色に何かこだわりはあるのか等関係ないくだらない事まで聞いて来た。

 長時間抱き上げらているのは、私とルゥの2人きりだとしても恥ずかしいし、抱き上げられたたまま質問責めにあっていたので脇が超痛いから早急に下ろして欲しかった。

 言っても聞いてくれなかったから早めに諦めたけど……。


 その日からルゥと一緒に研究を始めた。

 やっぱりルゥは専門家だった様で、私の数倍テキパキと素早く研究を進めていた。

 それでも研究成果は芳しくなかったけど。

 やっぱりどれだけ研究を重ねてもドンビュの毒素を取り除くことは出来なかった。


 



 ひたすら研究をしては成果0の日々を過ごした数ヶ月……成果が出ない事に少し落ち込んだので遠出をする事にした。遠出と言っても幼児の体では遠出とも言えない。

 ただの寄り道散歩くらいなものだったけど、それでも気晴らしにはなった……気がする。

 いつもとは違う場所でいつものように罠を張り、いつものように野草を採る。場所が違うだけの普段の日常。

 そんなことをしていたら1人のおじさん冒険者が通りかかり、声を掛けて来た。

 一瞬警戒したけれど、敵意などがないのはその人の目や動きを見ればすぐに分かるので、警戒を解いた。


 


「嬢ちゃんは何しにここに来たんだ?」

「柊はご飯取りに来たんだよ?ネズミさんとか野草がご飯!」

「…そうか。じゃあおっちゃんが特別にこれやるよ」


 おじさん冒険者がデカくて重い皮袋を差し出して来た。


「これなあに?」

「牛の肉だ!今日仕留めて来たんだよ。でもおっちゃん独り身でな?1人じゃ食べきれんから嬢ちゃんにもお裾分けだ!」

「わあ!やったー!ありがとう!」

「そんなに喜んでくれるとは嬉しいなぁ!」



 裏表の無い本当に気さくなおじさんだった。そのおじさんと少し話をして大分息抜きになったので、帰ろうとした時にカバンから何かを取り出した。

 よく見るとそれは皮ボトルで、ほんのり香って来た匂いを嗅ぐ限りお酒の様だった。

 めっちゃ美味しそうな匂い……。



「それってお酒?」

「ああ、そうだ!おっちゃん酒がねえと生きていけないダメな人間なのよ!」

「ダメな人間じゃないよ。お酒に頼ってても生きてるだけすごいよ!それに見ず知らずの柊に高い牛さんのお肉分けてくれたじゃん!全然ダメな人間じゃないよ!」

「そおかあ?」

「そおだよ!」

「お酒にお酒割って飲んでるアル中なのに?」

「……良くわかんないけど、アル中でも良い人は良い人だよ!」



 アルコールをアルコールで割るってカクテルみたいにして飲んでるって事かな?それとも、本当に原液に原液足してるみたいな事?

 私前世では結構な酒好きだったけど、それはやらなかったなぁ。

……酒を酒で割ったら死ぬ程アルコールの濃い酒が出来上がって、お酒弱い人が飲んだら1発で死ぬよね。




 ………今まで考えなかったけど、毒草も同じだよね。

 ドンビュの毒素を消すことばかり考えてたけど、毒草に毒草を足したらどうなるんだろう。

 とんでもなく荒い考えだけど、ドンビュという毒草に他の毒草達をぶち込んだら奇跡が起きないかな。

 今までは、他の毒草を使ったとしてもドンビュに近しい効果の物ばかりだったけど、全く効果の違うドンビュに匹敵するレベルの毒草達を混ぜ込んだら毒素はどうなるんだろう……そのまま残って全ての悪い効果が出るのか……それとも打ち消し合うのか。

 試してみたい、今すぐに。でももう家に帰る時間だからやるのは明日だな。

 朝帰りなんてしたらお母さんが泣いちゃう。

 はぁ、今すぐにテントに行きたい。


 研究が進むかもしれない貴重な情報をくれたおじさんに改めてお礼を言って家に帰った。

 おじさんは頭にハテナマークを浮かべていたけど、物でお返し出来ない私には頭を下げてお礼を言うしかなかった。



 夕飯はこの世界では初めての牛肉で母も雛菊もとても喜んで、半泣きしながら幸せそうに食べていた。

 父親は不満そうに不味そうに食べてたけどね、ブツブツ文句言ってたし。そんなに嫌なら食べなきゃ良いのにぃ〜ムカつくやつ。




 次の日テントに訪れると徹夜していたであろうルゥが突っ伏して寝ていた。起こすのも可哀想なので布団を掛けてあげて、必要な備品と毒草達を持って外に出て早速調合してみる。

 まずドンビュと他の毒草全てをグチャグチャにして一緒のボウルに入れる。

 混ぜて数分様子を見たけど、特に変化は無し。


 次は混ぜるのは一緒、混ぜる工程の他に温めたり凍らせたりしてみたがこれも変化は無し。

 やっぱり違うのかなと思って諦めようとした時また、ふと思った。

 今はドンビュの毒素が1番少ない茎の部分を使っているけど、1番毒素の多い花の部分も入れたらどうなるんだろうと。

 思い立ったら吉日!早速花も入れてみることにした。

 ………まぁ、これもダメだったんだけどね。



 もうお手上げだぁ!ってなって何となく、ドンビュをお湯に浮かべた。

 前世で好きだったある物語を思い出したからやってみた。その物語で浮かべた花は、病気を直す奇跡の花だったけど惑わされるほどに綺麗な花というのが毒草だけど、ドンビュにそっくりだったので、同じことをしてみた。

 ヤケクソだ!ってドンビュ以外の毒草の花も次々入れて、数十分ほど眺めているとドンビュがお湯に溶けて消え、その影響なのか他の毒草も溶け始めた。

 どういう原理か私には到底分からないし、説明されても理解出来ないけど、溶けた毒草達は混ざり合ってとても綺麗なミルク色のお湯になった。

 本当にどういう原理?

 

 飲んだら優しいミルク味がするのかな、そうならきっと美味しいだろうな…

 ボーとしながら本当に何も考えずに毒草達が溶け出たお湯に手を突っ込んだ。

 あの時の私は本当に何してんだろうって感じだったけど、この行為が良い結果を生んだんだよねー。


 我に返った私はすぐに手をお湯から出して直ぐに水で手を洗ったんだけど、本来なら触った時点でドンビュの毒に侵されて手が腫れ上がり血が出始めるのにそんな様子は無く、むしろなんかすべすべもちもちとした保湿された後の手みたいになっていた。

 手の擦り傷や切り傷も綺麗さっぱり消えているのにも驚いた。驚いたままルゥを叩き起こして最初から同じことをして毒草湯を作りそこに最初入れた手では無い反対の手を入れて見せた。

 ルゥも最初は半信半疑だったし、手を突っ込んだ私を見て超焦っていたけど、出した手をじっくりと観察して私が言っていることが本当だと理解してくれた。

 

 そこからはとても早かった。何回か実験して原理を理解したルゥが、サクサクと毒草ミルク湯を作っていってあっという間に薬が完成した。ドンビュとついでに入れた毒草達の毒素だけを無くして薬としての効能だけがある最高の薬が出来た。

 珍しくルゥが泣いて喜んでいたし、私を抱きしめてほっぺにキスをして来た。

 やめろ気持ち悪い、母と雛菊以外からのチューは全然鳥肌しか立たないので一生しないでいただきたい。




PV数が3000行きました!

読んで下さって本当にありがとうございます!(≧∀≦)

5000を目指して頑張って書いていくので、よろしくお願いしますm(_ _)m

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