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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第三十九話『ファイル』

「毒草の事で話逸れちゃったけど、頭の異物を抜きにしてもみんな栄養失調が酷すぎるね。あんな劣悪な環境に居たわけだし、仕方ないとは思う。だからこれからは今まで以上に栄養満点の食事を食べてもらう!料理長達には話通してあるから、朝昼晩欠かさずに毎日しっかり食べてね!」

「承知致しました、数々のご配慮心より御礼申し上げます。子供達の中にはアレルギーを持った子もいるので、アレルギーを書き出したものを後程お渡しいたします」 

「それはとってもありがたい!……一応確認なんだけど、アレルギーの他にもみんなの情報って分かったりする?」

「…申し訳ございません。あまり記憶力がいい方では御座いませんので、アレルギー以外のものは記憶出来ておりません。しかし施設に行けば、施設に在籍していた人間1人1人の情報が詳細に書かれたファイルがございます。お役に立てず、申し訳御座いません」



 嘘じゃん。

 めちゃくちゃ嘘つくじゃんサイモンさん。

 この人本当に年寄りかってくらい物事を事細かに記憶している。むしろ覚えていない事って何?となる程に覚えている。

 だから、アレルギー以外にもきっと頭の中に入っているだろう。

 それをあえて言わないってことは、ファイルをこの組の人達……てか総一郎さんに見て欲しいんだろうな。

 ファイルが存在している事を言っとかないと絶対見つけられない所に隠してあるし。



「そのファイルって施設に置きっぱなしになってるの?」

「えぇ、そうです。たしか施設長室に厳重に保管されていて、簡単には取り出せないようになっていました。壁のどこかに隠された、隠し金庫があると聞いたことがあります」

「なるほど、分かった。組の人達に言って探してもらうね。教えてくれてありがとう」

「いえ、私共にとっても大事な品なので探していただけるだけで感謝いたします」



 アレルギーの項目を作ったのはオリバーさんだ。ルゥは気の乗らない地道な作業とか好きじゃないから、ルゥに頼んでもオリバーさんに仕事が回される事が良くある。


 そもそもアレルギーを調べようってなったのは、食事の際に特定の食材を食べると舌が痺れたような感覚になると違和感を訴えた人が出たから。

 最初は栄養失調とかの症状とかだと思ってたんだけど、蕁麻疹が出て痒いと言われてもしかしてアレルギーなのでは?もしもアレルギーなら、アナフィラキシーとかになったらやばいんじゃ?と思って速攻ルゥに手紙を送った。

 そうしたらその日の夜にはオリバーさんがやって来た。

 医療は専門外だとルゥに言われて、代わりに来たってオリバーさんは言ってたけど、絶対面白くなさそうだからって来なかったよ、あの人はそういう人。発明に役立つ物とか、珍しい薬草とかにしか興味がないんだよね。


 その日は異常を訴えた人の血だけを持って帰って行き、次の日その検査結果を持ってオリバーさんはまたやって来た。

 そんなにホイホイ侵入出来るのかと聞いたら案外行けたとだけ言われた。

 侵入方法はどんなに聞いても教えてもらえなかった。


 で、検査結果は食物アレルギーだったらしく該当する食材は避けて他の物を食べるようにと言われた。

 ただでさえ食べれる物が少ないのに困ったけど、小麦アレルギーとかでは無かったからまだ良かった。

 アレルギーは下手したら死者が出る本当に危険な物なので、全員アレルギーがないか調べてもらうことにした。

 施設長や施設職員にバレないように数日掛けてコソコソと数人ずつ採血したのはいい思い出だ。

 本当に大変だった…。

 私達の採血を全部1人でやったオリバーさんの方が絶対に大変だったけどね。


 アレルギーの話をいっぱいしちゃったけど、ファイルの話もしよう。

 アレルギー以外にも私達の詳細が書かれた書類がある。

 施設長が作ったファイルがあって、それがサイモンさんが言ってた、隠し金庫にあるやつ。

 そのファイルには私達の名前、性別、年齢、容姿が詳細に書かれている。

 施設長が作ったやつは客向けの物なので必要最低限の情報しか、書かれていない。

 施設長がアレルギーなんて細かく書くわけないからね。アレルギーなんて甘えだろとか、苦しくなるだけで死ぬほどでもないだろ?とか平気で言ってた人だから。



 施設長が作った物よりも遥かに詳細に書かれたものがもう1種類施設には保管されている。

 それがオリバーさんが作ってくれた物。


 オリバーさんが作ってくれた書類には名前、性別、年齢、容姿、病歴、出身国、家族構成、施設に来た経緯から好きな食べ物、嫌いな食べ物、好きな遊び、好きな服装など本当に様々な事が細かく書かれてあった。

 正直、好きな遊びとか好きな服装とか情報として要らないだろと思ったしオリバーさん本人に言ったこともある。 

 そしたら、どんな情報が何に使えるかなんて今は分からない、いつか何かの役に立つ可能性が0ではないなら書いといて損はないと言われた。

 その考えを聞いて確かになと思った、私も絶対要らないだろこの資格って、天音に散々文句言われた物とかよく取ってたし、いつか役に立つかもって色々買って調べたりもしてたから人の事言えなかった。


 それとファイルの情報を京さんに言った事で1つ問題が発生した。

 施設長室にあるファイルにはアレルギーが書かれていない。なら、サイモンさんはどこでアレルギーの情報を得たのかとなってしまうのだ。

 施設を出る時にこっそり金庫にファイルを入れられたり、持ち出せたら良かったんだけど、そんな時間は流石になかったからね。

 施設を出る僅かな時間で、隠し金庫速攻で見つけてたら変でしょ?地下室に行った時と同様の手順を踏まないといけないし、暗証番号知ってるのも問題だ。


 ……金庫にあるファイルと勘違いしてたって言って、若衆さん達には1号棟〜5号棟を1部屋ずつ探してもらうしかないかもな。

 オリバーさんが作ったファイルはそれぞれの部屋で保管していたからね。

 棚の後ろとかに隠していると案外バレなかったんだよね。棚の裏とか見る人いなかったし。



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