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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第三十五話『研究者・椎名京』

 摘まれた女性はいきなり掴まれたのに驚くこともなく、怒ったような表情で振り返った。



「保弘、いつも言ってるでしょ!人を掴んで持ち上げないでよ、声掛ければ良いじゃん!」

「研究している時は声を掛けても気付かないだろ。これが1番手っ取り早い」

「気付かないの私が悪いけど……持ち方なんとかならないの?…はぁ、取り敢えず一旦下ろして」

「ああ、悪いな」

「で、例の双子ちゃん連れて来てくれたの?」



 床に降ろされた女性の方から双子という単語が発せられた。

 この人、私達に用があったのかな。

 目の前にいるのに全然気づいてない。



「京、メガネしろ。何も見えてないだろ」

「そうだったそうだった!通りでいつもより見えずらいと思ったんだよね〜」



 髪の色と同じ銀縁の眼鏡をかけて今度からしっかりとこっちを見て目が合う。



「きゃー!可愛い!これが海斗くんが言ってた双子ちゃんだね!」

「こんにちわ!雛菊です!」

「初めまして!柊だよ!」

「うんうん、知ってるよ!初めまして、椎名京( しいな みやこ)です。海斗くんにいっつも話聞いてて組に来たって聞いた時は研究ほっぽり出して飛んで行こうとしたんだぁ!……助手に止められたけど」



 思った通り、海斗さんからの情報だった。

 あの人私達の話組以外でもしてるのか、怖いから聞きたくないけど誰にまで話してるんだろ。

 研究所で止めといてもらいたいけど、研究者からまた違う人にってなったら止めようがないよな。


 てか、私達京さんが会いたいってだけで連れてこられた?

 検査を受ける本命はサイモンさんとマイロくんなのかな?



「で、こっちがサイモンさん?」

「お初にお目にかかります。サイモンと申します」

「マイロです。本日はよろしくお願いいたします」

「硬い硬い!そんなに畏まらなくて良いんで、じゃ時間もないので詳しい検査の説明しても大丈夫かな?」

「お願いいたします」

「大丈夫です」

「雛菊達も聞いてて良いの?」

「全然良いよ!」



 良いんだ。

 京さんに許可をもらって同席させてもらえる事になった。このまま帰ってもつまんないしね。

 説明の内容は検査の種類や検査方法、時間がどれくらい掛かるかなど事細かに教えてくれたし、サイモンさんとマイロくんが質問をする度に嫌な顔をせずに快く答えてくれていた。

 聞いた感じ検査方法に危険なことはなさそうで安心した。



「他に気になる事ある?無いなら検査しちゃうけど?」

「…気になることは一通り質問させていただいたので構いません」

「僕も問題ないです」

「了解!じゃあこっち来て!」



 京さんに案内された先には3メートルくらいの透明な縦長な箱のような物があった。

 異世界の技術がどれくらい進歩しているのか分からないけど、これが説明してくれたMRI装置なのかな?

 この世界では横にならずに立ってスキャンするらしい。



「この装置に入ってくれる?説明した通り痛いことなんて何もないから!立ってるだけで終わっちゃう」

「分かりました」



 先にマイロくんが入る様で、特に怖がっている様子は無くすんなり入って立っている。

 マイロくんは相変わらず肝が座ってるよな。

 施設長に意見する時も臆さずにもの言ってたし。


 マイロくんが装置に入ったのを確認した京さんがボタンのいっぱい付いた機械の前で何やら操作をするとMRI装置が機械音を発し始めた。

 装置の上部からレイザーの光が降りて来て頭から足までをスキャンして行く。

 何往復かすると装置は止まって京さんが扉を開ける。



「はい!マイロさんお疲れ様!検査はこれでおしまい、結果は後日出るからね〜」

「今すぐに出るんじゃないんですね……分かりました。ありがとうございます」

「本当は今日出したいんだけど、検査が混み合ってて早くて明日になっちゃうんだ。ごめんなさいね」

「構わないです。調べていただけるだけで安心するので」



 その後はサイモンさんも検査をしてみんなで組に帰った。

 私達が連れて来られた理由を京さんに聞いたんだけど、本当にただ見たくて、会いたかっただけだったらしい。

 会いたいだけなら今日じゃなくても良かったんじゃないかと言ったらサイモンさん達も来るし丁度良いかなって思ったんだって。

 なんだ、検査出来なくてちょっと残念。

 異世界のMRIちょっと興味あったのに。



 組に帰って来たけど思いの外時間が経っていなくてお昼ご飯まで時間があったので部屋でのんびりする事にした。

 子供達に会いに行こうとしたり、探検しようとしたらサイモンさん達に体調が万全じゃないのに動き回るなと注意されたから仕方なく部屋に戻ってきた。


 しかし、部屋に居てもお手玉やったり絵を描いたりする以外する事がない。


 箪笥の整理でもしようかな、1段目に詰め込まれているだけで綺麗に収まっているわけでもないし。

 色違いの同じ服が2枚あるのでそれを私と雛菊に分けて、4段ある箪笥の上部に私が着る服を下部に雛菊が着る服を入れて行く。

 雛菊はピンクとかオレンジとか暖色系が好きなのでそれ系を入れて、私は青とか紫とかの寒色系が好きなので分けていく。

 因みに私が上で雛菊が下なのは単純に取りやすさで決めた。

 身長は同じでも子供は下の方が取りやすいでしょ?私は服なんてどうでもいいから適当に取って着るだけ。

 雛菊はこだわりは無いけど、人並みにおしゃれは好きなので下の方が選びやすいし、どの服にしようか悩んでも座って選べるから良いかなって。


 そんな感じで整理整頓を雛菊としているとあっという間に昼食の時間になった。

 昼食もまた部屋で食べる事になっている。

 みんながっつりしたもの食べるからね。



「お待たせー、お昼ご飯を持って来たよ」

「はーい!あっ、今日は文哉お兄さんなんだね!」

「うん、昨日料理長の話聞いて来て見たんだ」



 きっと銀次郎さん、料理人達の殆どに言って回ったんだろうな

 会ったばっかりだけど、あの人超自慢しそうだし。



「お昼なあに?」

「いい匂いする!」

「今日はオムレツだよ」



 オムレツは卵にトロロのようなものが入れ込まれていてふわっふわで味だけではなく食感も楽しめた。

 味付けはシンプルに醤油だけだったけど、和風な感じがとても好みの味付けだった。

 付け合わせのマッシュポテトも美味しかった。


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