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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第二十二話『お風呂最高!」

 この世界で色んな人に出会って来た。

 前世の友人に似てる人とか、元恋人に似ている人とか。

 雛菊はその中でも特に似ている方だった、前世の姉に。

 雛菊の顔も少し似ているんだけど、それよりも性格や纏う雰囲気や喋り方の癖などが本当によく似ている。

 昔私と同じ様に転生しているのではと疑った事があったが本人ではない事はある程度確認済み、この子は姉さんの生まれ変わりじゃないと納得したのだ。

 もちろん姉さんに激似の雛菊がいるんだから、いる可能性は考えていたよ。

 でもさ、正直今じゃない。

 出会うのが今日だとは思っていなかったよ。




「こっちが雛菊でこっちが柊だ」

「保弘さん、指差されただけじゃ分かんないっす!」

「そっくり過ぎて見分け付かないです」

「相変わらず適当すぎる紹介ですね。2人が分からないのも当然ですが、私達も容姿の違いは見つけられていないんです」

「容姿には違いねぇけど、性格は多少違うっぽいぞ?俺らの事お兄さんって呼ぶのが雛菊でお兄ちゃんって呼ぶのが柊だ」

「その他には雛菊ちゃんはポワポワした喋り方で柊ちゃんは割とハキハキ喋る印象です。強いて言うならの違いでしかありませんが」



 保弘さんの雑な紹介に瑞生さんと秋巴さんが私達の違いを丁寧に説明し直してくれた。

 あれ、バレてないと思ったら普通に把握されていた……そんなにハキハキ喋ってるかな?これでも雛菊に寄せてふんわり優しい感じの喋り方を心掛けているんだけど……今後はもう少し緩めに喋ろう。

 違和感を持たれると困るから徐々に喋り方変えよ。

 2人の説明に更に興味を持ったのか2人が若干近づいて来た。


「ッ、」

「とっとっ、柊どしたの?」

「なんでもないよ!」

「……手握ってようね!」

「怖がらせてごめんなさいっす!…僕三枝虎徹(さえぐさ こてつ)っす!仲良くしてくれたら嬉しいっす!」

「急に近づいてすまん、俺は黒木雨音(くろき あまね)だ。良かったら仲良くしてくれ」

「全然大丈夫だよ!虎徹お兄さんに雨音お兄さん!雛菊だよ〜よろしくね!」

「ちょっとびっくりしただけで全然平気!虎徹お兄ちゃんと…雨音お兄ちゃん!柊だよ、よろしくね!」



 私達が自己紹介をすると2人は何やらキラキラした目をこちらに向けている。

 ん?何で今そんな顔してるんだ?



「雨音聞いたっす!?瑞生さん達の言った通りっす!」

「あぁ、本当にお兄さんとお兄ちゃんって言い方が違うな。これなら呼ばれた瞬間にどっちか判断出来そうだ」



 あぁそういう事か、本当に言い方が違うから喜んだのか。

 要はあれでしょ、間違い探しで間違い見つけられた時みたいな、そんな喜びを見出したのかな?

 

 ……ああああああああ……マジで吐きそうだ。

 顔も…声も…似てて、名前なんてモロ一緒なんて私はこの人とまともに接する自信がない。

 唯一性格は似ていないけど、その性格の違いが救いにならない程にその他全てが似すぎている。


 雛菊もまともに接する様になるまでに相当時間が掛かったのに、あんたは姉さん以上にそっくり過ぎるんだよ。

 最悪だよ、アマネ……いや、本人は全く関与していないから悪くないんだけどね。



「では紹介も終わった事ですし、そろそろ2人を風呂に案内していただけますか?」

「了解っす!」

「承知です。2人ともこっちだ」

「「はーい!」」



 私達は虎徹さんと雨音さんに連れられてお風呂場まで移動を開始した。

 この屋敷は相当広い様で広間からお風呂場に行くまでに少し距離があった。

 お風呂場に着いたら2人にお礼をしてからお別れして2人だけで扉を潜る。

 こっちは女湯の様で扉には日本と同じ様に赤に垂れ幕に女と漢字で書かれていた。

 隣にも扉があってそこには男湯と青に垂れ幕に書いてあったよ。

 なんか、屋敷に来てから日本様式に触れる事が多いからここが地球だと錯覚しそう。



「あ、クルミーー!雛菊と柊来たぞーー!」


 

 脱衣所に入った瞬間にソヒョンが見えて目が合った……瞬間に浴場の方に向かって大声でクルミさんを呼ばれた。

 やばい…また泣かれる。

 そう思った直後に全裸のクルミさんが勢いよく出てきてバスタオルを体に巻き付けながらこちらに近づいて来た。

 泣かれると思ってたけど、もう既に泣いてた。



「2人とも!何処か行くなら声かけてっていつも言ってるでしょ!」

「「ごめんなさーーい!!」」



 施設にいた時同様に泣きながらの号泣説教が始まったけど、これは甘んじて受け入れるしかない。

 何故なら私達はクルミさんと出会ってからこれを何回もしてしまっているのだ。

 クルミさんのお説教はそんなに長くならないので素直に聞くのが一番早いことも理解している。


 そんなこんなで数分で終わった号泣説教の後はお楽しみのお風呂です!

 脱衣所には大きな棚がたくさん置かれていて、籠も置かれていたので多分ここに着替えを入れてお風呂に入るんだろう。

 着替えなどは持っていないので施設から着て来た服をまた着るために入れておこう。


 まだお昼だからなのかお風呂には施設から来た人しかいなかった。



「わあーー!ひろーい!お風呂デカい!柊早く入ろ〜」

「雛菊待って、私達は数年お風呂に入ってないし、まともに体洗ってなくて汚いでしょ?だから湯船に浸かる前にいっぱい体洗おう」

「あ、そうだね!危ないお湯を汚すところだった!」



 まぁ、しっかり洗っても湯船には垢とかが浮いちゃうんだけど、体が綺麗になってる証拠だから洗わずに入るよりはマジでしょ、くらいにしておく。

 本当に久しぶりに入るので頭を何シャンしたか分からないほど洗って体を洗う時も泡が黒くなって自分でびっくりした。

 清拭はしてたけど、やっぱり石鹸で洗うのは別格で綺麗になるんだな。

 しかし、自分達で洗うには私達の体は小さすぎるので後半はクルミさんとアグリさんにやってもらった。

 さすが何年も子供のお世話をしているだけあって洗い方が上手い……とろけるぅ〜

 私が蕩けている隣で雛菊も蕩けていたからこの気持ちよさは全員共通だな。


 髪と体を完璧に洗い終わったらいよいよ待ちに待った湯船に浸かる。



「ふぁぁ〜きもちいぃ〜〜」

「あ"あ"ぁぁ〜〜、極楽極楽ぅ〜」

「柊おっさんくさいぞ?」

「いいじゃん…湯船に浸かったら言いたくなるんだよ」

「言いたくなる気持ちはあたしも分かるけどねぇ?可愛い顔でジジイみたいな事言うんじゃないよ」

「久しぶりのお風呂さいこうですぅ」

「施設では濡れタオルで体拭くだけだったもんね〜」

「それでも拭いてなかった頃よりは全然良かったけど、湯船には勝てない」



 施設にもお風呂はあったけど私達商品に清潔さは要らないとかで禁止されていたんだよね。

 体拭くのだけは何とか交渉をして許可がもらえたけど、それでも機嫌悪い日とかは拭かせてもらえなかったし、グチグチ文句を言われたよ。

 たまに機嫌がいい日とか頭を洗わしてもらえたけど、それも石鹸は禁止で水で濯ぐだけで髪なんてゴワゴワしっぱなしだったからまともにお風呂に入れて本当に幸せ。


 そうして私達は久しぶりのお風呂をのんびりと楽しんで逆上せる前に全員で上がった。



「そうだ柊ちゃん薬持って来た?」

「うん、持って来たっていうか常に持ってるよ。いつもみたいに塗るのお願いしてもいい?」

「もちろん良いよ!その為にお風呂で待ってたし」

「雛菊も手伝う!」

「2人ともありがとう、お願いします!」



 私は2人に塗り薬の入った小さい容器を手渡して背中を向ける。

 2人はいつもの優しい手つきで背中全体に薬を薄く塗ってくれる。

 はぁ、せっかくあったまった体が薬で冷えてしまったよ。

 今度作るやつは温感性能がある物にしよう、冬場に冷え冷えの薬塗るの苦行だもんね。


 薬を塗り終えて、洋服に着替えようと籠を見ると新品の寝巻きが置かれていた。

 私のは鳥絵柄で雛菊のも鳥だったけど私のとは色が違って私は黄色雛菊はピンク色の寝巻きだった。

 他の子供達の寝巻きにも動物や花が描かれた物など様々な模様があり、大人達は落ち着いた雰囲気の無地の寝巻きが置かれていた。

 どれも触り心地が最高でみんな大盛り上がりで、おしゃれが大好きなソヒョンなんて飛び跳ねて喜んでいたし、ルオシーも珍しく嬉しそうに笑っていた。

 ちなみに施設から着て来たボロボロの服はご丁寧に全員回収されていた。

 全然気づかなかったけど、よく考えたら薬を籠から取る時に服のポケットに入れたはずの薬が籠にそのまま置かれていたんだよな。

 全く疑問にも思わなかった。



 あと……下着とかもめちゃくちゃ可愛い物になっていたよ、大人達は何故かサイズピッタリな物をそれぞれ用意されていて若干怖がっていたけど……

私も怖かったし。


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