第十八話『私が嫌われているだけだった』
こっちで今微シリアス展開繰り広げられてたのに何こっちでほのぼのやってんだよ。
感情がブレブレになっちゃうでしょうが。
「ソヒョン、何でこんな事になってんの?」
「ん〜、なんか色々説明してくれてたんだけどみんなにはちょっと難しかったみたい!」
「……あの黄色いお兄ちゃん…面白かったみたい……全員犠牲になった……」
「ありゃ〜」
ソヒョンとルアシーの話を聞いて大体理解出来た。
大人向けに小難しい話を顔面の厳つい隆之介さんがしてて、それに飽きた子供達があの中でも比較的柔らかい雰囲気のある一樹さんにちょっかいを出したら思いの外ノリが良く遊んでくれた為、全員遊んでくれる人間だと判断した子供達に隆之介さんすらもおもちゃにされていると……いや、対抗しろよ。
何大人しくジャングルジムになってんだ。
「はいはい!あんた達やめたげな!全員で乗ったらガタイの良い男でも骨が折れちまうよ!」
「「「「はーーーい!!」」」」
アグリさんが注意をすると子供達は素直に従って蜘蛛の子が散る様に保弘さん達から離れて行った。
流石は肝っ玉母ちゃん。
「ふぁーあ!助かっだぁ!」
「あ"ーーー!あのクソガキ共めちゃくちゃしやがってッ」
「…子供はあんなにもパワフルなものなんだな」
三者三様違う反応を見せた3人は全てがグチャグチャになって、まるで物取りにあった様な酷い様になっている。
しかし隆之介さんの反応は意外だった、子供達に引っ付かれた時点で払い落としたりするものだと思ってたけど、さっき隆之介さんの肩に乗って降りられなくなった子供を優しい手つきでゆっくり降ろしてあげていた。
………もしかして隆之介さんって子供が嫌いなんじゃなくて単純に私が嫌いなだけ……?
どうして……?雛菊にそっくりな可愛すぎる顔で、雛菊にそっくりに演じている性格なのに……あの野郎何が不満だってんだ。
……胡散臭いのか?天真爛漫な子供の演技がぎこちなくてうざったいとか…?
……でも今まで誰にも不自然だと指摘された事がない、むしろ上手いと褒められたことしかない。
何で扱いが違うんだ?
隆之介さんの態度に引っ掛かりを覚えたけれどみんなが移動を始めたので考えるのやめた。
いつもの如く考えたって解決できない事は考えない。
嫌われているなら嫌われているでそれに合った関わり方をして行くだけだし、私は雛菊の真似っこをしているから万が一雛菊にも同じ態度を取る様ならそれの対策もするだけ。
その時は前世の姉夫にウザい過ぎると怒られた妹の本領発揮させてもらうよ。
「それじゃ今から組に行くんだけど何か持っていきたい物とかがあったら今のうちに取ってきてねー!」
「「はーい!」」
一樹さんの号令で殆どの人達が物を取りに行った。
基本的に私物という物は無いんだけど、アグリさんとかは赤ちゃん用品を取りに行ったし、サイモンさんも書庫に欲しい本があるそうでそれを取りに行って、私物じゃなくても持って来ていいならと半分以上が何かを取りに行った。
まぁ、この施設もう壊滅するだろうし泥棒にはなんないでしょ。
保弘さん達も黙ってるから多分良いはず、ダメなら自分の物だけだと言われるだろう。
そんな私も用事があって中庭まで来ていた。
「あれ〜?いつもこの辺に隠れてるんだけど、どこ行ったんだろ?あっいたいた、保護色すぎてどこにいるか分かんなかったよ」
そう言って見つけたのは中庭に植っている木の葉と全く同系色の緑の羽毛を持ちブルーの瞳の美しい鳥。
サイズは鷲のように大きいのに何故が隠れられると全く見つける事が出来ない不思議な鳥なんだよね。
「おはよう。はい、これ今日の朝ごはん。これが最後になるからね」
最後という柊の発言に人間の言葉を理解出来ているのか分からないが鳥は不思議そうに首を傾げながらのんびり餌を食べている。
伝わるとは考えていないが一応今までお世話になって来た子なので説明をしておく。
「今日色々あって施設を出る事になったよ、問題が無ければ当分別の場所で生活する事になるからもうここには戻って来ないと思う。いつも通り背中のバックに手紙を入れるからルゥに届けてね」
「クルルッ」
「施設ではお世話になりました。別の場所でもよろしくね」
「クルルルッ」
柊が話し終えた事が分かったのか鳥は急いで餌を食べ終えていつもの様に柊の手を数回突いて開けっ放しになっている中庭の天井から堂々と羽ばたいて行った。




