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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第十七話『命を賭ける』


「みんなー!もう大丈夫だってー!出て来て良いよ!」

「ほんとに?」

「こわいことない?」

「やっと出れる!」

「その前にこのお兄ちゃんが雛菊達を保護してくれるんだって!」

「ほごってなあに?」

「うーん、施設から出てあったかいご飯食べたりお風呂に入れたりするよ!」

「ほんとに!?やったー!」



 雛菊が部屋に行き渡る様に大声で伝えると子供達は飛び跳ねて喜んでいたけれど、流石に大人達は警戒した顔付きになり黙ったまま素早い動作で子供達を背中に隠す様に前に出た。


 そりゃそうだよね、いきなり保護されるって言われても色々経験して騙されて来た大人達が子供達と同様に素直に喜んで付いて来てくれる訳がない。


 

「みんな、このお兄ちゃん達は柊達を騙そうとしてるわけじゃ無いよ!」

「ッ!柊ちゃん!やっと帰って来た、遅いから何かあったんじゃ無いかって心配で」



 私が警戒心MAXの大人達に声を掛けるとその中からクルミさんが飛び出して来て駆け寄って来た。

 その後ろにはアグリさんも立っている。



「クルミお姉ちゃん、心配かけてごめんね?でもこの通り怪我とかしてないよ!」


 

 私はその場でみんなに見える様にクルッと一周して見せた。



「良かった…サイモンさんも怪我とかしてませんよね?」

「えぇ、何の問題もなく帰還いたしました。ご心配痛み入ります」

「お前ら心配させんなよ、なんかやるなら俺らを連れてけ!」

「即戦力にはならんが盾くらいにはなれるぞい」

「それは駄目だよ、命をぞんざいに扱っちゃ駄目」

「分かっとるわい!物の例えじゃ」



 全くサイモンさん以外の5号棟の人人達は自分を盾にすることに何の躊躇もないから連れて行けないんだよ。

 死ぬのは勝手にしてもらって良いけど、私の目の前で死なれると目覚め悪いでしょ?

 雛菊だって悲しんじゃうし、絶対やめて欲しい。


 で、考え事をしているうちに大人達数人にサイモンさんと奥に連れて行かれる。

 そこでコソコソ話をさせられた。



「それで柊、あの人達は信用出来んのかい?」

「うーん、絶対ではもちろん無いけど信用しても良いと思ってる」

「でも柊、雛菊の真似っこしてんじゃん。それって信用出来ない人間がいる時にやるやつじゃなかったけ?」

「これはもしもの時の為にリスクヘッジしてるだけ、この人達は信用出来るけど行った先で出会う人達は信用出来るか分かんないでしょ?全部曝け出して裏切られたら逃げる事も難しくなる」

「そう言うことかい。あんた分かりにくいんだよ!変に警戒しちまっただろ!」

「それは、ごめん」

「なあなあ、リスクヘッジってなんだっけ?」

「悪い事が起きる前に悪い事を想像しておく事……みたいな事柊が言ってな」

「そうだったそうだった!ありがとな!」



 この人達は普段の私を知っている。

 私は普段自分の事を『私』と言っているけど、施設長の前や危険人物と判断した人或いは判断が難しい人が居る場合は言葉や分かりやすい合図などで伝える事はせずに雛菊の真似をして、この人警戒してください!とみんなに伝えている。

 みんなの前以外では大体雛菊の真似をして私か雛菊かどっちがどっちだか分からない様にしている。

 昔私と雛菊を区別出来る様に髪型や服装を別にしていたことがあったんだけど、それで酷い目にあったから真似は普段からの癖みたいなものなんだよね。口癖とかと似た感覚?

 まぁ、今その話は置いておいて私はこのヤクザ達を信用している。

 しかし万が一裏切られた時絶対の信頼を向けているのは不味いのでみんなにはもしもの時に逃げられる様に警戒しといてという意味も含まれている。



「取り敢えずあのヤクザ共に着いて行くって事で良いのかい?」

「うん、ここに残ってもメリット無いからね」

「了解」

「ごめんね、私がどうにか出来れば良いんだけどこの大人数を今直ぐ一斉に安全な場所に連れて行く事は難しくて……」



 言い訳がましくて申し訳ないが、今どうこうすることは出来ない。

 いくらルゥ達の協力が得られると言ってもこの大人数を移動させる事も住居を用意する事も時間が掛かり過ぎてしまう。

 なら、せっかく保護してくれると言っていて、幸太郎さんの関係者でもある保弘さん達に任せるのが今は1番安全で良いと私は思っている。

 さっきの瑞生さんの口振りから移動手段も住居も全て用意されている様だし。



「謝る事ないって、僕達は2人が来るまで地獄にいたんだよ?」

「そうだよ、服なんてそこら辺に落ちてるゴミで作った物だったのを柊達が毎日まともな服が着れるように変えてくれた。本当に感謝してる」

「飯はいまだに少ねぇけど、毎日食べれる様になったし」

「そうよ?だから申し訳ないとか思わないで?私達は感謝してるの。正直あの人達の事は信用できないけど、柊が信じたなら私達はそれで納得する」

「あの男達を信じるのは今は無理だが柊の事は信じてるからな」

「……ありがとう」



 ここにいる人達は酷い目に合って来たのに腐る事なくいい人達しかいない。

 私の私利私欲の為の行動に感謝をくれる、貴方達の為では無いと言っているのにそんな事関係ないと言って聞かない。

 この人達が酷い目にあったり、最悪死んでしまう事があったら私は悲しいと思えるだろうか……きっと雛菊は私と違って大泣きして悲しみに暮れるんだろうな。

 悲しめるかは分かんないけど、雛菊が泣く姿は見たく無いから私は命賭けてこの人達を守るよ。

 もちろん雛菊の方が大事だから命に代えても守る事は無いけど……。

 ごめんねっ!



「みんなの事命賭けて守るよ」

「命をぞんざいに扱うなって言ってた奴が命懸けるっ言うなよ」

「命懸けるなら私達が懸けるよ。まだ柊達に恩返し出来ていないもの!」

「柊の言うように死なない程度にな」

「うん、本当にありがとう」

「雛菊も柊の事信じてるよ!それにあのお兄ちゃんは達はいい人だよきっと!なんか優しい人のオーラがある!」

「…雛菊が言うなら絶対間違いないね。人の見極めは百発百中だもんね」

「えっへん!」



 雛菊は昔から人を見極める力が飛び抜けていた。

 どんなに外面が良い人間であっても雛菊が怖いと言った人間は大体裏でエグい事やってる事が多い。

 今のところ雛菊の見極めは百発百中、外れた事がないから信用している。

 ルゥが言ってたけど、雛菊は私と違って魔力を持っているそうで人間の纏っているオーラが見えている可能性があるらしい。

 魔力を持っている人間の中でもオーラが見える人間は稀な存在な様でルゥでさえオーラは見えないらしく、詳しく知りたいなら専門家を探しておくと言ってくれたのでお願いしているところなのだ。

 


 アグリさん達に大体の報告も終わって保弘さん達を見ると何故か子供達に揉みくちゃにされていた。

 何やってんの?


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