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シオンの涙雲(改訂版)  作者: 居鳥虎落
第一章

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第十三話『妙には余計だよね?』


 私が双子の姉があると言うと秋巴さんは納得したように満足そうに頷いている。

 


「やっぱりか。お前らとは直接会った事はねぇよ、ここに潜り込んでた海斗って奴からお前らの事死ぬほど聞かされてたんだわ」

「かいと?」

「あ?知らねぇか?海斗が人身売買の組織にいる割に妙に明るい双子がいたって楽しそうに言っててなぁ。名前が雛菊と柊って聞いてたからお前の事だと思ったんだが、お前妙に明るいだろ?」

「柊みょうに明るいかな?でもいつも元気だよ!楽しいし!」

「妙かは私にも分かりませんが、柊達はこの施設に来た当初から明るいですね」

「こういう施設では明るいのは珍しいんだよ。何処に売られるか分かったもんじゃねぇからな、あと言ったのは俺じゃなくて海斗だからな」



 妙にって意味は理解できるよ。

 私達がここに来た当初はみんな暗い顔して、明日にすらなんの希望もない!って顔してたし、それを明るく変えたのは雛菊だ。

 雛菊がどんなに酷い状況でも何とかなるよって笑っているからみんな徐々に明るさを取り戻していったんだよ。

 私のサポートもちょっとは役に立ったけどね!

 いくら雛菊が施設の商品( )達を元気付ける為に頑張っても嬲り殺される未来しか想像出来ない人間に売られる事を考えたら絶望しかないだろう。

 だからそうならない為に施設内の事はサイモンさんとマイロくん、施設外の事はルゥ達にも協力してもらってまともな人間に売れるように手を回してもらっていた。

 頑張ったとは言っけど私がしたのは提案くらいで特に動いてはいないのです!

 頑張ったのは雛菊とサイモンさんとマイロくんとルゥ達であって私は特に何もしていなかった!

 あ、中庭は作ってもらう為に頑張った!

 でもこれは私が欲しかったから頑張って交渉したから、つまり自分の為なのでやっぱり頑張ってないわ。


 めっちゃ話が逸れたけど、幸太郎さん意外にもう1人潜入してた人がいたんだ。

 でもカイトなんて名前の人この施設には居た事無いけどな。

 ()()()と名前似てるけど、そんな似たような偽名普通は使わないよね?



「なぁ秋巴、海斗さんって偽名使ってなかったけ?前に教えてもらったんだよな〜リクヤ、リク、とか言ってた気がする」

「あぁ〜確かに言ってたなぁ、自分の名前に海が付くから陸って漢字使いてぇって言ってたな」

「……もしかしてリクトお兄ちゃん?」

「あ!そう!その名前だ!」



 うーん、まさかとは思ってたけどネーミングセンスどうしたの?

 しっかり考えてるのに適当に考えたみたいな名前でびっくりだよ。

 でも、私とサイモンさんが怪しんでいたのもリクトさんだったから合ってて良かったよ。

 リクトさん、本名海斗さん以外にも潜入している人がいるのかって一瞬疑っちゃった。


 海斗さんは幸太郎さんが駆け落ちして数日後に雇用された人。

 脱走不可能と言われていた施設で脱走者を出してしまったので逃げ出す人が増える事を警戒していつもより多く人が雇われた。

 幸太郎さんは亡くなった事になっているけれど、自分なら、外にさえ出られれば何とかなると考える人もいるからって施設長がめっちゃ警戒してたのを覚えてる。

 もちろん大量に雇ってても身辺調査は1人も手を抜いていない。

 しっかりと裏の人間である事も人間性が真っ当ではない人を選んでいたし、何かあった時の弱みもそれぞれ把握していた。

 

 海斗さんは商品の監視役で雇われた人なんだけど妙にコミュ力が高くて直ぐに施設長に気に入られていて、ほぼ施設長の補佐のような仕事をさせられていた。

 

 海斗さんは幸太郎さんと違ってしっかり裏の人間の雰囲気がして逆に安心したの覚えてるなぁ。

 でも幸太郎さんみたいによく私達に話しかけて来たし、何処から持ってくるのか分かんないけどお菓子なんかも良くくれた。

 しかも雛菊が貰ったお菓子を小さい子達にあげていると知ると次の日から倍の量くれる様になった。

 商品に優しくするといつもなら施設長が烈火の如く怒るんだけど、海斗さんは怒られる事なく何故か黙認されていた。

 当時は海斗さんの事をお偉いさんの息子とか親戚で施設長でも下手に手が出さずにいるのでは?って噂が流れていたけど本人の性格がそんな感じしなくてその噂はすぐに消えた。

 私達の事を品定めしている感じも同情している様子もなく。

 何かを探している様な、確かめたい事がある様なそんな目で私達の事を見ていたのが印象的だった。

 今思うと幸太郎さんの事を聞きたかったんだろうなと思う。

 明確に聞かれる事はなかったけどね。


 海斗さんは幸太郎さんと違って本当にいつの間にか居なくなっていたんだよね〜

 だから施設長がカンカンに怒っていた。

 手塩にかけて育ててたっぽいから可哀想だったねー



「お前やっぱり会った事あったんだなぁ、海斗の奴最初は潜入とか面倒だって言ってたのに面白い双子がいるって楽しそぉに話してたよ」


 

 私がぼぉーっと海斗さんの事を思い出していると秋巴さんの大きな声に呼び戻された。

 危ない危ない、元気いっぱいの子供はぼーッと何か考える事少ないんだから楽しそうにお喋りしなきゃ。



「会ったことあった!でも柊達そんな面白い事した覚えないよ?海斗お兄ちゃんとはお話とか鬼ごっことかしてたからそれが楽しかったのかな?」

「そうじゃねぇと思うぞ?まぁ、次会った時それを言ってやらぁ良いんじゃねぇか?喜ぶぞ」

「本当に?じゃあ会えたらゆう!」

「そうしてくれ、あいつ落ち込んでたから少しは元気出るだろ」

「海斗お兄ちゃん元気ないの?風邪引いた?」

「あーなんて言ったらいいかぁ」



 私の問いに秋巴さんは何やら言いづらそうに言葉を喉で詰まらせているようだった。

 その後ろから瑞生さんが呆れたような顔で溜め息を吐きながら話し始めた。



「風邪とかではないのですよ。施設を追い詰める為の情報は揃ったので撤収を命じたのですが、小さい子達を残して帰る事に罪悪感…ではないのですが、それに近い感情を持ってしまったようで…」

「取り繕ってたけど、帰って来てからご飯とか食べてなかったもんね〜」

「…そう、なんだ?」

「そうなんです。なので会ったら是非お願いします」

「分かった!柊達海斗お兄ちゃんといっぱいお話するね!」

「ありがとうございます」



 私は会いたくないし、話す事も特に無いけど、雛菊は会いたいし話したいだろうからそれっぽいこと言っとこ。

 子供達も懐いていたし会いたいでしょ。

 突然居なくなってみんな心配してたからきっと喜ぶと思う。

 それにしても調査で来ているんだから最初から置いて行く事は決まっていたのに落ち込むほど情が沸いちゃったのかな。

 それでも連れて行くとかせずに速やかに撤収する事を選んだ海斗さんは優先順位をしっかりと理解している人だね。

 

 しかし!全員助けたいと言って実際に行動出来てしまう雛菊はもっと凄いんですよ!



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