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第五話:肉体と悪魔 (前編)

 さて。


 いまからン十年ほど前の、猪熊先生がまだ九才のおんなの子だったころのお話。


 彼女はその頃、《上石神井タイガース》という団体の一員というか強力な助っ人で、この草野球チームのリーダー、つまりは彼女のお兄さんの要請を受けては、ナマイキかつハナッタレを絵で描いたような男の子連中にまじって、投げては彼らを連続三振、打っては全打席ランニングホームランを決めるという、なんか昔の少年マンガにでも出ようものなら、メインヒロインそのものよりも人気が出てしまったサブヒロインみたいなことをやっていたらしいのだけど、残念ながら、実際の小学生男子ってのは、マンガの中の小学生男子よりもぜんぜんバカでガキなので、


「なあ、おい、タケシ、いつまで妹を試合に出しとくつもりなんだよ」


 とか、


「だいたい女が野球なんてオカシイんだよ」


 とか、


「ウチの投手陣を見てみろよ、プライドをギッタギタのメッタメタのクッチャクチャにされて、野球やめるとか言い出すやつもいるんだぞ」


 とか。


 そんな感じの、いわれのない誹謗中傷を、かげにひなたに言って来ていたらしく、


「気にすんな、ヤワラ。みんな、お前が強くてかわいいから、イジワル言ってくるだけさ」


 と、妹バカのお兄さん――さっきの“タケシ”さんね――も言うのだけれど、


「またなんかグチャグチャ言って来るヤツがいたら、全員オレが、ギッタギタのメッタメタのボッコボコのケッチョンケッチョンにしてやるさ」


 と、そんなお兄さんの、いまの時代だったらちょっとした炎上騒ぎを起こしてしまいそうな御発言を聞き流しながら先生は、


「いいのよ、お兄ちゃん」


 と、しょんぼりしながら返すだけなのでありました。


「野球だって、お兄ちゃんに言われてやってるだけだし、みんなが裏で私をなんて言ってるのかは知ってるもん」


「ヤワラ……」


 あ、で、一応、このころ、このくそガキどもが、先生をどんなあだ名で呼んでいたのかは、わたしも先生から聞いて知ってはいます。


 知ってはいますが、あまりに腹の立つあだ名だったので、この連載では書かないことにしておきます。


 ほんと、男子ってバカでバカでバカな生き物だなって、わたしなんかは想うんですけど――、


「でもね、ヤスコちゃん」


 と、ここで先生。


「やっぱその頃の写真とか見るとね、お世辞にもカワイイとは言えないのよね、私」


 そう言って、暴走し出したわたしの口をたしなめてくれます。そうして、


「それでも、お兄ちゃんは、ずっとカワイイ妹だって言ってくれてたし……」


 と、とおい夜空をながめつつ、


「ほんと、お兄ちゃんがいたから私……、私……、ここまで頑張って……」


 と、ここで言葉を詰まらせると、そこに輝くひとつの星に、お兄さまの面影を重ねるのでありました。


「くすん、くすん、くすん……」


 と、手にした木綿のハンカチーフを目元に当てる先生。


 いや、ほんと、このご兄妹のキズナの深さについては、『とってもトレビアン』の一エピソードとしてマンガにもなってたりするので、詳しくはそちらを読んで頂くこととして――って、あー、あと、お兄さんのタケシさんはしっかりとご存命なので、そのへんも誤解なきようにして頂くとして――それはさておき。


     *


「それだけじゃないですよね?」


 と、とおい夜空から目をそらしながらわたしは訊く。


「お兄さんのちからだけじゃないですよね? 先生が頑張れたの」


 すると、


「え?」と、まったく濡れていない木綿のハンカチーフを、目元から離しながらの先生。「そう、ね……、そう……、私にはマンガが……」


 と、また誤魔化そうとして来たので、


「いやいやいやいや、先生」わたしはさらに食い下がる。「今回の連載では、そのへんもきちんと話して頂きますよ」


「話して頂く?」と先生。「……ってなんのこと?」そう言ってまたとぼける。


「とぼけないで下さい」と、続けてわたし。「タケシさんからも、お話は聞いて来ております」


 と、まるでいっぱしの小説家かなにかにでもなったつもりで、


「今回こそは、きちんと話して頂きますよ、茂木さんとのこと」


 すると、


「えー、でもー、それはー」


 と先生が言って、それに続けるかのように、


     *


「悪かったわね、人間さん」


 と、とつぜん悪魔のミアさんがしゃべった。


「こいつらみんな、天使だわ」


 ここは、時間と空間が切り替わった、いつかのしろい、天使たちの森…………のようだけれど、ちくしょうッ!!


 どうやらわたしは先生に、話をそらされてしまったようである。


 あー、もー、どうにかしてさっきの先生のところにもどりたいのだけれど、わたしも所詮は、かなしい物書き人のひとり。目のまえで展開される奇妙な現象を無視することなど出来ず――、


 いま、ミアさんの背中には、さき程まではなかったはずの、黒くおおきな羽根が生え――、


 と、こちらのお話の続きを書き始めてしまうのであった。そのため、


「地獄の方が、マシだったかも」


 と、ミアさんのセリフは続き、そんな彼女を取り囲むように、無数の天使たちも、その本来のすがたをとり戻そうとしている。


「でも、多過ぎるわよね」ちいさく彼女はつぶやいて、「……スリエルを捕らえに来たの?」


「マシってのはどういう意味だよ?」と恵一さんが訊いた。彼女の方はふり返らずに、「天使ってのは善いもんで、地獄にいるのが、悪者だろう?」


 そう問う彼の視線の先では、とぼけた瞳のフクロウが、黄金色の天使に戻ろうとしているところである。が、


「それは、ただの区別」とミアさん。


 爪の伸び出たおおきな右手を、恵一さんの肩に置き、牙生え黄色くひかる目で、周囲をながめ、睨んでまわす。


「負けて堕とされたから、悪もんにされてるだけ」


 飛んで逃げようにも、うえもびっしり天使だらけで、


「人間にとっちゃどっちもどっちだし、コイツらの方が、よっぽど容赦ないくらいよ」


 こいつ連れてると、逃げ出すのは難しいかもね――そうミアさんは想ったが、


 そう想ってみたところで、ここで恵一さんを手放すと、


「コイツらにとっちゃ人間なんて、エサのひとつに過ぎないからね」


 彼はきっと、時間エネルギーごと天使たちに食べられ、存在そのものを消されてしまうだろうし、


「よほどの聖人でもない限り、“アイツ”の恩寵は受けられないのよ」


 そうすると、問題の天使スリエルを追いかける手駒も手段もなくなってしまう。


「アンタ聖人? ちがうわよね」


 逃げないと天使にやられ、逃げると地獄に戻れない。


「ほんと……、困ったわね」


 と、ひかりが満ちる森のなか、身動きが取れなくなるミアさんだったが、ここで、


「じゃ、じゃあ、芹沢は?」


 と、そんな彼女の思考のループを止めるかのように、恵一さんが訊いた。


「アイツはなんで、喰われてないんだ?」


 肩に置かれた悪魔の右手と、こちらを向いた天使の右手が、奇妙なリアリティを持って、彼に迫って来る。


「一ヶ月近く、あの天使といっしょだったんだろう?」


 続けて彼は訊き、


「うん?」


 と実際、思考のループを止めながらミアさんは訊き返した。


「一ヶ月?」


 問題の天使スリエルが、地獄から逃げ出したのは、こちら側の時間にすると、おおよそ一週間と二日前だ。


「一ヶ月ってなんのことよ」


「さっき芹沢が言ってたんだよ、「ウチには一ヶ月ほど前からいるよ」ってな。あのネコが、天使なんだろ?」


「…………え?」


 と、ここでようやく合点のいくミアさん。


 それなら彼女が――まあ、悪魔的にはあんまり信じたくはないが――芹沢さんの生命や魂や時間エネルギーを食べなかったことの説明がつく。


「あんた、名前は?」とミアさんが訊き、


「は?」と恵一さんがふり返った。


「あんたの名前よ、人間さん」


「鳥取……、鳥取恵一……、だけどなんだよ、こんなときに」


「オッケー、ケイイチ。これならなんとか、アンタも私も、消されずに済むかもね」


 と、ひかる目玉で彼女はほほ笑み、そうして――、


     *


 “例えば、こんなお話がある。”


 と、ここで突然、変な挿話がはさみ込まれた。


 “これは、ある町の若きマッドサイエンティストが、タイムマシンの製造に成功、紀元33年頃のパレスチナに行ったときのお話だ。”


 しかも、この挿話に対してわたし (あるいはこのお話の作者)は、これを止めるどころか、読者の皆さまそっちのけで、そのまま話を、続けて行くのであった。


     *


 彼は、たいへん熱心なカトリック教徒であったが、それと同時に、「あんないいひとがはりつけにされてしまうなんておかしい」と想ってしまえるような、そんな、ある種純粋なこころを持った、カトリック教徒でもあった――で、なければマッドサイエンティストなんかにはなれない。


 なので当然、この若きマッドサイエンティストは、最初のタイムトラベルで、死刑前夜の彼のもとへと向かうと、「私が助けるので、いっしょに逃げましょう」と、問題の“あんないいひと”を説得したが、しかしそれでも、彼の意志は固く、と言うかなんか依怙地な感じになっていて、結局そのまま、その死を受け入れてしまうことになった。


 なので当然、この若きマッドサイエンティストは、次のタイムトラベルでは、それより更に数週間ほど時間をさかのぼると、“あんないいひと”の弟子のひとりをつかまえ、「いますぐ、その手の中の銀貨三十枚を、祭司長に返して来てくれ」と、彼を説得した。


 この説得は弟子の心にひびき、さっそく彼は、銀貨三十枚を返すべく、祭司長にコンタクトを取ろうとしたのだが、なんどやっても結局、会えずじまいとなってしまい、そのため問題の“あんないいひと”は、歴史に記されているとおり、あるオリーブ畑のまえで、ローマ兵らに捕縛されてしまうことになってしまう。


 なので当然、この若きマッドサイエンティストは、この後もくり返しくり返しくり返し、いくつもの時間、いくつもの空間、いくつもの歴史の分岐点にタイムマシンを飛ばしては、いくつものいくつものいくつもの、ルート変更を試み、時空によっては、のぞみ通りに行くものも、いくつかはあったのだが、それでも結局、問題の“あんないいひと”が、十字架に架けられ殺される運命、歴史を、変えることは、出来なかった。


 なので当然、この若きマッドサイエンティストは、ながくてながい、ながくてながい、ながくてながい、ながくてながい、ながくてながい、ながくてながい、ながくてながい、ながくてながい、ながくてながい――、永遠とも想われる、ながくながすぎる時間漂流のあと――彼はいまや、全身白髪の老人となっていたが――、とうとうすべてを諦めると、問題の“あんないいひと”のもとへと向かい、当時の人々と同じ衣服を用意、彼を、彼の十字架から、降ろす手助けを買って出ることにしたのであった。


 そうして、この若き、いや、全身白髪の年老いたマッドサイエンティストは、天へと向かうその階段を、最初にのぼると、“あんないいひと”のうすい胸板に耳をあて、その心臓がまだ動いているかどうかを確かめようとした。


 が、しかし当然、この年老いたマッドサイエンティストが、“あんないいひと”の冷え切ったからだから、ひとつ音をも聴き取ることは、決してなかったそうである。


 なので当然、ここに至ってようやくやっと、この若きマッドサイエンティストは、彼を助けることをやめ、彼のタイムマシンは、その日、その時、その場所で、ここに至ってようやくやっと、壊されることになったのである――と、まあ、そう言うことなのである。


 なので当然、ここに至ってようやくやっと、わたし (あるいはこのお話の作者)は、この挿話を、ここで止めることが出来るのである。


 なので当然――、


     *


「は?」


 と、こちらを向いた恵一さんがわたしに訊く。


「これはいったい、何のはなしだ?」


 彼のまわりの天使たちは、すでに姿を、本来のかたちに戻しており、いつ同時に襲いかかって来ても、おかしくはない。なので、


「またいつもの字数稼ぎか?!」


 と、テンパった恵一さんがおっしゃる気持ちも分からないでもないが、失敬な、もちろん理由なら――、


「もちろん理由ならあるわよ」


 と、ミアさん。わたしの代わりに弁解、もとい説明を始めてくれる。


「歴史は変えられない、絶対に」


「は?」


「これが言いたかったのよね」と、本来の姿から人間モードに戻りながらの彼女。「“あんないいひと”は必ず、弟子に裏切られ、兵士に捕らえられ、あの丘のうえではりつけにされる――結構いいヤツだったのにね」


「まるで会ったことがあるような言い方だな」


「同僚が体調不良でさ、サービスのつもりで、この世のすべての王国とその栄華を見せてあげたんだけど、結局彼には――歴史には?――効かなかったわね」


「それは……、“あの人”も分かってたってことか?」


「どこまで見えてたかは、分からないけどね」


 とミアさん。恵一さんのからだをこちらに引き寄せながら、


「すくなくとも、歴史は変えられないって直観だけは――」


 そう言って、問題の天使スリエルを探す。そうして、


「あったみた…………見つけた!」


 と、次の瞬間彼女は、恵一さんのからだを小脇に抱えたまま、天使たちの間を縫い、問題の天使スリエル――彼女はその時、まるで他の天使から隠れるように、例の白ネコに姿を変えていたけれど――のもとへと飛び込んで行った。そうして、


「飛ぶわよ、ケイイチ」


 と、彼にささやき、


「飛ぶ? 飛ぶってどこへ」


 そう問う恵一さんのことばに、すこし間を置いてから、


「過去よ」


 と、応えた。


「過去? 過去っていつのだ?」


「いいから! ヤツにさわって!」


 すると、このミアさんの言葉に、その意味も分からぬまま、恵一さんが彼女に触れると、


     *


 グォッ


 と、とつぜん、


 時間、と空間、

 が、

 ちぢみ、たわんで、


 ゴォオォオォォン


 と、七色の時空不連続帯がのび、

 て、くら、

 んで、


 コ、ォーーーーーーーーーーーン

 と、


 真空まみれの正の空間と、


 ク、ゴォーーーーーーーーーーン

 と、


 注釈まみれの虚の空間が、


 黄金、あるいは白金、

 の、


 慈悲と、希望と、なげき、の天、

 天使、

 を、


 ひか、

 り、

 ひかりの森、森、森へ、


 と、

 溶かし、消し、

 て、て、て、


 巨――大、

 な赤子たち、

 の、


 跳ねまわ、

 る、

 る、

 る、


 はねまわる音、

 と、

 と、

 と、

 と、


 と、とっー、くるった?


 くる、

 くる、

 くる、

 くる、

 くるっ/

 た、


 管弦楽のあかい不協和音、

 が、


 方、

 はこ、

 はこぶね――はこぶね?


 方舟に乗り遅れた二匹、

 二匹、


 のーーーーー、ユニコーン、


 そ/れ/それ/それに/、

 かれ、らをみ、っちびく、


 …………////…………、


 かれらをみちびく、

 三頭立てのペガサ、スの、


 ト、トー、ット、

 ト、トー、ットト、


 ト、トー、ット、

 ト、トー、ットト、


 ト、トー、ット、

 ト、トーーーーーーー、


 と、


 くり返さ、

 れるなにか、

 なにか、なにか、

 なにか!


 の脈ど――ある、ある、ある――う、


 あるいは!


 あるいはふるい、

 あるいはフルイ、

 アルイハフルイ、


 はっ、はっ、はっ、


 撥弦楽器!


 の、鼓動!


 そうして!


 既知の未来のどこかの不確定領域またはまたは未来の未知性ゆえのきぼういかりうたおどりいのりぜつぼうこうかいめくら、それらそういったものたちのそうたいせいそう・たい・せい・にいろどられたみかくじつな 《観測/関心》りょういきへもぐりこみはいりこみそれらにとけこみそれらにころがりこもうとしたところでそれにあらがうように、おい!、とけいいちさんはさけび、


 おいッ!


 と、けいいちさんはさけ、、、、、叫んだ。


 これはいったいッ!!


 そうして、


     *


 にゃーん?


 と、突然、彼女でも天使でもない、まっ白な毛並みのアメリカンカールが、どこからともなく現れて、彼の足もとにすり寄ろうとしている時間と空間に彼は立っていた。そうして、


「さわるな!」


 と、前回よりも一瞬はやく、ミアさんの叫ぶ声が、彼の耳へと届いた。そうして、


 え?


 と、こちらも前回より一瞬はやく、戸惑う彼のからだは後ろに飛びのき、そうしてそのまま、


 あれ?


 と、段差につまづき転げてまわり、そのハンプティ・ダンプティを、


 ドンッ、ガラガラガラ。


 と、うしろのオープン棚に突っ込ませることになった。そうして、


「いってててて、」


 と、恵一さんはうめき、安定しかけた時間と空間と暗闇のなか、趣味の悪い、芹沢さんの本や時計やネクタイが、そんな彼の頭に落ちて来て、また、


「ここは?」


 と問う彼のつぶやきに応えるように、これまた趣味の悪い天使の置物が、しろい造花の花束とともに、彼のお腹に、堕ちて止まった。


「……芹沢のマンションか?」


「そうね」とミアさんは応えた。「さっきアンタが、喰われた時間ね」


 そう言う彼女の目のまえには、すでに白いネコはなく、代わりに、


「そうよね? スリエル」


 と呼ばれる、白いドレスにケープの女性――天使は立っていた。


「事情は大体わかったけどさ」と続けてミアさん。「アンタやっぱ、こっちの方が合ってんじゃない?」



(続く)

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