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第一話
眠らない街、歌舞伎町で働く
本庄 瑠依菜、24歳。職業、キャバ嬢。
歌舞伎町ではそこそこ有名である「アンジェリーク」で「るうな」という源氏名で働いている。
お店ではかなりの人気嬢であり、ナンバー上位の常連。先月は接戦の末、ナンバーワンになれた。
勉強だってそこそこ、運動だってそこそこだった私が一番を獲れる世界。
私はこの世界が好きだ。水商売が好きだ。これからだって頑張っていって、いつかは自分の店を持ちたい。
一国一城の主になるのだ。
そう、思っていたのに……
(どこですか?ここは。)
見渡す限り中世のような街並みは、明らかに歌舞伎町ではない。
人々の格好だって、なんだか時代錯誤な気がする。
(わたし、昨夜飲みすぎてベロベロだったし、これ夢ってこと……?かな?)
いや、そうとしか思えない。これは明晰夢というやつか。
初めて経験したが、なかなかにリアルでびっくりする。
肌寒いような気温や、地面を歩く感触まで再現されているのだから、一見本当にそこにいるかのようだ……。
(え。夢だよね?)