9.別れと命名
パーティーを組む事が決まった翌日
ホームルーム後に俺達6人は担任のガーゼスの所へ行き
『ガーゼス先生、俺達はこの6人で実習のパーティーを組む事にしました』
何故か俺から伝える様にビクター王子から言われた
他の4人もそれで良いと言う
俺ガーゼス先生に伝えると、先生では無く周りのクラスメイトがざわつく
「殿下達6人か、まあラインハルトもいる事だし大丈夫だろ」
あっさりと承認されたが
「パーティーのリーダーはラインハルトです」
とビクター王子が言うと更にクラス内がざわついた
ガーゼス先生は何か言いたげであったが無言で頷く
その時に貴族の子供3名がビクター王子の前に出て
「殿下、ミハエルやエミリーは解りますが、何故平民が3人も入っているのですか?」
「そうです、殿下程の御方が平民とパーティーを組むなど王国貴族である私達は認める事は出来ません」
「その通りです、こんな平民より我等貴族の子弟が殿下と組むべきです」
おぉ〜ココに来てテンプレの様な貴族主義的な意見
俺は自分達が平民だ平民だと蔑まれた事よりも、今後どの様な展開が起こるのか少し、本当に少しだけワクワクしていたら
「何を言う!!貴様等は私のパーティーメンバーを馬鹿にするのか!!」
ビクター王子が普段の姿からは想像も出来ない怒気を見せ貴族の子供達を怒鳴りつけた
すると貴族達は「「「ひっ!」」」と驚き、顔は一瞬で青白く変わる
ビクター王子の怒りは完全に沸点を超えて水蒸気爆発したかのように貴族達に向かう
「おい!マッテオもう1度聞くぞ」
「貴様等は私のパーティーメンバーを馬鹿にするのか?」
幾分声が低くなり、態度も抑えられてはいるが、逆に迫力が出て正直俺でも謝ってしまうだろう
マッテオと呼ばれた者は
「馬鹿にするなど・・」言い淀むと
「馬鹿にするつもりが無いのであれば、イッタイ如何なるつもりだったのだ、答えろマッテオ!」
と被せ気味に言い放つ
「ま・・誠に申し訳御座いません」
「私はマッテオに謝罪を求めているのでは無い、先程の貴様等の発言は如何なるつもりだったのだと聞いているのだ」
「私は馬鹿なのかもしれんな、マッテオ達の発言の意味がわからんのだ、だからその発言の意味を教えてくれと言っているのだ、マッテオわ・か・る・か?」
とマッテオ達を精神的に追い詰めてボコボコにする
エミリーとリナを始めとした女性陣は皆ビクター王子の怒気にビビっている(まぁ大半の男性陣も同じだつたが)
流石にこれ以上は不味いだろ、ビクター王子の対外評価的にも
『王子、あまり意地悪するとクラスメイトはもちろんパーティーメンバーからも本当に嫌われてしまいますよ』
俺は咄嗟にビクター王子を諌める
一瞬コイツ何言ってるんだと言いたげな視線を送って来た王子はすぐに謁見の際に王妃が国王を諌めたやり取りを思い出し、そして声を上げて笑い出した
「そうか、そうか、ラインハルトはてっきり私の友なのだと思っていたが母上だったのだなぁ」
「イヤ?2人の関係性に当てはまれば私の妻か・・?」とビクター王子が俺を逆に揶揄ってきた
突然噴火か爆発かと言う具合に盛大な怒気を撒き散らしていたビクター王子が突如として笑い出し、皆があっけに取られていると少し考える素振りを見せた後、訳の分からない事をラインハルトに向け言っている
何はともあれビクター王子は落ち着いた様だ
ガーゼス先生もホッと息を吐き出していた
正直、ガーゼス先生が真っ先に止めに入るべきだったがビクター王子のあまりの怒気に呆然として何も出来なかった
(この人が担任で大丈夫なのか?)
ただ、マッテオ達はへたり込んで青白い顔のまま震えている
俺はリナとフェリックスに近づき、2人に耳打ちする2人は俺の目を見て頷いてくれた
『ビクター王子、私達が平民と言われ怒って頂いた事は感謝します、私達も不快にはなりましたがもう怒ってはおりません、ですので王子もマッテオ達を追い詰め過ぎてはいけません、この程度の者を王子が徹底的に追い詰めたなどと噂にでもなれば、王子の鼎の軽重が問われかねません』
「ラインハルトは母上や妻になったと思えば、今度は私の宰相か」と笑い
「だがラインハルトの言う通りだろう、私も引き下がる事にするよ」
これで一応収まったが、翌週マッテオ達は副都ジグムントの学園へと転校していった
この一件後しばらくの間、ビクター王子は絶対に怒らせてはいけない危険人物の称号を与えられた
そして俺は陰で〈殿下の宰相〉と呼ばれる事になった
アレから1ヶ月が経ち俺はリブムントへ帰る黒狼を見送る為に王都の城壁に来ていた・・おまけ付きで
ビクター王子をはじめパーティーメンバーが全員参加で着いて来ていた
『皆んな、俺を心配して今まで王都に残っていてくれて本当にありがとう』
「俺等は大した事してないさ」
「ん、実際、ギルドで依頼を受けてただけ」
「たしかにね」
「週に1度も会わない時もありましたね」
ゲーリッツ、アリア、ディアーナ、クライムの順に話してハンスに至ってはただ頷いているだけだった
「ラインハルトが王都で唯一の知り合いだった黒狼のメンバーだね」
黒狼の皆んなの頭の上に?が浮かんで見えた
ビクター王子の発言は一旦脇にどかして
俺はお互いの紹介をする事にした
『紹介するよ彼等がもと俺の王都で唯一知り合いだった黒狼のメンバーでゲーリッツ、ディアーナ、アリア、クライム、ハンスだ』
『そしてコッチが学園の学友でこの先の実習でパーティーを組むビクター王子、ミハエル、エミリー、リナ、フェリックスだ』
すると黒狼のメンバーが「・・おうじ?」綺麗に固まっていた
しばらくすると
お互いのメンバー達で言葉を交わしているが
やはりビクター王子に対しては緊張の色が隠せなかった
20分程話をしていたが出立の時となり
「ラインハルト、元気でな、おまえなら何があっても大丈夫だと思うが無理だけはするなよ」
『解ってる、皆んなも元気でね』
「サブマスやマリーナ様にはラインハルトが学園でパーティーを組んだ事を伝えておくよ」
などと別れの挨拶をして家族への手紙を託した
その後お互いに別れ黒狼はリブムントへ、俺達は寮へ向かって歩いていく
暫く歩くとビクター王子から寮に戻る前にお茶でもと誘われて皆んなで前にも行った喫茶店へ入る
そこには当たり前の様にオスカーさんがいて、出迎えてくれる
(オスカーさんはココに住んでいるのでは?)
前回の個室に案内されすぐにお茶と茶菓子が運ばれる、俺達は何の注文もしていないのだが・・
後で聞かされた事だがこの喫茶店の個室はあの日からビクター王子の貸し切りになっているとの話だった、流石王家はこの程度ならいっさい負担にならないのだろう
「さてと、一息ついた所で皆んなと決めたい事がある」
皆がビクター王子に顔を向ける
「決めたい事とは、このパーティーの名前なんだ」
ん?学園でのパーティーに名前なんているの?と思っていると
ビクター王子が続ける
「学園でのパーティーはほとんどが名前は付けない、しかし過去のSクラスのパーティー必ず付けている」
そう、俺達のクラスはSクラスと呼ばれ、成績上位20名が選ばれ集められたクラスだ(3名転校してしまったが)
「なので私達もパーティーを組んだ以上パーティー名を早めに決めたい、ラインハルト何か案は無いかい?」
おい!なんだそのルビは
口に出してのツッコミは自重して前世の知識を総動員して
『ビクター王子と愉快ななかまた・・』
「はい却下!」
何故かビクター王子では無くエミリーが食い気味に言った
「ラインハルトもう少し真面目に考えて下さい」
俺は何も言わない、言うと更にビクター王子はイジって来るのを俺は理解しているからね
「鉄壁は駄目だよね」
「イヤ、それは流石に・・」
「認められるとしても、今の俺達じゃ恥をかくだけだろ」
リナ、ミハエル、フェリックスが発言する
「ラインハルト、1つ聞いてもいいか?」
『鉄壁の名を継ぐのは俺でも荷が重いよ』
「聞きたいのはパーティーの名前に関してでは無い、ラインハルトのスキルに関してだよ」
「ラインハルトのスキルって攻撃と防御の2つの効果があると考えて良いかい?」
ビクター王子が笑顔で聞いて来た
『あぁ、スキルの名前から想像できるか』
「その反応は肯定と考えるよ」
「だとしたら私達のパーティーはミハエル、私、そしてラインハルトの3人が壁役になれる上にリナはヒーラーだ、3人の壁役がいて、別にヒーラーもいる鉄壁はアレだがかなり硬い守りが可能なパーティーだよね」
「更に私とラインハルトのスキルは特殊系だ、通常より防御力は高いと見るべきだろう」
ビクター王子の予想は多分正しいが何故、今防御力の話をしているのかが分からなかった
リナがポツリと呟く
「・・城壁」
「「「『!!』」」」
皆んながリナに顔を向け、そのまま止まった
・・・
「いい!!、いいよ〈城壁〉!!」
「うん、鉄壁と城壁のどちらが硬いのかは比べられないが、ある意味で私達のパーティーが鉄壁を超えると言う気概も感じる事が出来る」
「さしずめエミリーは城壁に護られながら戦う騎士、俺は魔術士って所か」
「僕も殿下やラインハルト君と並んで、皆んなを守れる様にならないと」
エミリー、ビクター王子、フェリックス、ミハエルもリナの案が気にいった様だ、俺はマティアス、マリーナを想い浮かべ少し照れ臭くもあったが、俺自身2人を追いかけて、いずれは追い越したいと思っていた
『よし、俺達のパーティー名は〈城壁〉に決まりだ!!』
こうして今は〈城壁〉と言うパーティーとして歩み始める
ここまで読んで頂き本当に有難う御座います