60.戦場と防衛施設
夜が明ける、まだ太陽が微かに陽を輝かせる
俺達はリブムントの城門前に集まっていた、メンバーは俺とアーデルハルト、リアムに蓮花の盟、雷神の槌、マイノリティー、黒狼、そしてマリーナとバーネットの27名それに案内役としてアマデウスのベイラーが付いてくる予定だったが場所はある程度分かっている為、この後来る騎士団や魔法団のメンバー達をリブムントの領軍2000と共に先導して貰う事にして俺達は一足先に現場へと向かう
他のメンバー達はと言うと、ウロボロスは俺の領地であるハウザールにて情報収集の為に隣国との国境近くで活動中、夜明けの光もハウザールから2日程の領内にてモンスターの間引きをしていた、蒼炎の弓はゲスタラント領に新しく出来たダンジョン内の調査中であった
3組とも俺からの連絡を受けて一度ハウザールやゲスタラントへと戻り、その後リブムントへと向かってくれる事となったが早くても3日後にはなるだろう
『揃ったね、それじゃあ行こうか』
「ハウザー卿、よろしく頼む」
『了解しました、公爵様』
公爵とその側近達が俺達の見送りの為来てくれていた、俺達は城門を抜けて現場へと向かいその歩を進めた
そして昼前には森を抜け、見張り役を務めてくれていたアマデウスのメンバーや、その後に駆けつけた冒険者達と合流する事が出来たのだった
現場に着くとすぐにアマデウスのリーダーが俺達に挨拶と現状を教えてくれた
「ハウザー辺境伯様、アマデウスのリーダーを務めているモルダーと言います、何度かリブムントの冒険者ギルドで顔は合わせていますが、キチンと挨拶させて貰うのは初めてですね」
『そうですね、確かに顔は見覚えがありますが話すのは初めてでしたね、ラインハルト・ハウザーです、今は冒険者クラン城壁として来ていますのでラインハルトと呼んで頂いて結構です、それよりもまず現状の説明をお願いします』
モルダーは少しホッとした顔で
「助かります、貴族様への接し方なぞほとんど分からないので、では説明と言うよりまずあちらへ、見てもらった方が早いと思います」
モルダーは平野部の方へと向かい、その先に見える山岳部を指差した
その指し示した山岳部の中腹にはっきりと空洞が見えている、そしてそこからモンスターが放射線状に広がりながら此方側へと向かって来ているのか見えた
「我々が気付いたのは昨日の昼過ぎ、ギルドの依頼で回復薬の素材となるララーン草を集める為に来たのですが、森を抜けてふと何気なく見るとあの洞窟とモンスター達がそこから出て来るのを発見したのです、ココにはギルドからの依頼で何度も来ていましたので以前まではあんな洞窟無かったのは間違いありません」
『分かっています、私もこの辺には何度か来た事がありますが、確かにあんなモノは無かった』
「はい、それで15分以上見ていてもモンスターが途切れる事無く出て来るので、スタンピードだと思いベイラーをギルドへと向かわせ、俺達は此処で見張りをしていました、少なくとも既に数百を超える数が向かって来ています」
『他には何か気付いた事はありますか?』
「いや、特にコレと言うのは無いのですが、奴等は何故かある程度広がっているのですが、ハッキリと此方へと向かっているのです、このまま進むとリブムントの街が直線上にあり、まるで街があるのを理解しているかの様に感じます」
なるほど、確かにベルグラットの時もモンスター達はダンジョンから出てほぼ一直線にベルグラットに向かうルートを進んでいた、何かしら意味があるのかもしれないな
普通のモンスターは魔物、魔獣に限らず勝手気ままに動くか、自分達のテリトリー的なものの中から余り動かないのだが?
ゲスタラントの時は発見が早かったからはっきりとはしないが、余り拡散せずにゲスタラント方面に向かっていた様に思える
スタンピードが起きた時の特性なのか?
ただあの山岳部の反対側にはフランドル王国の街がふもとにあるはずなのだが・・
リブムントより近くにあるにも関わらず、其方へは向かわず、此方側へ向かって来るのは何か意味があるのか?
人の気配などを感知しているので有ればフランドル側へ向かいそうなモノだが・・・
分からないモノは今考えても意味は無いか、今やれる事からやるべきだろう
『有難うございます、とりあえずこの辺りに防衛線を作り、アレらをこれ以上先に向かわせない様にしましょう、もし土魔法の系統を使える方がいたら手伝って頂きたい』
俺はモルダーにそう言うとモルダーは他の冒険者達に声をかけにいった
俺の後ろにはマリーナとバーネット、アーデルハルトにリアムが控えていた
『リアムは悪いけど蓮花の盟と共にモンスター達の偵察に向かって貰いたい、戦う必要は無い、どんなモンスターがいるのか確認出来れば良いからね、見た感じ多分だけど魔獣クラスしかいなさそうだから、くれぐれも気をつけて』
「任せとけ、ウロボロスの奴等みたいに相手に気付かれ無い様にとかは無理だが、それは気にしなくても良いんだろ?」
『ああ、ただ余り近づき過ぎて囲まれない様にね』
「分かってる、最悪俺やクララ達なら囲まれても突破して戻れるさ」
『それは分かっているけど、今はなるべく力は温存しておいてくれ、いつまでかかるか分からないからね』
「了解!」
そう言うとリアムは蓮花の盟のメンバーを連れ、山岳部は向けて移動を始めた
『では俺達もやる事をやろうか』
俺の一言にクランメンバーが頷き、それぞれが動き始める
*
[モルダー視点]
俺達がスタンピードを発見してから約1日が過ぎた、昨日の夜中にリブムントのギルドから追加の冒険者達が駆けつけてくれたが、今後の事を考えるだけでも気が重くなる
ここから距離的には大分離れているものの、洞窟からモンスターが途切れる事無く出て来るのは、やはり精神衛生的によろしくは無いのだ
山岳部の様子を監視しながら、焦りばかりが募る中
「モルダー!後方から誰か来ます」
監視の為草原に天幕などで簡単な陣地を作り、その最前線にいた俺にアマデウスのメンバーであるメイリーが知らせに走って来た
メイリーと共に陣の後方へと向かった
確かに森林部から此方に向かって来る気配があった、規則正しく進んで来る音に魔物や魔獣の襲撃では無いと安心しながらも、向かって来る者達を固唾を飲んで待ち構える
体感では長い時間に感じていたが、実際には2〜3分程度だろう、森林の影から黒い揃いのコートを纏った一団が現れた
リブムントの冒険者、いやこの王国の冒険者なら誰でも知っているであろうその黒い揃いのコート
それを見た俺は彼等なら何とかしてくれるのではと安堵感を覚えたのだった、ただ周りから聞こえて来た話し声から彼等の事を知らない冒険者もいた事を知り、逆に驚いたものだ(その程度の情報収集能力でよく今まで冒険者として生き残って来れたモノだと)それ程までに冒険者にとって情報とは大切なのだ
先頭を歩く長い銀髪に整った顔立ち、そして歴戦から来るその集団の気配
俺だけで無く殆どの者がこの者達の姿を見て、俺達は、リブムントは救われるのではないかと感じている事がわかる程に安堵していた
そこからは、本当に一気に時間が進んでいく
彼等〈城壁〉が到着して2時間程が過ぎると俺の目の前には全長3キロを超える壁が聳え立っていた
高さは5m程の壁だ厚さも2m程あり壁の上に立ち攻撃する事も出来る様になっている
今まで彼等の話は色々と流れて来ていたから聞いていた、それにクランメンバーの黒狼さん達から聞いた話もあるが彼〈ラインハルト・ハウザー辺境伯〉の戦う姿を直接見る機会は無かった為、どこか御伽噺を聞く感覚だったがいざ目の前で見るとその能力は桁違いであった
まだ戦闘が始まった訳でも無いのにだ・・・
*
唖然とする冒険者達の姿をみるとやはりこのスキルは出鱈目なチートなんだと思わされる
俺達が到着して2時間後にはある程度の壁を作り終えて、今は壁に登る階段や高さ10m程の櫓を何箇所か設置していた
この後来る騎士団や魔法団、領軍の事も考えて休憩様の建物も必要になるだろう
やらなければいけない事はそれこそ山程あるのだ
バーネットは慣れていないクランメンバー以外の冒険者達に作業の分担を支持してくれている
クランメンバー達はある程度自分達で判断しながらも、要所要所では俺に確認して来る
マリーナやフェリックスなどは完全に自分の判断で動いているのだ、自分が戦うにあたって必要になるであろう施設や防壁の上部に魔法や弓などで攻撃する為の狭間を空けたりしている
もちろんその狭間の高さまで内壁を作る事も忘れていない、内壁に立ち狭間から攻撃する事を想定しているのだ
そうこうしていると夕方になり、騎士団をはじめとした支援部隊が到着した
俺は一度手を止め彼等に挨拶をしに行く
騎士団や魔法団の団長は俺達が作っている施設を見てから
「ハウザー卿は相変わらずですな」
「やっている事の規模がおかしいですね・・」などと言う
『なるべく安全に戦いたいですからね』と俺は笑いながら返す
2人と領軍の司令官は揃って苦笑いしていた
「では我々魔法団もお手伝いさせていただきます」
『助かります、500人の魔法団に手伝って貰えれば王都並みの防衛施設が出来そうですね』
「イヤ、それは無理です」と言いながら軽く引き攣っている
「我ら騎士団も力仕事なら」と言うのでガーラムなどの魔法をほぼ使わない前衛組に指示してもらい木材の切り出しやそれを運んで簡単な丸太小屋などの建物を作ってもらう
流石に建物まで俺が作ろうとしていると話すと
「ハウザー卿は防衛施設をお願いします、休憩用の建物など無くても何とかなりますし、簡単な小屋なら騎士団の者達でも作れますから」
などと言って止められたのだ
領軍からも参加して後方の建物やテントなどの設営をしてくれている、炊事場なども念入りに作っていた
ある程度、長期間の戦闘を想定した上での事だろう
そしてそれは決して無駄にはならなかった、と言うより施設の規模は更に広がる事になる
俺だってまさか年を跨ぐ事になるとは思ってもいなかったのだから・・
読んで頂きありがとうございます
戦闘開始まで行けると思っていましたが・・
モルダー視点などを急遽入れたのもあり届かず、次話から本格的な防衛戦が始まります




