59.新領と再びの悪夢
アローネ、マチルダの2人を妻に迎えて約3ヶ月が過ぎた
アローネは王都の館にマチルダはリブムントで借り受けている屋敷にいるため、俺は王都とリブムントそれから来年より自領となる旧マグナッド領の3カ所を行ったり来たりする生活をしていた
新領へは冒険者のランクがSになった事もあり、アーデルハルトに加え夜明けの光、ウロボロスと共に旧マグナッド領のモンスター調査や間引きをしながら、周辺の街や村の情報収集や生活環境も調べている
そして新たな領都を定めて、まずは防衛施設を俺のスキルを制限無く使って王都と同等かそれ以上の都市へと作り変える予定だ
それに伴い領都の名前をハウザールと変更し名実共にハウザー辺境伯家の領地となった事を内外に示す
そしてアーデルハルト、夜明けの光、ウロボロスはハウザールに冒険者としての拠点を移してもらった、実際には新領に俺が赴任したら辺境伯軍の幹部になるのですぐに冒険者は引退する事になるのだが
俺とウロボロスはある程度の間引きが済むと後はアーデルハルトと夜明けの光に任せ俺は領都の外壁作りに、ウロボロスは情報武官候補と共に諜報部隊の訓練を兼ねた情報収集の任務をお願いしている
因みにクランの情報担当であるヘンリーとヘンリーの実家であるモーガン子爵家から来てもらった元モーガン家の家宰であったバーゲルにもハウザールに拠点を移してもらっている、将来的にはウロボロスが情報武官の実働部隊を統括しヘンリー達は情報官僚として上がって来た情報を精査、編集して俺へと伝えて貰う部門を統括して貰う予定だ
表向きにはヘンリーはハウザー辺境伯家の外務官僚の主席、バーゲルが次席となる
俺は半月程をかけて外周5km程だった新領都を約3倍の17kmまで拡張、防壁は高さ20m、厚さ10mの強固な壁を作っていた、元の防壁も同等のレベルに改修して内壁として活用、門は内壁が東西南北に各1つで計4ヶ所、外壁は西と南は各2ヶ所、北と東は各1ヶ所で計6ヶ所とした
北と東の門が少ないのは他国から侵攻された際に攻められやすい方向の守りを固め易くする為である
領都の北西から南東に向かって大規模な河川がありそれを領都の外堀として取り込み容易に街を包囲出来ない様にも工夫してある、更に河川の一部を領都内にも取り入れて、万が一の際にも水の確保が出来る様にしていた
将来的には領城も王都に負けない物を作る予定ではあったがマティアスやマリーナから「ラインハルトの代は大丈夫だと思うが将来的に王族達に要らぬ疑いを持たれかねない」と言われ城は堅固な作りにはするが大々的な改修は避ける事となった
そんなふうに領都を改修しながらも転移魔法陣を使い王都とリブムントに移動して夜を過ごす日々を送っていた
その急報が来たのは10月の終わり頃の事だった
その日、俺は王都でアローネとの時間を過ごしていたのだが深夜に黒狼のリーダーであるゲーリッツからマルチチャットを通じてリブムント領の西南西にある森を抜けた山岳部に出来た洞窟からスタンピードと思われる魔獣の群れが出現したと連絡を受けたのだ
俺はすぐにクランメンバー全員に連絡
その中で即応出来るメンバーにリブムントへの転移を頼むとアローネにも状況を話し、装備を整えるとそのままリブムントへと転移する為に王宮へと向かう
夜中の12時を過ぎていたが、リブムントからの情報は王宮にも届いていて王宮を警護していた門番兵は俺を見るなり王宮の開門を指示、俺は軽く礼をして転移魔法陣がある部屋へと向かって行く
魔法陣がある部屋の前に着くと、そこにはビクターが警護の兵を率いて待っていた
「ラインハルトある程度の準備は明日の朝までに済ませてリブムントへと送る、ラインハルト達は向こうで詳しい説明を聞いておいて欲しい、その後は朝まで仮眠をしておいてくれ、その後はどうなるか解らないから必ず少しでも仮眠を取る様にね」
『分かった』
「それと翌朝に物資と共に騎士団と魔法団から500づつ送るから使ってくれ」
『ビクターは来るのか?』
「私は王宮内に対策本部を設置してその責任者として詰める事になった、各領からの援軍や情報をまとめて必要な対策をする、少しきな臭い動きもあるみたいだ、その辺も含めて今回は王宮から動けないんだ」
『きな臭い?まぁそっちは任せた、現場は俺に任せてくれ』
「頼んだよラインハルト」
『ああ、任せとけ』
そうやり取りをして俺は魔法陣にて転移した
〈少し時を戻したリブムント〉
た、大変だー
夕方、リブムントの冒険者ギルドにCランク〈アマデウス〉のメンバーの1人が飛び込んで来た
周りの冒険者達は何事かと飛び込んで来た男に視線を向ける
その男はギルドに飛び込んで来るなり受付のカウンターに向かって行く、そして受付嬢に
「ギ、ギルドマスターを呼んでくれ!スタンピードだ!!、フランドル国境の山岳部に洞窟が出来ていた、そこから大量のモンスターがコッチに向かって来ているんだ、早く、早くギルドマスターを」
話を聞いていた受付嬢の1人がすぐにギルドマスターの部屋へと連絡しに走った
そしてギルドマスターが受付へと降りて来ると〈アマデウス〉のメンバーであるベイラーがギルドマスターに自分達が見た事を早口で伝える
もちろんギルド内にいた他の冒険者達も一緒になってその話に耳を傾けていた
その内容は
・リブムント西南西のフランドル国境となっている山岳部に今までなかった洞窟が開いている事
・そこから大量のモンスターが排出されている事
・距離が離れていたのでモンスターの種類は特定出来ていないが距離が離れているにも関わらずかなりの数と大きさがある事から魔物では無く魔獣では無いかとの予想
・フランドル方面には向かわずリブムント方面に向かって来ている事
・アマデウスの他のメンバーは森林部と山岳部の間にある小さな平野部にて発見しそのまま監視として残った事
その内容にギルドにいた冒険者はもちろんギルドマスターやギルド職員達も絶句して顔色が変わっていた
ベイラーが言っている場所はDランク以上の冒険者達しか行く事が許されていない場所であり、尚且つ山岳部はCランク以上、出来ればBランク以上のメンバー込みが推奨されているのだ
行けるメンバーが限られている上に、リブムントでは東南部にある森の方が良い素材が取れる魔物や魔獣が多い為、冒険者からも不人気な所だったのだ
そう言う意味ではたまたまアマデウスのメンバー達がいた事で早期発見出来たのは幸いだった
アマデウスのメンバーはその山岳部に自生する回復薬の材料採取をギルドからの依頼で受けた為発見する事となったのだ
ギルドマスターはすぐに王都のギルドへ連絡させると共にギルドマスターの部屋に幹部職の者達を集め、今後の対策、方針を決める会議を始める
会議を始める前には黒狼達を呼びに行ってもらい、更にはギルドにいた冒険者達の中からCランク以上の10名程に監視しているアマデウスの他のメンバー達への食糧などの支援物資と監視役の増員として向かってもらった、もちろんアマデウスのベイラーが道案内を兼ねて同行してもらう
約20分後、黒狼のメンバーが拠点として借りていた元マティアス家族の家からギルドへと到着と共にギルドマスターの部屋にてその内容の説明を受ける
現在ではこのリブムント領で最高ランクの冒険者はラインハルトであるが常にいる訳では無い、リブムントにほぼいる冒険者の中で黒狼は最高ランクのパーティーだ、現在でもBランクだが、回復役のアーリングが加わってからはAランク目前と言われる程の活躍をみせていたのだ
しかもラインハルト率いる冒険者クラン〈城壁〉のメンバーだ、〈城壁〉のメンバー達が俺のスキルで離れていても互いに連絡を取り合う事が出来るのはそれなりに知られていた事もあり黒狼達を呼べば俺にも情報が入る事を見越しているのだろう、リブムントのギルドマスターが黒狼を呼び出した事は当然の流れだ
黒狼のメンバー達が参加した対策会議には途中からリブムント公爵や公爵領軍の幹部達も加わる事となり、急遽リブムント領城内へと会議の場を移して行われた
会議は2時間以上におよび、途中で軽食などが公爵家の家臣達から差し入れられたがそれに手をつける者は皆無だった
始めのうちは領軍とリブムントの冒険者達が中心となってスタンピードへの対応をする流れだったが公爵様と黒狼達の意見によってクラン〈城壁〉に正式な依頼を出し、中心として対応して貰う事が決まる
領軍や他の冒険者達は城壁メンバーのサポートに回る事も合わせて決まった
最大の理由としては、この国のどの軍や冒険者よりも俺や城壁のメンバーはこの手の事に置いて場数を踏んでいる事が大きい
その上で命令系統を一本化しておく方が余計な事に煩わされる事無く、俺が動きやすいだろうと言う公爵様の配慮である
持つべきモノは理解ある王族の知り合いだ
そして深夜になり俺を含めた城壁のメンバーかリブムントへと集まって来た
俺達はリブムント領城内の会議室にて、今回の対応策を聞き、正式に依頼として受ける事を決めた
こうして今年2度目となるスタンピードの鎮圧へと向かう事となった
のちにこのスタンピードは[10月の悪夢]と呼ばれ、その解決の中心にいた俺達〈城壁〉は正に王国の城壁として王国中に名を馳せる事となるのだった
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