46.王国と内乱 #1
マチルダとの話し合いから彼女の両親への挨拶、更に俺の両親への挨拶、マチルダとアローネとの会談など1週間があっという間に過ぎて行った
その後マチルダはベルグラットのサロンを知り合いに譲ってリブムントへと引っ越しをして来ていた、荷物などは俺のアイテムボックスへとしまってのお手軽な引っ越し作業はその日のうちに終了する
引っ越した先は元俺の実家だった所だ、マティアスが王都へと行くに当たって、実家が空き家になる事を聞いたマチルダが両親に頼み引っ越したのだ、マチルダの両親も一緒に来ている
そしてその事はアローネとも話し合って決めた事である、アローネは羨ましそうにしていたが
マティアスは王都に新しい家を構えると、すぐに諜報機関を掌握してマグナッド侯爵家とソーンダーク伯爵家の領地へと複数の部隊を送り込み情報収集に当たらせる
更に両家に近い場所に諜報機関の拠点を作り新たに転移魔法陣と通信機を設置していく、新たに作った拠点の数は10ヶ所を超える
それ以外にも意図的に王都からの情報を流したり、逆に何でもない情報を封鎖するなどして相手側への撹乱を仕掛けていた
そして物資に関しては王都に集中して集め貴族達に渡る事をハッキリと妨害していた、特に王国でも有数の穀倉地帯を持つエミリーの実家マイヤー子爵には協力を要請して秋の収穫後、転移魔法陣にて収穫した麦や芋などの大半を一度王都へと運んでもらう、もちろん王宮が買取り必要な時にはマイヤードへと必要分は与える事となっていた
貴族側にも穀倉地帯を領地に持つ者はいるが、それだけで賄える程では無く、特にソーンダーク家の領地は鉱山による収入がメインで食料に関しては近隣からの輸入に頼らざる得ない為にかなりの打撃を受けていた
此方は魔法陣を使って幾らでも食料を運べるが貴族側では馬車での輸送に頼っている以上、買取り価格でも高く付く、それがかなり距離のある輸送になれば尚更だった
ソーンダーク家はすぐにマグナッド侯爵家を頼るがマグナッドにもそれ程余裕がある訳では無い、貴族側ではこの冬を越す為の食料集めに奔走させられる羽目になっていた
王国の北部に領地を持つ者が多い貴族側ではかなり厳しい状況になっている、一般の平民達もその状況が分かると、農民以外の手に職を持つ者達は貴族側の領地から王族側の領地へと移って行くようになる
俺はその期間をマイヤー子爵からの依頼でマイヤードにて過ごしていた
マイヤー子爵からの依頼は周辺の貴族側の者達から領地を荒らされない様に警戒する事だった
自領に無いならある所から奪ってしまおうと考える馬鹿共から自領を守る為だ
俺はアーデルハルトと蒼炎、そしてこの手の依頼には欠かせないウロボロスと実家でもあるエミリーがいる雷神の槌を率いてマイヤードへと移動した
俺はマイヤードへと着くと子爵への挨拶を済ませて、すぐに周辺の拠点を要塞化して、更に穀倉地帯を守る壁を作っていく
強化した拠点には子爵の領軍に入ってもらい、俺達はビクターやマティアスと連絡を取りつつ、周辺の領主達の情報を集めていた
因みに、マイヤー子爵は来年には伯爵への陞爵が決まっている
ベルガー家も伯爵から侯爵へと陞爵する事がすでに決まっていた
もちろん陞爵は貴族達との争いが終わってからの予定だ、取り潰される予定の貴族達の領地を再分配する計画は粗方出来ている、取らぬ狸の何とやらにしない為にも、出来る事やるべき事は手を抜かない
俺達は警戒がてらマイヤード周辺のモンスター達を狩っている、マイヤード東部は大きな森とそこに流れる河川によって他国との国境になっている、その周辺には多くのモンスターが集まっているのだが、国境に近いと言う理由で領軍は相当な事が無い限り出張らない
その辺りの事もマイヤー子爵からは頼まれていたのだった、結構魔獣も出るので経験値稼ぎには持ってこいの場所である
そして11月になると馬鹿共が動き出した、盗賊に扮装した者達がマイヤード周辺に現れて食料品を強奪するつもりなのだろうが、此方の準備は完了していて俺達や領軍の餌食となっていく
11月中旬までに計250名以上の者を捕らえていた、もちろんその者達は王都へと送られて諜報機関からの容赦無い取り調べを受ける事となった
そしていくつかの貴族家が関わっている証拠を手に入れると12月1日に王宮からその貴族家の取り潰しが発表される、その貴族家は
・ザクラブ伯爵家
・エイマー子爵家
・バルミュット子爵家
・グリマー男爵家
以上の4家だ
特にザクラブ家は貴族側の中心人物でもある
エイマー、バルミュット、グリマーの3家に対しては、即騎士団、魔法団を含めた王国軍が派遣される事が決る、近隣に作られた拠点へと魔法陣で転移して1週間後には名実共に取り潰された
この作戦には俺やアーデルハルトも参加していた、俺は王国貴族家の当主として、アーデルハルトは後継がまだいない俺の次期当主候補としてそれぞれ参加していた
俺はエイマー子爵家の領城の前に高さ30メートルの塔を建てその上から城内を狙撃して、アーデルハルトは騎士団と共に城内へと突入していた
エイマー子爵領は3日で落ちると次はバルミュット子爵領で同じ様に攻める、エイマー領で慣れた王国軍は2日でバルミュット領城の制圧を完了して、最後のグリマー領へと向かうとそこでも2日で制圧した
各領地、全体の制圧は軍に任せている
エイマー子爵とグリマー男爵は捕まり、バルミュット子爵は自死を選んだ、その家族達も捕まり王都へと送られて年明けには裁かれる事となる
残されたザクラブ領では他の領と違い領城が川を堀として取り込んである上に堅固な作りを生かして籠城に運命を託して籠る
伯爵家と言う事もあり領軍も3000人以上いる、年内での陥落は難しい状況だ、ザクラブ伯爵は更にそれ程距離の離れていないマグナッド侯爵家とソーンダーク伯爵家へ救援の要請をしていた
しかし冬場であり王国北部は豪雪地帯も含まれている為に2、3ヶ月は救援が来る事は無いだろう、ヤツ等には転移魔法陣は無いのだから
しかしその考えは覆される事となる、ソーンダーク家から1500名、そしてマグナッド家からは2500名を超える領軍が派遣されるとの情報が王都に入る
王国軍の兵士達は4500名程だ、俺が両家の援軍が来るまでに防御設備を作れば耐えられるだろうが・・
本当に両家の援軍はたどり着く事が出来るのかな?
両家の援軍はそれぞれの領地の境にある砦まで移動して足を止める
王国軍が本格的にザクラブ領を攻める構えを取っていない事もあり、それに領外へと軍を進めれば王国への叛意は確定してしまう事も併せて、すぐに動く気配は無いとの事だった
ただし、此方としてもすぐザクラブ家を取り潰す事は出来ない状況になり、互いに動けない状態のまま年末を迎える事となった、王国軍は一度王都へと帰還して年明けに再度出兵する方針が決る
ただ、すでに取り潰された3家の領地には一部の軍兵が残されている
*
[マグナッド侯爵視点]
「忌々しい王族達め、誰のおかげで今まで安泰でいられたと思っているのだ!」
「侯爵様、ここに至っては王族達は我々の事を許すつもりは無いのでしょう、ならば年明け早々に此方から近隣の領へと出兵して戦火を広げる事こそ、最も王族達が嫌がる事になりましょう」
「確かにな、ソーンダーク伯爵の言う通りだろう、ならばザクラブ伯爵にもその旨を連絡して、我々正統なる貴族の戦いを見せてやるしかないな」
「そうです!、我等こそ本当の貴族だ!、我等が動けばそれに追随する者達も現れるでしょう、今こそ正統貴族の力を世に示す時です!」
当主2人の話しを聞いているその側近達の反応は2つに分かれていた
自分達の当主が栄達して上手くやれば王国を支配出来るかも知らない、そうなれば自分も貴族へとなれるのでは無いかと夢想する者、そして
現実が見えない当主にあいそをつかせる者の2つだった、当主本人達は周りを見ていなかった為気づいていないのは不幸な事なのか、それとも幸いな事だったのか
こうして年明けには、王国史に残る最大の内戦が始まろうとしていた
ビクターやラインハルトの予想より少し早いタイミングではあったが・・
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