44.叙爵と結婚
アローネ様との食事会から5日後、俺はマチルダさんを迎えにベルグラットに移動して彼女のサロンへと向かう
サロンに着くとマチルダさんは仕事道具を揃えて待っていた
「よかったら今日の髪型をセットさせてくれませんか?」
唐突に聞かれて、思わず
『お任せします』と答えていた
今回は後ろの髪を編み込んでからラフな感じに纏めていた、マチルダさんも同じ髪型であつた
服装は白のシンプルなワンピース、俺が黒メインの色なのでそこは対照的になっていた
『ては、王都へと向かいましょう』
彼女と共にベルグラットの城から転移して、王都に着くと当たり前だけどそこは王宮内の魔法研究所である
そこから王宮の門を抜けてレストランへと歩いて向かう、初めは馬車を用意してもらっていたが、マチルダさんが初めての王都なので歩いてみたいと言うので歩きでの移動となった
予約の時間までは余裕があるので色々と店を見て周りながらレストランへとたどり着いた
きっとオスカーさんが迎えてくれるのだろうと予測してレストランへと入ると
「いらっしゃいませ」
優しげな笑みを浮かべた女性が出迎えてくれる
あれ?
予想を外したか?
個室へと案内され席に着くと、食前酒としてベリー系の果汁をスパークリングワインで割った物が提供された
一応探索魔法で周りを調べたが
周りの個室にも誰もいない様子だ
そうしていると、料理が運ばれてくる
前菜は春野菜のグリルに生ハムを添えた物が提供せれる、シンプルな料理だけに素材の良さが際立つ
「おいし〜!、凄いシンプルだけど野菜の味がよくわかって美味しいですね」
『本当に美味しいですね、野菜事に火の入れ加減を変えているのがポイントですかね』
「ふふっ、やっぱりラインハルトさんは料理に詳しいのですね」
そう言った後に呟く様に「私も料理勉強しなきゃ」と言っていた、アローネ様にも言われたが少し気をつけよう
食事をすすめて行くと
「ラインハルトさんはやはり料理が上手な女性の方が良いですよね?」と聞いてくるので
『それほど気にはしていませんよ』
「本当ですか?、色々と詳しそうなので気になってしまいました」
どうしても、こう言う場所へとくる時は料理が気になり、それに集中してしまう前世からの悪い癖だな
前世でのほとんどは食事に行くのも仕事の内と仕事仲間などを連れて行く事が多かった為、自然と話す内容もその料理の調理法や味付けや使われている食材の事が多い
本当に気をつけよう
その時、ふと店内に違和感を感じた
レオンか?いや、レニだ!
この部屋の上にレニがいる、俺はすぐレニへ
『そんな所にいて、何かあったかい?』
そう、マルチチャットで話しかけた
いきなり話しかけられたレニは
「ははっ、バレちゃった?」と返してきた
「ビクターか?』
「・・うん」
『分かった』
そう言うと気配が消えた
マチルダさんが不思議そうに此方を見ている
『すいません、急に仲間から連絡が入ってしまいまして』と俺のスキルの説明をして誤魔化す
「凄い便利なスキルですね〜、それがあればいつでもお話しが出来るなんて、羨ましいです・・お仲間の方が」
あ〜これはこれでやってしまったか
『でも、凄いMPを使うので便利では有りますがいつでも使える訳では無いんですよ』
「そうなんですね、それでも繋がっていられるのはやっぱり羨ましいな」
枠は熟練度が上がって少し余裕はあるが・・まぁ良いか
『ならばマチルダさんも登録しておきますね』
そう言うと
「本当ですか!ありがとうございます♪〜」
彼女の言葉の最後に音符が浮かんでいるのが見えるのではと思うほど喜んでいる
そうして王都での食事を終え、ベルグラットへと送って行くと
「今日もありがとうございました、また良かったら誘って下さい」
『分かりました、また誘わせてもらいます』
そう言ってわかれた
余り恋愛経験は多い方では無いが、マチルダさんが俺に好意を持ってくれている事は流石に分かる
俺自身はどう思っているのかが実はよく分かっていないのだ、少なくとも良い印象しか無いのは確かだけど、それがイコール好きとなるのかは分からない
どうした物か?
数日が過ぎて、俺はビクターとの話し合いへと王宮に来た、今回はアーデルハルトも連れて来ている
「やあラインハルト、アーデルハルトは久しぶりだね」
「はっ!ビクター殿下、お久しぶりで御座います」
「畏まらなくて良いよ、普通にして」
『そんな事の前に、うちのクランのメンバーをくだらない事に使うのはやめて欲しいな』
「ラインハルトの恋愛、結婚に関しては決して下らない事では無いよ、むしろ今の王族にとっての最大の関心事だよ」
「ラインハルトはどう思っているかは知らないが、君は実質的に私の側近中の側近だ、周りもそう見ているし、こんなに頻繁に会う事もそう見られる要因の一つだが、姉上との事も周りから見ればすでに話しはまとまっているとみえるだろう」
『・・そうなのか?』
「そりゃそうだよ、王女殿下である姉上が王宮の外で男と2人で食事をするなんて事が普通にあると思うかい?」
『・・・』
「実際にあの時、レストラン奥の個室では国王と王妃、そしてラインハルトの両親が婚約に向けて話し合いをしている、ラインハルトならこの意味は分かるよね」
「別にマチルダさんの事をどうこう言う訳じゃ無いけど、正妻には姉上を迎える事になるだろうね、その上でマチルダさんを側室に迎える事には問題無いよ」
『決まり・・か?』
「今更逃げられると思うかい?」
『流石に無理だよな』
「姉上は嫌いかい?」
『そんな事は無いよ、ただ俺の中でこの辺の事は全てはっきりとしないんだよね』
「そんなの、形になって仕舞えばどうにかなる物だよ、少なくとも嫌っていないなら大丈夫さ」
『ビクターは簡単に言うが、俺に取っては大問題なんだよなぁ〜』
ビクターは笑ってしまう、逆にアーデルハルトは余りの話に付いてこれていなかった
「えっ?兄さんが王女殿下と婚約?、別に側室?」
「まあその辺の話しはもう少し置いておこう、ただ姉上はもうすぐ21になる、国王や王妃は一刻も早く話しを纏めたいとは思っているよ」
『そうか』
「で、本題だが、貴族達は前回の王都での騒ぎを失敗した事で後が無くなったと考えている様子だ、きっと近いうちに何かしらのアクションが有るだろう」
『それで?、何をすれば良い』
「相変わらず、ラインハルトは話しが早くて助かるね」
「来週中にラインハルトはAランクへと昇格する、その上で王宮からも王都での騒ぎを未然に防いだ事に対する褒賞が送られる事になっている、出来ればその席で王家への忠誠を示して貰いたい」
『貴族達に対する揺さぶりか?』
「そう、貴族達の退路を完全に断つ」
『解った』
「兄さん達は今のやり取りで分かるの?」
『大体な』
アーデルハルトが感心した顔で俺とビクターを見ている
その後、予定通りに俺はAランクの冒険者へと昇格した、それと共に王宮から使者が来て先の王都での事で俺に報償を出す事が告げられた
史上最速、最年少でのAランク昇格に華を添えた形だ、否応無く世間の話題となった
そしてそれは貴族達へも伝わっている
ヤツ等はどう思っているのだろう
そして王宮では今回の事を民衆を集めて大々的に発表した
・ならず者達が王都で騒ぎを計画していた事
・そしてそれを俺達〈城壁〉のメンバーが未然に防いだ事
・その中で今後も有用な火災に対する備えを開発した事
・それ等を王国へと貸し出す事
・捕えた犯人達の後ろには王国貴族がついていた事
・その貴族達の名前も大方判明した事
これらの情報が併せて発表されると、王都の民衆達からは大きな歓声が上がった
そしてその場で、6月末に俺達への謁見と褒賞が送られる事も告げられる
さて、何が起こるのだろうか
6月末
俺達城壁のメンバーは王宮での謁見の為、大広間へと入って行く
大広間には両脇に貴族達が呼ばれて並んでいた
俺を先頭に黒いコートで衣装を揃えたメンバーが続くと貴族達の中で騒めきが起こる
俺達が所定の場所に着き国王へと片膝を地面に着けて礼をとると宰相が言葉をかける
「面を上げよ」
そして国王が続ける
「冒険者クラン〈城壁〉のメンバー達よ此度の件、誠に大義である、その方等の活躍により王都の民は守られた、この事王都の人間を代表して感謝する」
「「「はっ!有り難き幸せ」」」
「更に、火災への備える為の品々も王国へと貸し出してくれた件も併せて感謝する」
「その活躍と貢献に対して〈城壁〉へ王国第二勲章を授与する、それとは別に褒賞も用意した、受け取って貰いたい」
「「「はっ!」」」
「更にラインハルト・ミューラーには法衣貴族として伯爵に叙する、ただ役職などは無いので今後も冒険者としての活動も許可する」
『はっ!有り難き幸せ、我等は王国の為この身をかけて尽しす事を御約束させて頂きます』
「うむ、頼んだぞ」
『ははっ!』
参列している貴族達の騒めきは大きくなり、一部の貴族にははっきりと渋面がうかぶ
そして国王はここで本日最大の爆弾を投下する
「そしてもう一つ発表がある」
「ラインハルト・ミューラーに我が娘であるアローネを嫁として与える事とする」
【はぁ〜?】
貴族達の騒めきが爆発する
宰相すら驚いている
「陛下!それは・・」
「宰相よ言うな!すでに決めた事、アローネ本人にも確認を取っている、喜んでおったぞラインハルト」
『は、はっ、有り難き幸せ』
俺は冷や汗をかきながら答えると、国王は悪い笑みを浮かべていた
【ハメやがった】こんな所で言われては断る事など出来る訳が無い
まぁ良いの・・か?
ある程度の覚悟はしていたしな、ただマチルダさんへはどう伝えるのかが問題だ
「式は年内中に挙げよ、良いかなラインハルト?」
『はっ、喜んで!』
「そうか、我が娘を頼むな」
『畏まりました』
そうして俺の伯爵への叙爵とアローネ様との結婚が決まった
一部貴族達はハッキリと俺を睨みつけていた、ヤツ等がどう動き、何を起こすのか問題は山積みである
ただ1番の問題への対応だけは自信が無かった
読んで頂きありがとうございます




