43.王都での陰謀 #2
さて、相手側の話しをある程度聞いてから俺は王宮へと向かう、ビクターの執務室に案内されると、アローネ様がまたいるのであった
「ラインハルトさん、いつになったらわたくしと食事に行ってくださるのでしょうか?」
『いや〜、今はやらねばならぬ事が多くてですね〜』
「分かりました、ではこの件が終わったら必ず食事に連れて行って下さいね、約束ですよ!」
そう言い残して、満足そうな顔をして執務室を出て行った
「すまないなラインハルト、ただ姉上はラインハルトに会いたかっただけなのだ、流石に今の現状を解っていて我儘を言う程馬鹿ではない、ラインハルトに会う口実が食事の約束だけしか無かったから言っただけだ」
「思った以上に姉上はラインハルトを気に入っているらしいな、良かったら今後はここに来た後に短い時間でもいいので姉上にも会ってやってくれないか?、もちろん私も同行するから」
『ん〜それは少し考えさせてくれ、ところで軽く話したが相手側が動くぞ、期日は来月末で騒ぎを起こす為に何か特殊な物を用意しようとしている様だ』
「特殊な物?」
『ああ、ヤツ等はアレとしか言わなかったが、中々手に入らない物の様だった』
「ふむ?、火災を発生させる事を考えて火薬や油の類いでは無いのか?」
『それは俺も考えたが、ヤツ等のバックには貴族が付いている事を考えれば、その程度の物が手に入らない訳が無いだろう、特殊な魔導具なんかではないかと思うのだが』
「なるほどな、あのマグナッド侯爵家が後ろに居て、その程度の物を入手出来ないと言うのは考えられないね、魔導具か、此方でも少し考えてみるよ、闇マーケットにも少し探りを入れてみよう、何かが分かるかもしれないしね」
『期日まで後一月強、一応火災への対応は用意しているが起こさせないのがベストだ、今まで以上に連絡は密に取ろう』
「わかった」
そうして俺は執務室を後にする、アローネ様の事は一旦置いておこう
あ〜マチルダさんとの約束もあるんだった、それも棚上げだな
今はこの件に集中して被害を出さない様にしないとな
それから10日程過ぎて、ビクターから王宮へと呼び出しがあった、俺とマリーナに来て欲しいとの事
俺とマリーナがビクターの執務室へと行くと、今回は国王がビクターと共にいる
「呼び出して済まないな、ただ例のアレと思われる物に当たりをつけたから、情報を共有しておこうと思ってな」
『分かったのか?』
「国王の直轄部隊である諜報機関の話しだが、今闇マーケットである物を探している者達がいるとの情報が入った」
「それがな、〈隷属の首輪〉と言う物でそれを相手につけると首輪の持ち主に強制的に隷属させられると言う、まあ名前通りの物だ」
『それが今回の件と、どう繋がっているんだ?』
ビクターが国王をチラッと見ると、国王が話す
「どうやらヤツ等は我々王族かマリーナ殿をその隷属の首輪で捕らえようとしているらしいのだ」
『はい?、王族は解りますが何故母さんを?』
「ヤツ等の後ろにいる者達はマリーナ殿の持つ研究所の情報を王家に変わって一手に握って支配する事を考えているらしい、とは言えマリーナ殿は王国で最高の魔術士だ、マリーナ殿を捕らえられなかった時には王族を捕らえて人質として、その王族との交換でマリーナ殿の身柄を抑えるつもりらしい」
『つまり、ヤツ等の本当の目的は王都での騒ぎに乗じて魔法研究所の成果を掠め取ることにあると言う事ですか?』
「そう言う事だ」
『えっ?ヤツ等は本当に馬鹿なの?』
『だって、母さんは時空魔法で別の空間に王族と共に隠れてしまえば、追いかける事すら出来ないじゃないですか』
「まあ、そうだな」
「ラインハルトしょうがないんだよ、その程度のヤツ等だからこそ領地経営すらまともに出来ないのだからね」
『は〜、それならもう此方が待ち構える意味自体無いな、母さんの手を借りて一網打尽にしてしまおう」
その後作戦を立てて実行まで俺達は密かに行動する、その後4日間に渡って俺達は姿を隠した
4日後深夜
例の民家にヤツ等が集まった、ゲルト達闇ギルドのメンバーも来ている
俺達が見張っている間で見た人間は全員来ていた
その瞬間、俺達は部屋の4面の壁全てからそれぞれのパーティーが突入して中のヤツ等を捕らえていく
先頭で飛び出したのはガーラム達だ、ガーラム達は大きな盾でゲルトを囲むと四方からシールドバッシュで押し込める、ただでさえデカいガーラム達に2メートル近くのタワーシールドで抑え込まれてはゲルトが如何に達人であっても身動きが取れない
その他にも俺やレオン、レニ、マクシミリアンなどが襲いかかり捕えていった、蒼炎達は民家の出入り口の外で待ち構え敵の逃走を妨害する
5分もしないで全員を取り押さえる事が出来た
なんて事は無い、始めからこうしていれば良かったよ
俺達は4日前の朝にこの民家へと侵入して、マリーナが壁4面に空間魔法で隠し部屋を作ってもらいそこに入って待っていたのだ、外の見張り場所には蒼炎が詰めていた
そして集まったヤツ等を取り押さえる
実に簡単なお仕事だった、しかしガーラム達が盾を使うのを初めて見たな、流石に室内ではバスターソードは振り回せないからな
捕えたヤツ等はすぐに気絶させて自死を防ぎ王宮へと搬送する、手足の拘束は念入りにしてあった
後の事は王宮に任せてある、予定より一月以上早く俺達の依頼は終わりを告げた
俺は報告の為、ビクターの執務室へと行く
「流石はラインハルトだね」
『仲間達のおかげだよ、それに結局1番大切な情報を掴んで来たのは諜報機関だったしね』
「それでも、そのメンバーを集めたラインハルトの功績は大きいよ、今回の指名依頼でラインハルトの名声も高くなるだろう、Aランクへの昇格も推薦する事が決まったよ」
『そうか、まあ被害自体が無かった事が1番だよ、ところでヤツ等はどうするのさ』
「諜報機関がヤツ等の持っている情報を洗いざらい話させるか、もしくは無理矢理奪う事になるだろうね、どんな手を使ってもね」
『エゲツないな、自業自得だがな』
「それよりもラインハルトは姉上との約束は忘れて無いだろうね」
『あ〜、もちろん忘れてなんか無いよ』
「そうか!、なら行こうか!」と言うとビクターは俺をアローネ様の所まで引っ張っていく
「あら、ラインハルトさん今回はお手柄だったわね」
『ありがとうございます、アローネ様』
「それで、こちらへ来てくれたと言う事は」
『はい、約束の食事会の予定を立てたいと思いまして』
「なるほど、嬉しいわね覚えていてくれて」
こうして5日後に王都のレストランで食事をする事に決まった、レストランの予約はオスカーさんがしてくれるとの事だった
アローネ様の執務室を出てから、俺は更にオスカーさんにお願いして別のレストランの予約も出来るか聞いてみたら、大丈夫との事でそのレストランはオスカーさんが良い所を見繕ってくれる事となった
翌日、俺はベルグラットへと転移してマチルダさんの所へと顔を出した
そして10日後に王都で食事する事が決まる
それ等の事とは別にもう一つ大事な要件があった
弟のアーデルハルトが卒業して冒険者としてクラン〈城壁〉に加わったのだ
アーデルハルトはすでにDランクになっているがソロで活動している、レベルは19
学園時代のパーティーメンバーは皆騎士団や魔法団へと進路を決めていたらしくソロでの活動となっていた
しばらくは俺とのコンビを組む事も視野に入れながらアーデルハルトはランク上げに勤しんでいる
因みにアーデルハルトは学園のダンジョンをソロで制覇した最初の人物だった、もちろん騎士団からの勧誘は凄かったらしいが俺の助けとなる為に冒険者への道を選択した、本当に出来た弟だった
それと、ビクターから今後の事で話がしたいとの連絡も貰っているが話し合いは2週間後となっている
今日はアローネ様との約束の日だ
俺がアローネ様を迎えに王宮へと行くと
「あら今日は髪型をセットしていないのですね」
『あれは、残念ながら自分では出来ないので』
「そうですか、ならばわたくしのメイドに髪結が得意な者がいますので、その者にやらせましょう」
そう言うと俺の返事は聞かずにメイドさんを呼ぶ、そして俺はそれに従うしか無かった
メイドさんが俺の髪型をセットしてくれて出発となる、レストランへは馬車で向かう、御付きはアローネ様の執事とメイドが2人、そして馬車の周りには護衛官が8名付いていた
流石は王国の王女殿下、実際はこれでもかなり人数を絞った様だ
レストランに着くとその周囲にはすでに30人程の騎士団警備されていた
レストラン自体が貸し切りになっているらしい、どれだけお金をかけたのか、俺は頭が痛くなる
レストランの中に入るとオスカーさんが迎えてくれた
うん、予想はしてたよ・・
貸し切りの為、個室では無く、レストランのど真ん中に席が作られていた
そして、個室には5名程の反応がある、間違い無くビクター達だ
俺とアローネ様が席へと着くとすぐにオスカーさんがワインを持って現れる
今回はスパークリングでは無く普通の白ワインだ
どうやらアローネ様はこの白ワインが好きな様だった、グラスを合わせ乾杯をすると料理が運ばれてくる
「本日は御二人の為にこのレストランの料理長が特別なコースを用意しました、御ゆっくりお楽しみ下さい」
そうオスカーさんが言いその場を離れる
「ラインハルトさん、頂きましょう」
そう言って2人で食べ始めた
ヤバっ!うまっ!俺は軽く驚いた、前世で食べた料理に負けてない
『これは非常に美味しいですね』
「そうね、特にこの野菜にかかったソースは王宮の料理人でも出せない味だわ」
そう、このソースは酸味と塩味のバランスが良く、野菜本来の甘さを引き立てくれていた
俺がソースだけの味をみていると
「貴方は料理人みたいな味のみかたをするのね?」
『いや、このソースの味が余りにも美味しくて、何で作られたのかを考えてしまいました』
と俺が笑う
「ラインハルトの奥さんになる人は大変ね、一々そんな風にチェックされたら手も抜けないわね」
とアローネ様が笑う
『そうですかね、気をつけます』
そんな会話をしながら食事は続く
「ところで、奥の個室に父や母、ビクターだけで無く、マティアス殿とマリーナ殿も来ているみたいよ」
『え?父さんと母さんも?』
「あら?知らなかった?」
『はい、個室に5名程の人がいる事は分かりましたが、ビクターはいると予想出来ましたが、国王や王妃様に父さん母さんは予想外でした』
「まったくね、せっかくの2人での食事なのに先回りして来るなんてね、無粋だわ」
『アローネ様への心配などもあるのでしょう、それにしても王都に来たがらない父さんがよく来ましたね』
「あっちはあっちで今後の貴族達の事でも話しているのでしょう、他の事も話し合っているかも知れませんが・・」
『他の事?』
アローネ様は少し恥ずかしそうに頬を染めて
「内緒です」と笑う
そうして食事は終わり俺とアローネ様は王宮へと戻って行く
一方奥の個室では国王とマティアス達の間で何事かを話し合っていたらしい・・
貴族達の事もこのままでは済まないだろう
国王やビクターは次の一手をいかに打つのか、そこも考えて置かなければならないよね
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