42.王都での陰謀 #1
怪しい動きのあった場所を見回る事2日、明らかに王都市民では無い格好をした人間が数名、ある民家へと入って行く
俺は必要以上に近づく事をせずにウロボロスのメンバーをマルチチャットで呼ぶ
ウロボロスのレオンとレニは存在の隠蔽を得意としていて、半径2メートル以内の仲間達にもその効果がかかる
レオンとレニの2手に分かれて民家の表と裏を見張る事にした
それとは別に土魔法を使えるメンバーで民家の下へと続く地下道を作る作業もしている
家の中にはおよそ6人の人がいて、何かについて話しているのは解るが、声を抑えている為内容までは聞き取れなかった
いっその事、俺とマイノリティーのメンバーで襲撃して取り押さえる事も考えたが、失敗した時のリスクが高いと判断してやめていた
しばらく見張っていると中から人が出て来た、レオンにその人物の後を付けてもらう様に指示してレニ達はそのまま民家を見張る
そして20分程するとレオンから複数の人間が付けていた人物と合流して此方へと向かっているとの連絡が入る
さて、どうするか?
一旦引き上げる事も考えてるが、レニ達と俺は少し場所を離れて別の場所から見張りを続ける事にした
そしてレオンから連絡があった人物達が民家へと向かって来るのが確認出来る距離になると、先頭の案内役の後ろに顔に大きな傷跡がある男がいる、歩いているだけだが、かなりの実力があるのが伺える
傷の男とその連れは黒のマントを羽織り全員が腰に剣を下げていた
「ラインハルト、あいつ等かなり出来るね」
フィンが俺へと言う
『ああ、歩く姿だけで相当な剣の使い手である事が解る、厄介だな』
かなり後方にレオンがいた、レオンも最大限に警戒している事がわかる
マクシミリアンやガーラム達を呼ぶか?
俺は決めかねていたが、レオンの更に後方にガーラムの姿があった、俺がマルチチャットでガーラムに話しかけると
「あら?、ラインハルトちゃんもアイツ等を見張っているのね、ワタシは今、運命的なモノを感じるわ〜」
『・・そういうのは要らないから、所でどうしてガーラムがアイツ等を付けていたんだ』
「ラインハルトちゃんなら分かると思うけど、アイツ等からヤバイ雰囲気がビンビン出てるのよね、それで遠巻きに付けて来たのよ」
俺はガーラムの話を聞いてすぐにマクシミリアン達を呼ぶ事にした、戦力は多いに越した事はない
それと共にビクターへと連絡をする
ビクターへ此方の状況を話し、この後の行動を協議した、結果今回はこちらからは仕掛けず様子を見るだけに留める
民家での話し合いは朝方まで続き日が登り始める前に解散していった、ウロボロスには2手に分かれて先にいたメンバーと後から来たヤバイヤツ等の後を付けてもらう
後者の方にはマクシミリアンとガーラム達がついて行く、あれだけの面子ならもし万が一戦いになっても何とかなるだろう
俺は一足先に現場を離れ、王宮へと向かう
王宮ではすぐにビクターの執務室へと通された
「ラインハルトお疲れ様、所で顔に傷があったと言う男はこの中にいるか?」
そう言うとビクターは何枚かの似顔絵を見せて来た
その似顔絵を見て
『コイツだ、傷は剣では無く、火災や火魔法によってついた感じだった』
「なるほどね、コイツはある貴族が雇っている裏社会でも有名な剣士だ、一時期は傭兵部隊に所属して近隣諸国で派手に暴れていたらしい、名前はゲルト・ハウゼン」
「そして、ラインハルトにも少しは関係があるヤツだ」
『俺と関係がある?』
「まあそう言っても、直接関係がある訳では無いが、ラインハルトの祖先、たしか曾祖父に当たる人物が貴族から平民へと降爵したのは知っているだろう?」
『ああ、以前聞いた事がある』
「このハウゼン家も同じ件で降爵され、平民にされた家なんだ、その後は裏社会へと進み闇ギルドの幹部へと成り上がっていた様だ」
『へ〜、あんまり興味は無いな、正直今更、曾祖父さんの頃の話しをされてもな』
「ラインハルトのそう言う所は良いと思うよ、ただゲルトは違う様で王家がハウゼン家を助けなかった事を恨んでいるらしい」
『?、そもそもの発端は貴族同士の利権争いだか権力争いだかだろ?、王家は関係無いんじゃないの?』
「そうだね、だけど彼は王家が守ってくれていれば、今でも自分は貴族だったはずだと思っているらしいよ」
『そんなに貴族がいいかね?、俺には分からんよ』
「ラインハルトは良くも悪くも身分に囚われないからね、将来的にはラインハルトは貴族になる可能性の方が高いのだよ?」
『ビクター殿下次第で御座いますよ、ただ俺は自分のやりたい事をやる為に力と知識を蓄えてはいるが、その結果、貴族になると言われても嬉しく無いんだよね、やりたい事さえ達成出来るならそれ以外はどうでも良いよ』
「ふふっ、ラインハルトらしいね」
お互い笑ってしまう
そうこう話していると、レオンからゲルト達を見失ったと報告がきた、察知された訳では無いと思うが相手の警戒が強く余り近づく事が出来なかった為に巻かれたらしい
そりゃ警戒ぐらいはしてるよな
俺は問題ないと、帰還する様に言う
その後20日程であの民家の下まで地下道が出来たと報告が入る
集まりは週に一度はあるが曜日は不定期だった
相手の警戒はもちろん
それ以上に計画をいつ実行に移すつもりなのかが今後の焦点となる
ビクターとも頻繁にやり取りをして情報の共有を図る、それと同時に蒼炎には市民街のあちこちに、万が一の為の貯水場を作って貰っている
貯水場は民家の中や倉庫などの中に俺がスキルで貯水槽を作り水を貯めておく、その場所の確保を蒼炎達に任せていた
すでに20ヶ所を超える貯水場が作られていて、いざ火災があった際にはその貯めた水を使って消火する予定だ
それとは別にこの依頼が来た時からマリーナ達の研究所で放水用の魔導具が作れないか、研究してもらってもいて何とか形にはなったと報告を貰っている、更に防煙マスクの研究も進めている、其方も何とかなりそうであった
放水用の魔導具は魔物や魔獣の腸と金属を繊維化して編んだ物を組み合わせてホース状にして、魔石を動力にした魔導具だった
そして防煙マスクは単純に煙を吸わない様にする事のみに特化させ、マリーナの空間魔法で空気中の酸素だけを通す様にしたフィルターを作ってもらい、それを組み合わせてマスクを作ってもらった
目の部分は透明度の高い水晶を薄く削って作ったゴーグルも付いているので視界は何とかなった
かなりの部分で俺の前世からのアイデアが入っているが有れば便利な事は疑い無いので、そこはリミットを掛けずにどんどんアイデアを出していった
更に防火服も王都とリブムント、ジグムント、ベルグラット、マイヤード、ゲスタラントの工房にお願いして作ってもらっている
もちろん安心安定のリナの親父さんの工房には中心となって動いてもらう、特に金属を繊維化する技術は過去の俺からの無茶振りで王国一の技術を持っているのでそこで作った金属繊維を各地に届けて防火耐火仕様の服を製作してもらっている
もちろん王家や王族から協力の為の連絡もして貰っているので、最優先で作製してくれていた
現物が揃うとそれを使って消火訓練をする
消火訓練には一部王都の軍からも人を出してもらった、特に力自慢の面子を集めてくれる様に話していたので、それはもう凄いマッチョな方々が集まった
市民街の建物は基本的に木材と石材の組み合わせで建てられていて、石材のみで建てられている王宮とは違い燃えやすい
その為火災が起きた際には、まずその家を取り壊す事を視野に動いてもらう、その際に中に人がいない事を確認する上でマスクと防火服が役に立つ
もちろん魔導具が届く距離なら放水で消す事も出来るが、いかんせんホースの長さには限界がある
魔導具も研究する時間がそれほど無い中で形にしてもらった為、現状では貯水槽が近くに無いと役に立たない、今後の研究課題だ
その為に貯水槽が近くに無い場合を考えて動く必要がある、それが建物を壊す作業とその訓練だ
作業者は防火服とマスク、金属製の大きなハンマーを身につけて練習用に俺が簡単な小屋を作って中で可燃物を燃やした所へと突入して人の有無を確認後、取り壊しにかかる
俺のスキルで作っている為、中々壊す事が出来ないが、これに慣れれば市民街の建物などすぐに壊せるだろう、もちろん俺が作った物もかなり手を抜いてつくったよ、本気で作ったら訓練にならないからね
そちらは軍関係の方々に任せて、俺達はあの民家を見張る
そろそろ集まる頃合いだろう
民家の床下には俺達が作った空間があり、それをマリーナの空間魔法で補強してもらい、別の見張り場所と合わせて常に人が詰めていた
床下の空間には盗聴用の魔導具が用意され、それで室内の会話を盗聴する事が出来る様にした、王宮がからむと色々と貸し出して貰えて助かるね
こうして着々と此方の準備は整って行く、相手側はどの様に動くのか、相手の動きが分からない以上、此方は我慢の時を過ごさなければならない
レオンとレニからほぼ同時に俺へと連絡が来る
どうやら、ヤツ等に動きがあった様だ
地下道を通り床下へと着くとレニが魔導具で部屋の中の会話を聞いていた
俺も魔導具を使い聞き始めると
「用意は万端に整っているのか?」
「まだ、アレが手に入っていない様だ」
「そうか、アレが無ければこの計画は成り立たない、何としても手に入れる様に伝えておけ!」
「分かりました」
「ところで、最近冒険者達が王宮に雇われて動いていると言っていたが、どうなのだ」
「冒険者達が動いているのは間違いないですね、市民街を中心に我々の動きを掴もうとしている様です」
「そうか、ココはバレてはいないだろうな」
「大丈夫だと思いますが、念の為に別の場所を確保しますか?」
「どうしたものかな?、下手に動き過ぎればそれによって察知される事にもなりかねんが・・」
「我々とは別の人物を使って場所を確保させますか」
「そうだな、そうしておいてくれ」
「決行は来月末で変更ありませんね?」
「ああ、日取りは変えない、その為の部隊も近々王都周辺に集まって来る予定だ」
「かしこまりました、ではアレを手に入れる為にもヤツ等のケツを引っ叩いて置きます」
「くれぐれも相手に気付かれるなよ」
「解っております」
アレってなんだ?火災を起こすと言う事が有っているのであれば、火薬か?、それとも油の類いだろうか?
この世界でも前世とは違うが火薬は存在している
前世と違うのはこの世界の火薬は火の魔石を粉にした物を使用する点だった、木や炭の粉と火の魔石を粉にした物を混ぜて使用するのだ
でもその程度なら用意するのに困るはずが無い、何せあちらには貴族がバックにいるのだ、それでも用意出来ないアレとは何なのだろう
俺はこの話をビクターと協議する為この場をレニに任せて王宮へと向かう事にした
レニには何か有力な情報があったら後で伝えてくれと言っておいた
さて、来月末か・・忙しくなりそうだ
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