41.食事と噂
王宮からの依頼まで後1週間と迫っていたが、今俺はベルグラットに来ていた
マチルダさんと食事を共にする為である
「ラインハルトさん、お待たせしました」
約束の時間よりは早く着いてしまい、ベルグラットの街並みを眺めていたら、彼女も15分前には到着した
『マチルダさん、今日はお店の予約まで任せてしまいすいません』
「気にしないで下さい、元々私から誘った事なので」
2人で並んで歩いていると、遠くにガーラムが壁の影から覗いている
何してるんだか
10分ほど歩くと目的の店にたどり着いた
ここはベルグラットで1番と言われるレストランで、個室も用意されている
店に入ると
「いらっしゃいませ、ラインハルト様、マチルダ様」
はぁ?俺の前にはオスカーさんがいるのだ
「此方へどうぞ」
何故かオスカーさんが案内してくれる
個室へと案内されると、マチルダさんが不思議そうな顔をしていた
『何かありましたか?』
「いえ、私が予約した時には個室は埋まっていて取れないと言われていたもので」
多分、ガーラムからミハエル達に話しがいき、それをビクターへと流したからだろうなと思いつつ
『急遽キャンセルが出たとかですかね』とオスカーさんをチラッと見ると、若干申し訳なさそうにしていた
一応オスカーさんに
『彼女が予約した際は個室は埋まっているとの事でしたが、本当にここで大丈夫ですか?」
「はい、問題御座いません、予約のキャンセルがありまして此方を御用意させて頂きました」
マチルダさんは「ラッキーですね」と喜んでいるのでいいのだろう
料理はアラカルトで注文する
『マチルダさんはお酒を飲まれますか?』
「少しだけですが、飲みたいと思います」
と話しをしていると
「此方は店からのサービスで御座います」
オスカーさんがスパークリングワインのボトルと共にグラスを持って現れる
「えっ?いいんですか?」驚いた彼女が聞くと
「はい、ラインハルト様はベルグラットの恩人、この程度で申し訳御座いませんが、楽しんで頂けると幸いです」
『ありがとうございます、喜んで頂かせてもらいます』
絶対にビクターかミハエルからのボトルだろう、話題を提供する代わりとして飲んでも構わないだろう
いくつかの料理が届くとスパークリングで乾杯する
『流石にベルグラット1番のレストランですね、お酒も料理も一流です』
「そうですね、って言っても私では美味しいと言う事ぐらいしかわかりませんが、ラインハルトさんは料理やワインなども詳しいのですね」
ラインハルトとしての人生では、正直たいして高い物は食べていないのだが、俺の前世が実は飲食関係だったので酒や料理がどの程度の物かぐらいは解っていたのだ
『いや、それほどでは無いですよ、ただ運良く殿下と友人になり、ご馳走される事があっただけですので』
「そうですよね、ラインハルトさんは殿下だけでなく、ベルガー家のミハエル様ともご友人ですものね」
なんとなく誤魔化しながら次々と来る料理を楽しむ
そしてマチルダさんに気づかれ無い様に探索魔法を使い、周りを調べると隣の個室に7人の反応がある
ビクターと雷神の槌のメンバーか?
俺は一度お手洗いへ行くと席を立ち、隣の個室を伺うとほとんど全員が俺達の個室の壁際に集まっている
ビンゴ!まず間違いないと踏み込むと、そこにはビクター、ミハエル、フェリックス、エミリー、リナ、ガーラムとなんとベルガー伯爵が壁に耳を当て俺達の個室の様子を聞いている状態だった
この人達は何がしたいのか(笑)
俺が突然入ってきて、みんなは固まっていた
『皆様は何をしてらっしゃるのでしょうか?』
笑顔の俺が声をかけると
「や、やあラインハルトじゃないか!、ラインハルトもここに来ていたのかい?、いやー偶然だね」
『ビクター殿下、その格好で何言っても無駄じゃないですかね?』
そもそもここは有名店の個室で隣の声が聞こえる様な作りでは無いのだ、当たり前の様に防音には気を使っているので聞こえるはずも無い
実際に俺が席を立っても聞こえていないからこんな状態なんだしね
「ははっ、すまないラインハルト、ミハエルから君が女性とデートをすると聞いてね、興味に勝てず来てしまったよ」
『やっぱりね、本当に何してるんだかな、それにしても、まさかベルガー伯爵までいるとは思いませんでしたよ』
「いや、その、なんだ・・済まなかった」
「まあ、細かい事は良いじゃ無いラインハルトちゃん、マチルダちゃんと楽しんでる?、それと早く部屋に戻りなさいよ、あんまり女性を待たせたらダメよ〜」
『まぁ良いか、ビクタースパークリングのボトルありがとう、あれ高いヤツだろ?』
「お!解るかい?、王宮にあった物を無理言って持ち込ませてもらった一品だ」
『は〜、本当に何してるんだかなぁ〜』
そう言って俺は自分達の個室へと戻る
『お待たせしてすみません』
「大丈夫ですよ、それにしても本当に美味しいですね」
『そうですね、食材はもちろん調理の技術も非常に高いですね』
「ラインハルトさんとここに来れて良かったです」
最高の笑顔で彼女は言う
そして何故かオスカーさんも良い笑顔をしている
『僕もマチルダさんと来れて良かったですよ』
しばらく食事を楽しみながら会話も弾み、気がつけばデザートまで食べ終わり、良い時間となっていた
『そろそろ出ますか?』
「そうですね・・」
マチルダさんの顔が少し曇る
『どうかしましたか?』
「何でもないです・・」
・・・
『今後しばらくの間、依頼で王都にいるので、宜しかったら今度は王都で食事でも如何ですか?』
「はい!是非!お誘いお待ちしています!!」
曇っていた顔に笑顔が戻る、今の俺よりは年上なのだが、素直な良い子だね
オスカーさんにお会計を頼むと、既に用意してあった、流石ですオスカーさん
俺が会計をすると、申し訳無さそうに
「私がお誘いしてお店も決めたのにすいません」
『気にしないで下さい、マチルダさんには楽しい時間を頂きましたから』
彼女は赤面しながら
「ありがとうございます、それとご馳走様でした」
俺達2人は店を後にした、そしてマチルダさんの店兼自宅前まで送って別れる
『では、次は王都で』
「はい、楽しみにしてます、ただ私が王都まで行くのに時間がかかるので早めに連絡して下さい」
『大丈夫ですよ転移魔法陣を使えば、王都でも一瞬です、その時は迎えに来ますから』
「は、はいお待ちしています」
そうして別れると
近くの壁の影からオスカーさんが現れ
「申し訳御座いませんがビクター殿下が聞きたい事があるとの事で・・」
この後、俺はみんなから質問攻めにあう事となる
ビクターなどは「姉上に何と言うかな?」などと言っている
マチルダさんを紹介したガーラムは楽しそうに俺達のやり取りを聞いていたのだった
そして2月に入って俺は王都へと向かう
黒狼達はこのリブムントと蒼炎の抜けたゲスタラントを魔法陣で行き来しながら守ってもらう
その黒狼達に新しいメンバーが加わっていた
名前はアーリング・バーダット
身体190センチオーバーの前世では吸血鬼と呼ばれそうな怖い見た目だが実は優しい心根の21歳だ、レベルは24と中々のレベルだ
ブルグムント王国の北にある国の出身で回復魔法とサポート魔法の使い手だが、身体能力にも特筆すべき物を持っている
黒狼に入るきっかけは俺と知り合った事で、バハール共和国との戦争中に1人で旅をしながら、戦争で傷つく街や村の人々の助けになろうとブルグムント王国へと来ていたらしい
だが実際に来てみるとバハールの軍は国境沿いの壁に阻まれて、此方側には来ていなかったので国境沿いまで様子を見に来た所で俺と出会う
アーリングが俺に話しかけて、バハール軍との争いの情報を欲しがっていた所からお互いの状況を話し黒狼へと加入する事となった
黒狼にとっても最高の人材で即決で参加が決まる
これで黒狼自体のバランスも良くなり、アリアの怪我への心配も解消される事だろう
そのアリアは俺が王都へ行く際に
「ラインハルト、お土産待ってる」
アリアはアリアだった
さて、王都に集まった俺達は市民街に用意された屋敷に集まって今後の役回りを決めると、それぞれが動き出す
まず俺は王宮へと向かい到着の挨拶をする
ビクターの執務室へと案内されたのだが、そこには何故かアローネ様もいる
やな予感がプンプンするぞ・・
「あら!ラインハルト殿ではありませんか、何やら聞いた話しでは良い人が出来たとか?、出来ればその辺のお話をお聞きしたいですね」
ビクター!お前だろ、ってかお前しか居ない!
ビクターは書類と向き合っている
その後、根掘り葉掘り色々と聞かれた後でアローネ様との食事会が決定していた
俺にはYesの答えしか無いのだ・・
前世ではとてもじゃ無いが、モテる事など無かったので嬉しい反面、どうすれば良いのか悩む事になった
とは言え、今は依頼の事だけを考えて、解決出来ない問題は先送りにする
最初の10日程は俺やウロボロスは昼夜問わずに怪しい所や噂などが無いか、情報を集めて回る
そう言えばウロボロスのメンバーであるフィンが今回から復帰していた
ベルグラットでの怪我から、約半年ぶりの復帰にウロボロスの他のメンバー達も喜んでいた
半年間のリハビリを兼ねた訓練を王都の騎士団でしながら足の動きは完全では無いが技術的にはかなりの成長を果たしていた
そのウロボロスが1つの噂話を仕入れて来た
曰く、王都の市民街の北部で最近あまり見ない人達が集まっては朝方まで話し合っているとの噂である
余りに簡単に入って来た情報に胡散臭い感じもするが、確かめない事には結論は出ない
俺とウロボロスのメンバーで今夜から噂の辺りを調べる事にしたのだった
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