40.祝賀会と依頼
接客室での会話が続いていたが国王家の祝賀会へ準備があるからと一旦退出していった
最後の方は会話の内容を覚えていなかった
『はぁ〜、ビクターの時より対応に困る話しだったな』
独り言のつもりがオスカーさんが
「アローネ様の事でしたら、それほど気にする必要は無いと思いますよ」
『あぁ、口に出てましたか』
「ラインハルト様は容姿が優れておりますからな、アローネ様も恥ずかしがっておられましたが、ラインハルト様の御考え次第で御座いますよ」
『正直な話、ビクターの宰相候補と言う言葉も気が重いんですよね』
「ビクター殿下はラインハルト様と早く一緒に仕事が出来る事を望んでおられますからな、その辺の事は今すぐと言った話では無いので、落ち着いた時にでも考えて置いてくださいませ」
オスカーさんは落ち着いた笑みを浮かべ頭を軽く下げる
そして祝賀会の時間となり会場へとオスカーさんに案内してもらう
会場へと着いたが中へは案内されず会場脇にある待合室の様な所で待たされた
「申し訳御座いませんが少々此方でお待ち下さい」
『何かあるのですか?』
「ビクター殿下より、本日お見えになる皆様へラインハルト様を紹介したいとの事で、入場のタイミングを見ているのです」
『はぁ?』
毎年の祝賀会では1番最後に王族達が入って来て、祝賀会が始まるらしいが、今回は俺が最後に案内されるらしい
少し待っていると
「ラインハルト様、大変お待たせ致しました、此方へどうぞ」
俺がオスカーさんの後ろからついて行くと会場の扉が開かれビクターが
「本日は特別なゲストに来てもらった、私の友であり、王国最年少でBランクの冒険者となり、先のバハール共和国との戦争でも国境線沿いに壁や要塞を作るだけならず、戦闘においても数多の敵兵を倒した、新たな王国の英雄ラインハルト・ミューラーだ」
大袈裟過ぎる紹介に気恥ずかしさを感じながら会場へと入って行くと、多くの方々に拍手で迎えられた
真っ直ぐビクターの下へと進み、ビクターや王族達と簡単な挨拶をする
「ラインハルト何か一言もらえるかい?」
『殿下の言葉では断れないでしょう』
ビクターと共に笑う
そして
『皆さま初めまして、今ビクター殿下から大袈裟な御紹介を頂き、赤面のいたりですがラインハルト・ミューラーと申します、よろしくお見知り置きください』
簡単に挨拶すると国王が
「このラインハルトは王国最高の魔術士である元〈鉄壁〉のマリーナ殿とリブムントの冒険者ギルドのギルドマスターであるマティアス殿の子供である、ラインハルト自身もすでにBランクの冒険者でビクターの無二の友でもある、将来的にはビクターの右腕として働いてもらいたいと考えている者だ、皆もそのつもりでいて欲しい」
なぁっ?
ここでそんな事言うか〜?
俺は苦笑いを堪えながら笑顔を作る
ビクターは堪えきれず笑っているよ
会が進むと色々な大人達から声をかけられる、それを纏めると
・結婚相手は決まっているのか?
・いないなら私の娘と会ってみないか?
・将来は王宮で働くのか?
・バハールでは殿下の宰相と呼ばれているらしいね
・私の娘をもらうつもりは無いか?
・私の孫娘はどうだ?
こんな感じに名前と役職や爵位が付いてくる、数が多すぎて覚えきれないよ
それにしてもほとんどが結婚に関する事だったな、国王の発言の中にアローネ様との話が無かった事が唯一の救いかな
大人達が終わると今度はその子供達から囲まれ、彼女はいるのか?、殿下との関係、バハール共和国との戦争の事、私の家系は多産である事アピール、料理や家事が得意アピール、尽くすタイプアピール、等々の事を言われ大人達と同じ様に名前などが続く
だから覚えられないって
しばらくするとダンスに誘われる様になる、多少は覚えたがそこまで得意な方では無いのだが・・
何度か踊るとアローネ様が近づいてきて
「私とも一曲踊って頂けるかしら?」と手を差し出す
『余り上手く無いのですが、それでも宜しければ喜んで』
俺はアローネ様の手を取りフロアの中央へと進み向き合うと音をとりながら踊り出した
「上手ですよ」王女は踊りながら囁く
踊り終わると軽く頭を下げ
『アローネ様、ありがとうございました』
「此方こそ、楽しかったわ、また機会があったら踊ってね、ただし次は貴方から誘ってくれると嬉しいわね」
『かしこまりました、次の機会があれば必ず』
「約束ですよ」
アローネ様は笑顔で王族の席へと戻る
そのまま祝賀会は終わりへと向かうと、王族は参加者達へと挨拶して周り退出して行く
それと合わせた様に参加者達も退出している
俺も退出しようとすると、オスカーさんが声をかけて来た
「申し訳御座いませんがビクター殿下が少しお時間を頂きたいとの事です」
『分かりました』
俺が答えると、ビクターの下へと案内してくれる、案内された先はビクターの私室だった
「ラインハルトお疲れ様、悪かったね色々と」
『実際大変だったよ、色々とね』
「今回参加している者達は、王族側の人間だ、ここでラインハルトを大々的にお披露目する事で先々への布石としたくてね」
『王族も大変なんだな、それにしてもこんな時間に私室に来て良いのか?、エカテリーナ様もいるんだろ?』
「エカテリーナは別に私室があるから気にしなくていいよ、流石にエカテリーナがいたらここには呼ばないよ」
『それもそうか、ところで話があるんだろ』
「ああ、この先の事をすり合わせしときたかったんだ」
『この先か』
「うん、この先の貴族達との事さ、どうやらヤツ等は此方の動きがお気に召さないらしい、先のバハール戦でも地方貴族達には声を掛けずにいたからね」
『貴族達は戦いたがっていたのか?』
「勝戦だったからね、勝戦ならそれなりの褒美も与えられるし、何よりも貴族としての歴史と誇りを示すチャンスである事は確かだからね」
『貴族は貴族で色々あるんだな、その事で貴族達から突き上げがあるのか?」
「そんなにハッキリと言って来るならやりやすいんだけどね、ハッキリ言って来るのはこちら側の面子だけさ、ヤツ等は裏でしか動かないんだよ」
「その動きの中でいくつか気になる動きがあるんだ、どうやら王族の力を弱める為に王都で騒ぎを起こすつもりらしい、それとは別に他国と連絡を取るヤツ等もいるらしい」
『はぁ?王都で騒ぎ?、他国と連絡?』
「そうだね、王都のいくつかの場所で火災を起こして、それを合図に王宮への侵入も計画しているようだ」
「他国と連絡を取っている連中は自領をそのままに他国へと鞍替えを狙っているらしいよ」
『らしいよって、大事じゃ無いか!、って本当にそんな事可能なのか?』
「多分無理だろうね、そんな事をすれば間違いなくその領には我々が討伐軍を出すし、それを受け入れた国に対しても戦争を起こす大義名分に使うだけだしね」
「王都での騒ぎの方は、これが中々難しい対応になりそうなんだ、火災を起こす場所は市民街だと言う事は分かっているのだが、市民街と一口に言ってもそれなりの広さがあるからね、しかも実際に火災を起こされたらその対応もしなければならないし、かと言って王宮の警護はしなきゃならない」
『様はどっち付かずの状態を作り、その隙に王宮へと入るつもりって事か』
「そうだろうね、そこで〈城壁〉のメンバーに市民街の警護をお願いしたいんだ、昼から騒動を起こす事は無いだろうから、主に夜の見回りなどをね」
『なるほど、それは依頼か?、それともただの要請か?』
「ラインハルト達が了承してくれれば、ギルドへと指名依頼を出すつもりだよ」
『分かった、全員参加となるかは分からんが、それなりの人数は揃える様にするよ』
「助かる」
『構わないさ、それに王族からの指名依頼だ、クランとしての箔もつくしな』
「よろしく頼むよ」
それで話しは終わって、俺はリブムントへと帰還の為に転移する
1週間後、俺達の城壁へと指名依頼が届く
俺は他のパーティーにも既に話しは通していたので、即座に了承する
依頼の期間は2月から4月の終わりまでで、場合によっては延長の可能性もある、内容は夜間の王都での見回りと火災が起きた時の為の備えを用意する事、そして不審者がいた際の取り締まりだ
王宮からはその期間限定で警備部隊としての権限を委譲されている
参加メンバーは
ラインハルト
夜明けの光
ウロボロス
マイノリティー
蒼炎
以上のメンバーに決まった
雷神の槌が参加しなかったのはベルグラットの人員が足りなくなる事を考えて
蓮花の盟が参加しないのはジグムントへあのベンが戻って来て騒いでいるらしく、その動きを見定める為だった、それに付いてもジグムント公爵家から蓮花の盟へと指名依頼が来ていた
昼間は蒼炎のメンバーが周囲を見回り、夜間は他のパーティーメンバーで見回る事となった
昼間の見回りは依頼には無いが一応の為にする事にしている
俺達はそれと解る様に大々的に動く
それをみて貴族達はどうするのか
本当に動くのか
動くとして、何処でどの様に火災を起こすのか
油断はしないし、なるべくなら被害も出さないようにしないとな
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