32.壁と弾丸 #3
前線の砦〈マクシミリアン視点〉
ラインハルト達がダンジョンへ向かって3日間が経った、戦力はかなり減少したが進出して来るモンスターの数も減ってきている事で、何とか防衛出来ていた
ラインハルトの作ってくれた壁にも助けられている
実際に壁が無ければここまで戦っては来れなかっただろう
しかし突然状況が変わった、4日目になりワイバーンをはじめとした飛行可能なモンスターが砦を襲ってきた
初めの方は冒険者や兵士の弓矢と魔法で対抗する事が出来ていたが、飛行するモンスターに気を取られ過ぎると、今度は地上のモンスターに攻め込まれると言う悪循環に落ち入るのに、そんなに時間はかからなかった
何より飛行して来るモンスターには壁の有利が使えない、上空からワイバーンのブレスなどで被害が一気に拡大していた
刻一刻と状況が悪化している中で、遂に僕らやウロボロスからも負傷者が出てしまった
ウロボロスのリーダーの1人レニがワイバーンのブレスから他の冒険者を助ける為に飛び出し、ブレス自体は回避出来たものの、近くに来ていたフライアントの吐き出した酸を顔に浴びてしまったのだ
また、同じウロボロスのフィンも酸の攻撃で負傷したレニを助けに動いた時にキメラバードという2つの鷲の頭と梟の身体を持つ魔物に奇襲され、2つの口から吐き出された炎の球を脇腹と足にくらってしまった
そしてうちのメンバーのヘンリーもCランクの魔獣、ウインドスネークの放つ風の斬撃からアンナを守り、代わりに自分の左腕を斬り飛ばされてしまった
3人共、命に関わる程では無かったが少なくともヘンリーが冒険者を続ける事は難しいだろう、今3人はベルグラットに馬車で戻っている、現状前線のこの砦ではまともな治療が出来ない為だ
夜になりモンスターの襲撃が落ち着いて来ると、ベルグラットのギルドマスターと領軍の指揮官と僕の3人で今後の方針を話し合うが
「流石に被害が大き過ぎる、ここは前線を下げるしか無いだろう」
「今、前線を下げればモンスターの被害は周りの街や村に広がってしまう、何としてもココで持ち堪えるべきではないか?」
ギルマスと軍の指揮官の意見は並行線を辿っている
ラインハルト達がダンジョンのボスを倒して戻ってくる事を信じて待つしか無いのが現状で、僕はそれが無性に悔しかった
*
俺達は舞台を整え、今から真竜を倒す作戦にかかる
ダンジョンへ入るとここ数日にはなかった違和感を感じる、明らかにモンスターの数が減っているのだ
俺達が倒していたから減るのは解るのだが、減り過ぎている、そんな事を考えていると
「まずい事になったかも知れないわね」
「ああ、明らかにモンスターが減ってるね」
マリーナとバーネットも気づいていた
『減った分のモンスターが砦に向かっているって事?』
「多分ね」
「ワイバーンや飛行系のモンスターがほとんどいないならね、ヤツはイヤな事を考えるね」
まずい、明らかにまずい
俺達やマリーナ、バーネットに加え、地元冒険者の主力まで此方に来てしまっている以上、砦側の戦力に不安がある
俺が砦へ戻るべきか考えていると
「アタシ達が今から戻ってもヤツを放置していたら、いつまで経っても現状は変わらないよ、アンタがしなきゃいけない事は、一刻も早くヤツを倒して砦へと戻る事だ」
・・・
『そうだね、それしか無いね』
俺達は動き出した
まず、マイノリティーが右側を
そして蓮花の盟が左側を壁に隠れながら進む
俺達城壁とマリーナは間を空けて中央から進んで行く
当然、前を行く2つのパーティーへとモンスターは攻め寄せる、この作戦の都合上2つのパーティーには潰れ役をして貰わなければならなかった
モンスター達が左右に分かれて集まっている内に、俺達は手薄になった中央を駆け抜けて行く
真竜まで後100メートルといった所まで来ると、此処からはあらかじめ作っていた壁はもう無い
それでも俺達は強硬突破をはかる、俺が先頭を走りそのすぐ後にエミリーとフェリックスとリナが走り、ミハエルとマリーナは1番後に付く形で進む
真竜がブレスを放とうと口を開けると
即座に俺が壁をエミリーとリナが壁の補強を作って、フェリックスが壁の裏に氷のドームを作る
近づいた分だけブレスの威力は上がっていると予想してこの形になった
真竜のブレスは俺の強化した壁を半分程破壊したが、氷のドームには届いていなかった
マリーナの攻撃範囲まで後30メートル程だ
俺達〈城壁〉も今回の作戦ではマリーナを真竜の元へ届ける為の壁でしか無い、この30メートル進む事だけに全てをかける
しかし相手もそう甘くは無い
真竜が翼を広げて空中に舞い上がるとそこからブレスを放つ
俺は壁をぎりぎりまで傾けて、更に若干左側へと角度をつけた、その壁にフェリックスが氷の壁を被せる様に作る、更にリナは魔法障壁を壁の後ろに張った
紙一重の差でブレスは左側へとそれ、その辺りにいたモンスターを消しとばしていた
そして俺は残りのMPのほとんどを込めて壁の陰からバレットを撃った、威力5倍、大きさも3倍にした土属性の散弾だ
真竜の翼に俺のバレットの散弾が当たり、翼の付け根辺りに複数の穴を開けた、それによって翼が付け根から折れる様に千切れ落ちる
片翼になり真竜は地上に落ちると、すぐそばにマリーナとミハエルが待ち構えている
俺達はMPポーションを飲みながら、壁の陰から見守る、3本のポーションでMPが半分程回復した俺は相手が隙をみせたら攻撃出来る用意だけはしている
ミハエルの盾にはマリーナの時空魔法で一撃だけならどんな攻撃でもダメージを別の物や相手に反射出来る〈マジックミラー〉と言う魔法がかけてある
無茶苦茶な性能だがその分発動までの時間がかかり、今のマリーナでも3分程かかる為ダンジョンに入る直前にかけておいた
ミハエルは文字通り最後の盾である
そしてマリーナの切り札がその手に現れた
空間魔法で創った〈時空の剣〉をその手に持ち真竜と対峙していた
時空の剣はそれを出したマリーナにしか使う事が出来ないがその性能は正直馬鹿げていた
まるで重さを感じさせない様子でその剣をマリーナが振るとその一振りで真竜の右腕が斬り飛ばされる
焦った真竜がブレスを放つがミハエルの盾で自身に反射され、反射されたブレスによって自身がダメージを受ける、残っていた片翼も千切れて消えていた
マリーナが止めを刺す為に真竜との距離を縮め剣を振ると、真竜は頭のツノをマリーナへ向けて地面を蹴って飛びかかる
時空の剣による斬撃がツノとぶつかると真竜のツノが根本から砕けたが斬撃も相殺されていた、そして真竜が残った左腕でマリーナへと殴りかかる
そこにフェリックスが氷壁を、リナが障壁をそれぞれ張って、マリーナの前にはミハエルが盾を構えていた
更にブレスによってモンスターの数が激減した蓮花の盟とバーネットが参戦する
バーネットが真竜左腕に向かってフレアボムを放ち、ノアとエミールが土壁をミハエルの前に作る、ラウドロスはミハエルと共にマリーナの前に出て盾を構える
俺も3メートル程の強化した壁をミハエル達の前に作り、風の魔石に切り替えたリボルバーで真竜にヘッドショットを叩き込んだ
真竜はバーネットのフレアボムを腕に受けながら構わずその腕を振り抜くと障壁や氷壁、土壁を砕き何とか俺の強化した壁で止まった
更に俺のバレットが頭を貫通したがヤツはまだ倒れない
だがマリーナが壁を足場にして飛び上がって、真竜の頭を時空の剣の斬撃で斬り飛ばす
頭を斬り飛ばされた真竜はその場で崩れ落ちる様に倒れた
『終わった』俺が呟くと
この谷を覆っていた薄い膜の様な障壁が崩れていく
「ボスがやられてダンジョン化が解けたね、ただし、まだ終わりじゃナイよ、このモンスター達を倒して砦を救わなきゃいけないからね」
『ああ、そうだった、1番大切な事を忘れていたよ』
「まあね、ヤツはそれだけの相手だったからね」
俺達はこの場にいるモンスターを片付けて砦へと戻っていく
俺達が砦へと辿り着くとそこにはこの世の地獄が広がっていた
砦の周りはモンスターと冒険者や兵士達の死体によって埋め尽くされていた
そして空には50体程のワイバーンや飛行出来るモンスターが飛んでいる
俺は狂った様に空を飛ぶ敵に向かってバレットを撃つ
『ウォー!、死ね!、死ね!、死ね〜』
マリーナやバーネットも魔法でヤツ等を空から落とすと前衛達が止めを刺して回る
1時間も経つと魔獣や魔物達は全て討伐されたが
俺はただその場で立ち尽くしていた
そんな俺の姿を見て
「アンタはまだする事があるだろ!、コイツ等を、大勢の民達を救う為に命を投げ出して戦った戦友達をこのままにしておくつもりかい!」
そのバーネットの言葉で俺はやらなきゃいけない事を教えられた
砦に入るとそこにもモンスターと冒険者や兵士達の死体だけが残っていた
その後俺達は3時間程の時間をかけて冒険者や兵士達の亡骸を砦の中へと運び
砦の中のモンスターの死骸は外へと投げ捨てた
そして俺の壁で砦の出入り口を全て塞ぎ、砦の外で一夜を過ごした
翌朝、俺達はベルグラットへと向かって移動をする
ベルグラットへの途中にも死体があったがそれは俺のアイテムボックスへと収納して進む
何体かのモンスターをたおしながらベルグラットへと辿り着くと、都市の城門は閉じたままであった
読んで頂きありがとうございます




