31.壁と弾丸 #2
俺達はモンスターの進行ルートを逆にたどり、新しく出来たダンジョンを探す事にした
マリーナと俺を先頭にモンスターの群れを迂回しながら慎重に進んでいると
「あった、この先1キロの山間部にモンスター達が出てきている場所がある」
「間違いないね、そこにダンジョンがあるはずだよ」
『どうする?、ダンジョン内部に入るの?』
「すぐには無理ね、私達だけでは人数が足りないわ」
そこで今日はこの少し先で壁で囲った拠点を作り、マリーナ、バーネット、フェリックスの3人は砦に向かうモンスターを間引く事にする
俺は場所を選んで50メートル四方を壁で囲み、モンスター達が西側から来ているので、東側に出入り口を作り、四隅に高さ10メートルの櫓を作った
内部にも壁で3メートル四方の小屋を5つ作った、屋根の部分はリナやエミリーに土魔法で作ってもらう
ミハエルにはあらかじめマリーナが収納していた木材で梯子を作ってもらい、それを櫓に設置する
因みに出入り口には門や扉は無い、モンスターに襲われたら俺が壁で塞げばいいからね
そうして、拠点がある程度形になるとマリーナ達が帰って来た、そしてマリーナとエミリーで砦まで戻ってもらい〈マイノリティー〉と〈蓮花の盟〉を此方に連れてきてもらう事になった
砦の防衛に不安はあるが、今はなるべく早くダンジョン内部の間引きをして、このスタンピードを止めなければならない為、何とか残りの冒険者や兵士達で耐えてもらわなくてはならない
マイノリティーと蓮花の盟がマリーナ達と合流して、拠点に着くと作戦会議をしながら食事を取りその日は休む事になる
そして俺達は地獄の門をくぐる日を迎える
俺達〈城壁〉にはマリーナが入り、〈マイノリティー〉はそのままのメンバー、〈蓮花の盟〉にはバーネットが臨時で入る
この3パーティーでダンジョンへと突入する
早朝から準備をして約700メートル先のダンジョンへと向かった、
何度かモンスターに気付かれ戦闘となったが目的地に着くと、そこは山間部の谷間があり、その谷自体がダンジョンになっていたのだ
「最悪だね、洞窟なんかが魔力を長年溜めてダンジョンになる事はあるが、今回のは強力な魔獣がダンジョンを創っちまったパターンだね」
『何が違うの?』
「場所そのものがダンジョン化した場合はボスを倒してもダンジョンは無くならない、ただ今回のケースはボス自体がダンジョンを創ったからボスを倒せばダンジョン自体も消える」
「だけどね、ダンジョンを創っちまう程のバケモンは間違い無くAランク以上の魔獣なのさ、アタシも一度だけそんなバケモンとやった事があったが半分以上の仲間がヤラレた」
「しかも、ボスを倒せばダンジョンも消えるが、ボスを倒せなきゃこのスタンピードは止まらないんだよ、全員気を引き締め直しな、気を抜いてたらヤラレちまうよ」
俺達は休憩を取ってから万全の準備をして突入する
中がどんな構造になっているかも不明だが、行くしかないのだ
俺達は覚悟を決めて突入した
入ってみると内部は谷間の地形に小さな川が流れていた、そしてそれ以外は見渡す限りモンスターが溢れかえっている
すぐにマイノリティーが先頭に付いてモンスター達を引きつける、そこに蓮花の盟からクララとラウドロスがサポートに入り、魔術士達は後方から魔法を飛ばす
俺はその2つのパーティーの周囲に壁を作り囲まれて攻撃されるのを防ぐ
「あの奥にいる大きなドラゴンがボスのようね」
マリーナの言う通り奥にデカいドラゴンが寝そべりながら此方を見ている、ボス自体がダンジョンを創ったからか学園にあったダンジョンの主の間の様な物は無く、複数のフロアといった構造は無いみたいだ
『アレが此方に向かって来る前に、とりあえず数を減らそう』
「そうね、流石にこれだけの数がいると、近づく事も出来ないわね」
俺達も壁に隠れながらモンスターの数を減らす為に戦い始める、
『バーネット先生達は左側へ、マリーナ達は右側を集中的に狙って』
「内部は予想より悪いね、ババアを働かせ過ぎるんじゃナイよ」
文句を言いながらバーネットは魔法を放っていた
ココでもマイノリティーの前衛は強かった
4人で並んでバスターソードを振り回しながらモンスターを押し込んで行く(だから盾・・)
一方ラウドロス、こちらは正統派に盾を使ってモンスターを抑えつつ横からクララが刈り取る
俺は壁の後ろに5メートル程の高さがある櫓を建ててその上からリボルバーで狙い撃つ、ワイバーンなども後方に見えるので近づいて来るのを警戒していた
左側ではバーネット先生のフレアボムがモンスター達を纏めて吹き飛ばしている、それに合わせる様にノア達も魔法で削っていく
右側はマリーナの空間斬撃がモンスターを切り裂いていた、フェリックスやリナはMPの消費を抑えながらマリーナの攻撃範囲外を削る
ミハエルとエミリーもコンビプレーを披露していた
俺も櫓の上から前衛のメンバー達に向かって来る敵を撃って負担を減らしていく
すでにダンジョンに突入して2時間が過ぎている、無限に続くかと思われた戦いに変化が起きる
後方に控えていたワイバーンなどが前線に出てきたのだ、ワイバーンだけで無くロックドラゴンや体長2メートル程のティラノザウルスみたいな二足歩行のドラゴンもいる
明らかに敵の強さが変わる、下級の魔法ではダメージすら与えられないレベルの相手だ
『俺がワイバーンを地上に落す、他の亜種は任せた』
マルチチャットで伝達する
ワイバーンだけでも15体程いる、火属性の魔石に変えてヤツ等の翼に穴を開けていく
バーネット先生は動きの早い二足歩行のドラゴンに向けて風魔法のストームブレードを放ち脚を切り裂き相手の動きを遅くする
ノアやエミールが動きの遅くなった敵にアースランスやフレイムランスで体力を削りながら倒していく
マリーナは範囲攻撃から単体狙いに切り替えて、ロックドラゴンの首に小さな斬撃を飛ばして狩っている
フェリックス達はドラゴンの亜種には攻撃しないで他のモンスターを狙っている
俺はこの時点で迷っていた、みんなの消耗が激し過ぎる、俺にしてもMPは半分を切っていた、一度引くべきなのかそれともこのまま敵の数を減らし続けるべきなのか・・
そんなタイミングでボスに動きがあった
ボスは真っ赤な色の鱗に覆われた体長が20メートルを超えているであろう、2本の立派なツノが生えているのが印象的だ
後に火焔竜と呼ばれる事になる、亜種では無い本物のドラゴンだ、コチラでは亜種では無いドラゴンを真竜と呼ぶらしい
そして真竜は全てが別の個体で同じ真竜はいないらしい、真竜の子供であっても違う種類の真竜として産まれる、なので呼ぶ名前自体が発見、または討伐後に決まるのだ
その真竜が頭を上げ、徐に口を開けた
これは絶対にヤバイヤツが来る、そう確信させる何かを感じた俺は前線のメンバーに
『横に逃げろ』とマルチチャットで伝達
もちろん俺も櫓から飛んで逃げる
その直後、真竜の口から真っ赤なブレスが吐き出された、そのブレスは真竜前方のモンスターを消し飛ばしながら、俺が作った壁や櫓の上半分を一瞬で吹き飛ばした
ボスの前には20メートル程の幅でえぐれた一本の線が、俺達の所まで200メートル近く続いている
「な、なんだい今のは、アレのブレスなのかい」
流石のバーネットも慌てて呼びかけて来た
俺の壁が障子紙の様に消し飛ばされた、壁を壊されたのも初めてだったが、余りにも規格外の攻撃に動揺がはしった
しかも、ブレスの衝撃波によってマイノリティーの前衛達やミハエルとエミリーが吹き飛ばされ、リナが回復魔法で治療して回っている、クララとラウドロスは櫓の影に入っていた為に吹き飛ばされる事を回避出来ていた
ブレスの軌道がもう少しズレていたら2人は直撃されていたであろう
『バーネット、母さん流石にアレはまずい、一度引くべきだ』
俺の一言で撤退が決まると
「殿は私がするから、みんなは先に下がって」
マリーナの言葉を聞き、俺は残りのMPほとんどを込めた幅30メートル、高さ10メートルの壁を強度増し増しの状態で少し傾けて設置した、そしてノアやフェリックスにつっかえ棒になる様な土壁を出してもらい補強すると
その壁を背にして脇目も振らず、ダンジョンから脱出する
真竜は俺が作った新しい壁目がけてブレスを放つが、傾けた分ブレスは斜め上にそれて上空へと消えて行った
何とかダンジョンから脱出が出来た俺達は、そのまま拠点まで戻って休む、2時間程休憩して今後の方針を話し合った
「最後のブレスが何とか防げたから生きていられたが、ありゃ、まともに戦っても死ぬだけだね」
『そうだね、あの壁は俺のMPを1/3近く使っている、何度も使える手じゃないね』
「1日に3ヶ所、あの壁を作りながら少しづつ前進してボスまで行けないかしら?」
「ああ、確かにマリーナ様が言う様に何とか前進していけば、他のモンスターは勝手にあのブレスに巻き込まれて消えていくだろう」
『どうだろう?ブレスはそらす事が出来たけど、他の攻撃を防げるかは分からないからね』
『それに、もしヤツが飛べるなら壁自体、意味が無くなるよね』
「「「・・・」」」
「打つ手なしじゃな」
「30メートル以内に入ってくれれば手が無い事もないのだけれど・・」
「ほう、マリーナならアレを何とかする術があると言うのか」
「あのドラゴンに試した事が無いから必ずとは言えないけど、この状況の中では可能性が高いとは思うわね」
俺達はマリーナのその術を聞いて、それに全てをかける事にした、と言うかそれ以外無かった
そして次の日、俺がポーションを飲みながら5カ所に壁を作り、残りのメンバーはMPを気にせず全力でモンスターの数を減らしていた
同じ事を更に3日間行った
その結果ダンジョン内部には21ヶ所の壁を作る事が出来、前に作った壁が壊される事もなかった
こうして舞台は整った、後は策がはまるかどうかに掛かっている
ただこの時の俺達はボスの真竜を倒す事に集中し過ぎて、砦の状況までは頭が回っていなかった
砦ではモンスター自体の数は減ってはいた物の、連日の戦いで疲労がたまり
更にワイバーンや他にも飛ぶ事の出来るモンスターが、俺達の気がつかない内にダンジョンを出て砦を攻めていたのだ
それによって多くの冒険者や兵士達に犠牲が出て、〈夜明けの光〉と〈ウロボロス〉でもヘンリーやレニ、フィンが大怪我をして前線を離れていた
砦自体、今まさに陥落の危機に直面していた
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