30.壁と弾丸 #1
2日目
朝になり俺達が起きると、砦の外ではモンスターの侵攻が始まっていた
夜の間は領軍と地元の冒険者達が見張ってくれていたが、朝日と共に侵攻が再開されていた
俺達は手早く支度を整えて食事をする
そして夜番の兵士や冒険者達と交代して前線に立つ、モンスター達は昨日より確実に多い、どうやらスタンピードが本格的に始まったみたいだ、そこで蓮花の盟を予備戦力に回し戦力の温存と各パーティーの交代要員とした
地元の冒険者パーティーでBランクの〈マイノリティー〉と言うパーティーを蓮花の盟の代わりに守備に付いてもらう
マイノリティーはドワーフ4人とエルフが2人のパーティーで、ドワーフ達は全員が2メートル近い大盾とバスターソードを装備している、その4人が前衛で後衛のエルフが魔法を使う
この世界でもドワーフやエルフは数自体が少ない、多分そう言う意味のマイノリティーなのだろう、うん、きっとそうだ
俺はマイノリティーのリーダーであるガーラムにマルチチャットの事を伝えそれを繋ぐと
「アラ〜、アナタ便利な能力を持ってるのね〜すご〜く、羨ましいわ〜」と身長2メートルを超えるドワーフ(男性)が言う
俺は深く考える事を放棄して持ち場に着くと、その後方に昨日の様に支援部隊が配置してくれていた
そしてモンスター達も壁の隙間から侵入してきた事でその日の戦闘が開始された
それはもう凄かった
何が凄いかと言うとマイノリティーのメンバーの戦いが凄いのだ、モンスターが隙間から来るたびに
「おんどりゃ〜死ねゴラァ〜」などと普通の長剣の倍は厚みと幅のあるバスターソードを片手で振り回しながら突撃して倒すのだ
盾持つ意味!と、突っ込みたくなる気持ちを抑えて、自分達の戦いをするのだが
ひっきりなしに聞こえて来る雄叫びが気になって仕方がないのだ、エミリーやリナはモンスターよりも、むしろガーラム達に怯えていた
だがマイノリティーは無茶苦茶強かった
俺達もミハエルが先頭でモンスターを抑えながらエミリーや俺が倒していき、フェリックスとリナは壁の隙間に魔法を放っている、リナも魔物相手ならばかなりの戦力になっている
夜明けの光とウロボロス達も今の所は大丈夫そうだが、一応念の為にクララとエミールをウロボロスの後方へ、ノアとラウドロスを夜明けの光の後方に配置する
マイノリティーや俺達の後方には別の冒険者達が控えてくれている
俺達が最前線に立つのはレベル上げの為でもあるのだが、地元の冒険者達は俺達が来る前の戦いで負傷していた人達も多かった
その冒険者や兵士達の回復まで時間を稼いでいると言う側面もある
昼近くになると、各防御エリアと防壁の外には、合計で200を超える魔物達の死骸が転がっている
後方部隊がその死骸を運んでくれるのだが、数が数だけに運ぶだけでも一苦労だ、しかもそんな中でも俺達は戦っている、それを邪魔しない様にしながらなので尚更だ
初めの方はゴブリンやコボルトなどの弱い魔物が多かったが、徐々にDランクの魔物も現れている、モンスターのランクがごちゃ混ぜの状態になっているのだ
それでいて強い個体が統率するでも無く、ただ此方に進んで来ているだけなのが不気味でもあった
昼過ぎになり一旦俺達は交代して昼食にするのだが、前衛組は血みどろの状態である、なので近くの井戸から水を汲んで、頭から水をかぶって血を洗い流す
今が冬場で無かった事が幸いだったよ
昼食後1時間程休憩をとり戻ろうとすると
「よう!、相変わらずアンタが関わるトコロは偉い騒ぎになるね」
いや、流石に俺のせいじゃ無いよね・・
『バーネット先生の憎まれ口も相変わらずですね』
「ヒィッヒィヒィ、もうアンタの先生じゃ無いけどね」
俺はマリーナとバーネットの2人に現在の状況を簡単に説明して持ち場に戻る
2人が来てくれた事で俺はMP切れを恐れずに、武装を短刀からリボルバーに変えて戦う事にした
風の魔石で貫通力を上げ纏めて撃ち抜く
魔物達の数は減る気配も無く、このままでは夜戦も視野に入れて戦う必要がありそうだ
山岳地帯で森などの見晴らしが悪くなる場所が無い事が救いと言えば救いだった、だけどコレいつまで続くのか、先の見えない状況に焦りもある
そして、そんな中でリナとフェリックスのMPが少なくなってきていた
『母さん、悪いけどリナとフェリックスを休ませる、変わりに参戦してくれ』
「いいわよ、任せなさい」
『クララとエミールはウロボロスのメンバーを休ませる変わりに入って、ノアとラウドロスは夜明けの光のメンバーと変わって』
「了解」「わかった」
『バーネット先生もウロボロスの方を手伝って』
「任せな」
何とか交代で休める様に指示を出して
『ミハエルとエミリーも一度下がって、30分休んでくれ』
「わかったよ、済まないが頼むね」「わかったわ」
俺はミハエルとエミリーも休憩に入れマリーナと2人で受け持つ、ウォール&バレットもスキルの熟練度が3になり能力は増えなかったがリボルバーで撃つ分には1発の消費MPは 1で済む
このままの相手なら400発は撃てる、耐える事は出来るだろう
後方にいる冒険者達からも時折魔法や矢で援護がある、マリーナは隙間から来る魔物を俺に任せ壁の外にいる魔物達へ、時空魔法の斬撃を飛ばして刈り取っている
ミハエルとエミリーは前線復帰出来たがリナとフェリックスは今日はもう厳しいだろう
2人共、何度かMPポーションを飲んでいたが、連続しての服用はポーションの効き目も落ちて来る、それだけに如何に魔法を効率的に使うかが問われるのだが、そこら辺の経験ではやはりベテランには敵わない
そうこうしていると空からヤツが現れた
『チッ、このタイミングでワイバーンが来るのか』
「ラインハルト、ワイバーンを相手にする時はまず翼を狙ってヤツを地上に落すのよ」
「ラインハルトのソレなら、翼の付け根に当たれば飛べなくなるわ」
『なるほど、了解』
『それなら、母さんと俺でヤツ等を仕留めよう』
マリーナが頷くと、後方の前衛タイプの冒険者にミハエル、エミリーの補佐をしてもらい
2人でワイバーンを狙う
まず俺がワイバーンの翼の付け根を狙ってバレットを放つ、魔石は土に変えて散弾にした
ただ当たり前だが、相手は飛びながら方向転換もする、初弾は完全に外れたがマリーナの魔法が翼を切り裂いた
「相手の行動を予測して撃つのよ」
落ちて来るワイバーンに俺が威力を倍にしてヘッドショットを決める
一体は倒せたみたいだが、ワイバーンは後5体飛んでいる、俺は連射で散弾を撃つ、今度は回避する事も予測して撃った
散弾の何発かがワイバーンの翼を破るが、飛べなくなる程ではなかった、今度は魔石を火に変えて翼自体を狙う、弾丸が上手く翼に当たると小さな爆発を起こして穴があき、相手は飛べなくなり地上へ落ちていく
地上に落ちたワイバーンは周りにブレスを放つが壁によって遮られ、此方には被害は無い、逆に近くの魔物がブレスの余波で倒れている
これは魔物を減らす事が出来そうだ
俺とマリーナはわざと止めを刺さずに残り4体のワイバーンを地上に落とした
ヤツ等が落ちた周りの魔物達はブレスで勝手に減っていく、こうなると流石の魔物達も逃げだす
ここが勝負どころと見た冒険者や兵士がモンスターに殺到すると、何とか追い散らす事ができた
すでに辺りは暗くなり始め夜番の冒険者や兵士が交代してくれる、何とか2日目も無事に終わった様だ
俺達は夕飯を食べながら、明日以降の作戦を話し合う
『スタンピードってそもそもなんで起きるの?』
「正直、完全には解明されてナイね」
「討伐するエリアの偏りなどで、ある場所だけモンスターが増えて起こる場合もあるし、突然強い魔獣が現れて周りの魔物を従えて起こる場合もあるわね」
「ただ今回は多分違うタイプだね、新たにダンジョンが出来た時に状況が似てるんだヨ」
「新たにダンジョンが出来ると、誰かに発見されるまで時間がかかる事が多いんだヨ、その間にダンジョン内部でモンスターが増えてダンジョン内に収まりきれなくなると、ダンジョンが外にモンスターを放出する事があるんだ、多分今回はソレだね」
『つまりこの辺りにダンジョンがあるって事?』
「多分ね、あくまでもアタシの予想だよ」
『その予想が当たってた時には、どうすればスタンピートが収まるの?』
「ダンジョン自体を見つけて、ある程度内部のモンスターを間引くしかないね」
「この辺り、半径1キロ以内には多分無いわよ、もう少し山側みたいね」
マリーナが言うには此方に来た時には、モンスターが1キロ以上離れた場所から向かって来ていたらしい、1キロ以内にダンジョンがあれば突然モンスターが現れる場所が解ると言う
相変わらずのマリーナの索敵範囲にあきれるが、今はこれ以上なく頼りになる
そこで明日は城壁とマリーナ、バーネットの7人でダンジョンを探しに打って出る事にした
俺達の代わりには蓮花の盟に守ってもらい、交代要員は地元の冒険者達に任せる事となった
そして此処からが、本当の地獄の始まりだった
読んで頂きありがとうございます




