26.研究と決断
新年を迎える祝賀会は例年以上の盛り上がりだった、まず参加人数が桁違いになり予定していた実家では入り切らず、急遽会場を冒険者ギルドの建物を含めたギルド前の広場まで使う事となった
そして祝賀会の途中からリブムント公爵や公爵軍の幹部から一般兵まで加わり、最早混乱の渦といった状況である
しかし俺やマリーナ、アーデルハルトが失踪した時も冒険者達が強力してくれたり、実は兵士達も普段の巡回ルートから外れた、リブロの森周辺まで万が一を考え見回ってくれていたと聞けば感謝の気持ちしか浮かんでこなかった
Sクラスの生徒や先生方も思い思いに楽しんでいる様だ、ただ軍幹部や兵士達のお目当てはマリーナで
マリーナが王都への移転を知り悲嘆にくれた軍関係者が挨拶に来てくれていた、冒険者達もそれを悲しむ者はいるがマティアスは残る事、更に冒険者なら王都に行く機会もある事などから悲嘆は軍関係者程では無い
リブムント公爵もこのリブムントからマリーナが居なくなる事を残念だと言い、そして今までリブムントの為にマリーナが成してきた事に感謝を述べていた
俺はやっぱり此処が俺の故郷なんだと心から思った
1月10日に王都へ出発すると17日には王都へ入った
俺やマリーナ、アーデルハルトの他
クラスメイト、先生方と冒険者ギルドから新たに研究所へ出向となった魔法陣の知識を持つゲルラット・ハーネスが同行していた
俺、クラスメイト、先生方は学園へ
マリーナ、アーデルハルト、ゲルラットは研究所兼宿舎となる建物へそれぞれ戻る
俺達が学園の宿舎に戻るとミハエル、エミリー、フェリックス、リナそしてビクターも宿舎へ戻っていた
その2日後、バーネット先生から城壁全員が呼び出されて先生の部屋へ行くとマリーナとアーデルハルトも来ていて、ある依頼をされた
学園ダンジョンをもう一度制覇する、これが先生やマリーナから与えられた依頼である
『母さんや先生方で行けば十分では?』
「確かにね、私だけでも余裕だけど、今回は人手がある程度欲しいのよ」
『どのくらいを考えてるの?』
「私達研究所のメンバーが6人、他に男手が10人は欲しいわね」
『Sクラスほぼ全員って事かな?、それ以外だと男の先生方?』
「正直、多ければ多い程助かるわね」
「今呼べそうな先生方はアタシが声をかけてるよ、クララも来る、だからアンタはSクラスの夜明けの光とウロボロスに声をかけな、アイツらなら足手まといにはならないだろうさ」
『わかったよ』
『と言う事なんだけど、受ける?』
Sクラスのメンバーに聞くと即座に了承が返ってきた
『2日後に入るから、各自装備と3日分の着替えを持って来て、荷物や食料はマリーナのアイテムボックスに用意されてるらしいから』
当日
研究所から
マリーナ
アーデルハルト
バーネット
ゲルラット
マークス
ナタリー
何故かアーデルハルトが研究所の扱いだ
先生方
モルダー
クララ
ノア
ヤコブ
カール
ルカ先生は声をかけなかったらしいよ
俺達
ラインハルト
ビクター
ミハエル
エミリー
フェリックス
リナ
マクシミリアン
ノエル
アンナ
ガデス
ヘンリー
ルイス
レオン
レニ
カイエル
ルイーザ
フィン
ハンナ
総勢29名の一行だ
研究者、先生、生徒各自の着替えなどもマリーナに収納してもらい手ぶらでダンジョンだ、人の事は言えないがアイテムボックスはチートだね、しかもマリーナのは容量自体が半端じゃ無い
グルガールの施設でも容量的にはマリーナ1人で十分収納出来た、俺に本や資料の紙束を収納させたのは万が一に備えて分散して収納しただけだった
実はフェリックスの親父さん(商人)が学園にアイテムボックス持ちがいないか聞いてきた事があるらしい、フェリックスは「いないんじゃ無い」と答えたらしいが商人なら1番欲しい能力だよな、遠征の多い冒険者もだろうけど
主の間までは夜明けの光とウロボロスが中心になり進む、間髪入れずにボス戦となったが、俺とアーデルハルトで瞬殺した
先生方から3年になり来る可能性がある夜明けの光とウロボロスには事前情報をなるべく与えない方が彼等の為になると注意されてたからね
今回は壁を1つしか作っていないので消すのも楽だ、さて此処からがメインの依頼だ
マリーナはアイテムボックスから大量のツルハシやスコップを取り出して俺達に微笑むと
「みんなで、この場所を掘り返します」と言った
前に俺達が転移した時に椅子を中心とした一帯に魔法陣が浮かんでいた、なのでその下にその転移に関わる物があるだろうと言う事だ
ただ俺だけは始め別の仕事をする、それは風呂場作りだ、壁を組み合わせて浴室を作り(天井は無い)入り口部分は厚めの板を立て掛けるだけの簡単な作りだが十分だろう
その浴室内に60センチ程の高さの壁で浴槽を作る、女性用は10人が同時に入れる大きさで、男性用は20人が同時に入れる大きさだ、風呂は大事!!
後は簡単な溝を作り、排水を貯める穴に繋げて完成
その後、フェリックスが水を貯める係で、アンナや俺が貯めた水を沸かす係に任命される事となる
俺達は主の間で野営しながら3日間地面を掘り続けると椅子のある台座の下から四方に15センチ程の魔石がはまった石板が出てきた
その石板自体3メートル四方の大きさで、石板の表面には魔法陣が刻まれていた、更にその石板から台座にパイプの様なものが繋がっている
研究者達はその石板の上の土などを丁寧に払い、その魔法陣を観察しながら書き写している
それらをしながら
「この魔法陣もグルガール時代の文字だ」
「この魔石で魔法陣を起動できるのか」
「このパイプみたいな物は何故上の台座と繋がっているのか?」
等々ブツブツ呟きながら作業をしている
ゲルラットはリブムントの魔法陣と見比べ違いを探しながらこれまたブツブツ言っている
との世界でも研究者は同じ様な生き物らしい
それにしてもアレだな、この魔法陣とパイプで繋がった台座と椅子は魔石がバッテリーで台座と椅子が送受信機みたいな関係に見えるな
台座か椅子自体または台座と椅子に送受信のそれぞれの機能があって転移魔法を電波の送受信と同じ様に受けると下に埋まった魔法陣が上の送受信機を通して地上に現れる、こんな感じの仕組みじゃないかな?
台座や椅子を調べてみないとわからんけど、これなら下に埋まった石板とパイプで繋がっている理由にも説明がつくと思う
ノートパソコンに例えると魔石はバッテリー、石板の魔法陣が機能本体、台座や椅子がディスプレイと言ったところか
俺も考えていた事をブツブツ呟いていたらしく
「アンタ何ブツブツ呟いているんだい?、気持ち悪いよ」
バーネット先生がストレートに言ってきたので、俺の考えを説明した、するとバーネット先生が他の研究者達を呼び、俺の考えを聞かせる
「なるほど!!、それなら2つがパイプで繋がっている事も理解できる」
そう言うなり台座と椅子を調べ始めた
その結果、ダンジョンでの野営が3日伸びる事になる
その3日間でわかった事は台座や椅子は見た目では解らないが魔導具としての機能があった事だ
内容まではまだ解析出来ていないが、概ね俺の考えが正しいのでは無いかと言う事になり、今回の研究者達の遠征は終了する
第2回が帰る前から企画されているが・・
後、風呂場は残される事が決まった、生徒達が来ても邪魔にならない場所にある事、最悪はそこに逃げ込めば助かるセーフティーゾーン扱いにする事を先生方が決めたからだ
そして長期休みが終わり、武術大会が迫って来た頃に俺はビクターを除いたSクラス全員に集まってもらった
場所は学園で使われていない教室でSクラスの生徒とクララ先生、ノア先生が参加している
この2人とは前日に話し合い、俺の卒業後パーティー参加、もしくは別パーティー立ち上げに強力して貰う事に決まった、そして俺はビクターを支える目的でこの計画を立てた事も伝えている
全て聞いた上で2人は強力してくれる事となった、何故ノア先生もいるのかと言うと、クララ先生がノア先生を誘ったのだ
クララ先生は普段のノア先生が教師としてやる気があまり無いと思っていて、何かしらやりたい事があるのでは?と考えていたらしい
機会を見てクララ先生が俺に卒業後、冒険者に戻らないか?と誘われた話をすると、ノア先生は思った以上に食いついて来たので、一緒にどうだと誘ったと聞かされた
ノア先生も元冒険者でBランクだったがある魔獣との戦闘でパーティーの仲間3名が死亡、ノア先生を含む残りの3名も大怪我を負い、それが理由でパーティーは解散したらしい
その後教師にはなってみたものの、何処かで冒険者への未練や仲間の仇を取りたいと言う思いに引き摺られていた
そこへクララ先生が俺と冒険者に戻り活動するかもと話しをした事で自分ももう一度冒険者に戻りたいと言う気持ちが抑えきれなくなって参加を決断した
ただ俺はまだ城壁のメンバーがどう言った進路を選ぶのか知らないので場合に寄っては、クララ先生とノア先生が中心になった新しいパーティーを立ち上げてもらう可能性がある事を話している
クララ先生は王都に帰って来た時には冒険者へ復帰する事を決めていたらしく、すでに迷いは無かった
俺はSクラス全員の前で
・卒業後冒険者になる事
・なるべく早くランクを上げてクランを作る事
・そしてそのクランの名声を高める事
・その全てはビクターを助ける為にする事
・今の王国の現状を王族達が危惧している事
・今後、王国で起きると考えられる予測
・ビクターを助ける為にみんなにも力になって貰いたい事
・クララ、ノアが参加する意志が有る事
俺は知っている事の全てであるこれらを話した
みんなは黙って聞いていた
そして全員が参加を表明してくれた
貴族である4人、ミハエル、エミリー、マクシミリアン、ヘンリーも参加だ、4人とも実家の相続には問題が無いとの事でエミリーは長男である弟が、他の3人には兄がいる
家を継げない以上、何か仕事をしなければならないが、兄の下で働くより外に出て働くつもりだったようだ
マクシミリアンやヘンリーはエミリーと同じく騎士団への入団を狙っていたらしいが、冒険者は冒険者で面白そうだし、何よりビクターを助けたいと言う俺の考えを聞いて参加を決めてくれた
ミハエルは元々俺の進路に合わせて進路を決めるつもりだったと言う、エミリーは騎士団も良いが、同じパーティーを組んだビクターを助けるのは当たり前の事だと決断してくれた
そしてこのみんなの決断でクララ先生とノア先生は新たなパーティーを立ち上げてもらう事になった
2人にはこれから、教師をしつつ1年をかけてメンバー探しをしてもらう事になった
これで現状19名の仲間が集まった、だがまだ足りない、俺達が文字通り
ビクターの〈城壁〉となる為にはもっと仲間を集めなければならない
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