25.過去と未来
国王との会談が終わった翌日
ビクターが俺を訪ねてきた、そんなビクターの横には1人の女の子がいる
「ラインハルト紹介するよ、彼女は私の婚約者でダーマー神皇国の第一皇女エカテリーナだ」
『ふぁ?こ、こ、こ、婚約者〜?』
「ふふふっ、初めましてラインハルトさん、エカテリーナ・ハンスブルームです、今後はビクター様と共に親しくして頂けるよう、よろしくお願いしますね」
『す、すいません、余りにもいきなりだった物で、ラインハルト・ミューラーです、こちらこそよろしくお願いします』
「なんだラインハルト、私の扱いに比べ、やけに丁寧な口調だな」
『なんなら殿下か王子様って呼ばせていただきますが?』
「いや、やめておこうラインハルトに殿下などと呼ばれたらキミが悪い」
エカテリーナはそんな俺とビクターのやり取りを笑いながら眺めている
ダーマー神皇国はブルグムントと離れた南西方面にある国で国境は接していない、法皇が頂点に立つ宗教国家だ、エカテリーナはその法皇であるアストーリア・ハンスブルーム法皇の長女で第一皇女の席にいる
第一皇女とは、継承順位の1位にある事を示している、ただし他家へ嫁いだ場合には継承の資格を失う
エカテリーナには歳の離れた弟が産まれた事で2年前にビクターとの婚約が決まったとの事だ、現在13歳で俺やビクターの1つ下だ
そして大々的に婚約の発表がいまだなされていないのはエカテリーナの弟がまだ小さかったからで、今年3歳になった事で来春に正式な発表をすると決まったらしい、そして今後はブルグムントで生活する事になり、ビクターの時間が1番空いている長期休みに合わせて王都へ来たとの事
『なるほどね、ビクターが合宿に参加出来なかった理由がわかったよ』
俺が揶揄う様に言うと、ビクターは苦笑いだ
俺はエカテリーナが家族にも挨拶したいと言うので紹介する事にした
マリーナとアーデルハルトのいる部屋へビクターとエカテリーナを案内して、2人にエカテリーナを紹介するとマリーナの顔色が僅かに変わった
「初めましてマリーナ様、私はエカテリーナ・ハンスブルームと申します、よろしくお願いします」
「マリーナ・ミューラーよこちらこそよろしくお願いね」
「マリーナ様はあのアントワース家の方ですよね、同族として今後ともよろしくお願いしますね』
アントワース家?マリーナの実家の事か?
俺が疑問に思っていると
「私は実家を捨てブルグムントへ来た者で、既にアントワース家とは関わりはありませんよ」
「そうなのですね、失礼しました」
なんか、2人のやり取りに含みがある感じがするが・・
ビクター達が来た1週間後、一度リブムントへと帰る事となった
帰りの道中にマリーナは自分の過去の事や実家での事を俺とアーデルハルトに話して聞かせた
要約すると
マリーナの実家であるアントワース家はエカテリーナの母国ダーマー神皇国の隣国であるリーベリア王国の侯爵家で銀髪を排出する家として近隣だけでなくブルグムントなども含むユーラネリア大陸で有名な家柄だと言う
そしてハンスブルーム家とは何代にも渡って血縁関係を持つ
マリーナが若い時にエカテリーナの父であるアストーリアと結婚の話が出ていて、それを拒否したマリーナは家名を捨て冒険者として海外を回るうちにブルグムント王国で拠点を構えた
その後、冒険者としてお互いソロであったマティアスと組んで活動する、パーティーとして活動するうちにお互い惚れて結婚して今に至る、という事だ
実家と揉めてブルグムントへと来たのか、どうりでマリーナの実家の話しをする事が全くと言っていい程無い訳だ
だがマリーナは今の生活に満足していると言うし俺が気にする事では無いな、アーデルハルトも
「お母さんは、何があってもお母さんだよ、この先にもし問題が有ったとしても兄さんと僕が絶対に守るから」
男前な言葉を口にすると、マリーナはただ微笑んでいる
俺達がリブムントへ帰るとマティアスやクラスのみんな、先生方それに黒狼達が迎えてくれた
『みんなには心配をかけてしまいゴメン』と言うと
「3人とも無事で本当によかった」
「ラインハルトだけで無く、年に似合わぬ実力を持つアーデルハルト君にこの国で1番の魔術士マリーナ様が一緒だったからね、私は心配してなかったよ」
「まあね、アンタ達なら大丈夫だと思ってたさ」
などとみんなが声をかけてくれた
俺達は説明出来る範囲で今回の事をみんなに話した
その日の晩、改めて実家へバーネット先生、クララ先生に来てもらい、マティアスを交えて詳しい内容を話した
そしてマティアスはマリーナと2人で寝室へ行き今後の事を話し合う
リビングに残った俺とバーネット先生、クララ先生でこちらも今後の話をしていた
「ソレにしても白金貨500枚かい、アンタは本当に大したモンだね〜しかもその内300枚を寄付するなんて豪気な話だよ」
「ああ、ラインハルトは運命の神に愛されているのかも知れないね、もしワタシがラインハルトとパーティーを組んでいたら一生金に困らない生活が送れるね」
『ん〜俺としては穏やかな一生を送りたいと思っていたんだけどな〜』
「アンタにソレは無理な話ってモンだろ、ところでアタシはその新しく出来る研究所に所属する事になるのかい?」
『一応学園からの出向の形になる予定みたいだよ』
「ソウかい、研究も良いけどね、出来れば生徒達も観ていたいんだがね〜」
『その辺は国王やマリーナと話をしてくれれば何とかなると思うけどね、学園が少なからず今回の事にも関わっているから俺がバーネット先生を推薦したんだし、柔軟に対応してくれると思うよ』
「それならありがたい話しだね」
「バーネット先生は本当に生徒達を指導するのが趣味なのだな」
「アンタも長く続けていけば解る時がクルさ」
「そんなもんかね、ワタシは偶に冒険者としてもっと上に行きたかったと思う事があるんだけどね」
『クララ先生はなんで冒険者を辞めて、教師になったんですか?』
「・・パーティーがねメンバーの結婚を機に解散しちまったんだよ」
「ワタシにとってパーティーとはあのメンバー達との事だった、それが突然解散って事になった時に冒険者を続ける意味を見失ってしまったのさ」
俺は前から考えていた事をクララ先生に話す
『もしクララ先生が冒険者に未練が少しでもあるなら俺達の卒業後にパーティーに入って頂けませんか?』
「ワタシが城壁に?」
『ええ、今俺達6人でパーティーを組んでいますが、卒業したら間違い無くビクターはパーティーを抜ける事になるでしょう、ミハエルやエミリーも彼等の実家との兼ね合いもあるので不透明な状態です、更に言えばフェリックスやリナですら卒業後の話しはしていません』
『ただ俺は卒業後に冒険者になるつもりでいます、最悪は最初ソロとして活動する事になるかもしれないので、俺としてはクララ先生に手伝ってもらえると助かります、Bランクまで行った元冒険者に対しては失礼な話かもしれませんが、考えてもらえませんか?』
「ワタシがアンタとパーティーをね・・悪くは無いね、ただ少し考えさせてもらうよ」
『はい、よろしくお願いします』
俺が卒業後の進路を冒険者に定めた事を話したのはこの2人が初めてだった
「なんだいアンタ、クララを誘ってアタシは誘わないのかい?」
『バーネット先生は教師として生徒を指導する事にやりがいや誇りがあるのでしょう?、それに今後は研究所での活動もある、流石に誘うのは憚られますよ』
「まあ・・ね」
こうして今日の話は終わる
将来について、あの日からずっと考えていた
俺がビクターの助けになる1番良い行き先は何処なのかを日々自問していた、軍や王宮の行政官も考えたが、ビクターの側近になるには平民出身の俺では時間がかかる
ビクターの学友として抜擢される可能性もあるが、それでは俺が大きな成果を上げるまでビクター自身に批判も出るだろう、なるべくビクターの足を引っ張る事は避けたい
そうすると、必然的に進路は冒険者一択となる、今回魔導具を国へ売った事で資金的にはかなり有利な状態から冒険者をスタート出来る
聖剣や勇者の先輩方が言ってた様に冒険者として名前を売り、クランを立ち上げて大きな成果を上げる、上手く行けば5年でAランクまで上がれる事はマティアスやマリーナが証明しているのだ
出来ればSランクまで上がっておきたいが、それは王国に問題が起きる時期との相談になる、Aランクパーティーが率いるクランなら何があってもそれなりの戦力になるだろう
こうして俺は卒業後、最速でAランクまで上がる事を自分に課した
その為にも仲間だ、なるべく多くのビクターを支えるに足る仲間が欲しい、その意味でクララ先生とアーデルハルトは是非とも仲間にしたい
そしてもちろん今のメンバーであるミハエル、エミリー、フェリックス、リナも参加して欲しいし、出来ればSクラスの夜明けの光とウロボロスにも参加して欲しい
問題は話を切り出すタイミングだった
俺は3年に上がる前にはみんなを集めて話をする事にした
そしてもう一つの話し合いの結果は
以外な形となる
マリーナとアーデルハルトは王都へ移住
マティアスはリブムントに残ると言う結果だ
2人の話し合いの翌日に家族での話し合いとなった、俺が何故そこまでマティアスが王都へ行く事を嫌うのかと尋ねると
マティアスは学園時代に王国で有力な侯爵家の嫡男と揉めて互いに暴力沙汰にまで発展、それによりその侯爵家と繋がりがある貴族達からかなりの恨みを買っていた
その結果、卒業後の進路に予定されていた国軍への入隊を白紙にされ冒険者になった、そして当時のマティアスのパーティーメンバーは貴族達から恨まれる事を恐れたり、妨害なども有り、マティアスから離れていった
15歳だったマティアスはそんな絶望の中でたった1人で冒険者としてのスタートを切らなければならなかった、唯一の救いは活動拠点に定めたこのリブムントはその侯爵家であっても手出しが出来ず
更にリブムント公爵はマティアスに目をかけてくれていた、その後マリーナと知り合いパーティーを組むとそこから5年でAランクまで上がって行った
この話を聞いた後、マティアスは未だにその貴族達は恨みを忘れてはいないと言う
そんな中で王都へ行けば必ずその貴族達がマティアスにちょっかいを出してくる、リブムントにいてもおおっぴらに手を出してこないだけで、今まで数々の嫌がらせや小さな問題を起こしていた
そんな事になれば間違いなく国王にも迷惑をかける事になると言うのがマティアスの話であった
その上でマリーナとアーデルハルトだけなら王宮に守られて、その貴族達も手を出せないであろう、出した所でマリーナの実力には敵わない
なので2人は王都へ行き、マティアスはリブムントに残るのが良いだろうと結論に至った
俺とアーデルハルトもそこまで聞いては頷くしかない、ただ希望もあった、マティアス達がリブロの森で書き写した魔法陣と学園ダンジョンに出ていた魔法陣を解析出来れば
王都からリブムントまで転移できるのでは無いかとマリーナが言うのだ、グルガールの施設にあった魔法陣もマリーナはほぼ覚えているとも言う精度も上がるだろう
そうすれば簡単に行き来出来る、マリーナはまず魔法陣による転移から研究すると決めた
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