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城壁のガンナー  作者: tw
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2.将来への道標


男を先頭に20名程のメンバーが真剣な表情をして進んで行く、鬱蒼とした森を抜け、目の前に草原の大地が広がる中で騒めきが起こる



リブムント郊外の山脈の中程にある小さな洞窟がダンジョンになってしまい、しかも魔獣のスタンピードが起こっていた


その情報が入って来たのは昨日の夕方、そこから冒険者ギルドが職員を召集しての対策会議


そしてある1つの冒険者のクランにギルドからの要請で対策に当たってもらう事が決定されたのが深夜


要請を受けたクランはすぐに集められるだけのクランメンバーを招集して夜が明けると共に現地に向けて出発する





森を抜けた草原の端で山の洞窟から溢れ出る魔獣のスタンピートを監視警戒する冒険者達は数を増やしながら此方に向かって来る魔獣達の群れにかつてない程の緊張感に包まれていた


まだ此方までの距離は大分離れているものの百を超えても洞窟から出てくる魔獣の数は止まらない、ギルドからは〈あの〉クランがスタンピードの対策に向かうと朝早く連絡員が送られて来てはいる


しかし此処で監視に当たっている冒険者は基本サポート能力中心のメンバーでとても魔獣の群れに対抗する術は無い、そんな心配をしていると後ろの森から20人を超える人が現れる



監視役の1人が隣にいた冒険者に囁く様にもらした


「あれがブルグムント王国最速でトップまで上り詰めたクラン【城壁】のメンバーか?」


「ああ、あんたは地方から来たばかりだったな、あの先頭に立って向かって来る男が城壁のリーダーで個人でもSランクの【城壁のガンナー】だ」


そこには銀色の長い髪を後ろで縛っているまだ若い男がいた


「やばい事になったが何とかなるかもな」ともう1人の男が声をかけて来た


「まあな、城壁でダメならリブムントは終わりだ、俺等も城壁の足だけは引っ張らない様に気合いを入れて行くぞ」


「とは言え、俺等の任務は後方支援だがな」と言って戯ける様な仕草をすると先程までの緊張感が少し和らいだ様で周りから控えめな笑い声が起こった







  *






俺は洗礼式の翌日から両親であるマティアスとマリーナに魔法の基礎や俺が将来なれる可能性のある職業やその仕事内容について教えてもらっていた


魔法の基礎は同じ銀髪を持つマリーナから事細かに指導され最初などは半日も持たずにへばってしまった


職業等については2人揃って俺に色々と解説を交えて話してくれる


まず、この国では12歳から3年間は学校へと行かなければならない、そして基本15歳を超えると大人の仲間入りだ、学校を卒業すると同時に大人として扱われる


つまり、卒業式がイコール前世の成人式にあたる


働く事も基本的には15歳からしか出来ない事になっている、何故こんな言い回しをするかと言うと例外があるからだ


どんな世界でも貧困層はある一定の数がいる、この国の王都や副都でも貧困層が住むスラムはある、もちろん此処リブムントも例外では無い


そこで暮らす人達は子供を含め何かしらの労働をしなくては生きて行く事が出来ないのが現実


スラムで暮らす人達にまともな仕事などほとんど無いのが普通で汚れ仕事でもあれば御の字、更に子供となれば仕事など全く無い、ほとんどの人はゴミ拾いや炊き出しによって命を繋いできていた


その様な現状を少しでも変える為に2年前から冒険者、商業、工業のギルドが連携してスラムに住む子供達に簡単な手伝い仕事をさせ小遣い程度の賃金を支払う事が国王の決定で可能になった


何故2年前からなのかと言うと約3年前に前国王が倒れ新たな国王が即位して今までと少しだが政策の方針が変わったからだ


国はなんとかスラムで暮らす人達を減らしたい、商工業者は安い労働力が欲しい、更に言えば若いうちから仕事に慣れさせ教え込む事で一端の職人になっても少し安く雇える


冒険者ギルドでは貧困が理由に限り通常15歳からの登録を10歳まで引き下げた(因みに商工業ギルドでは8歳から)、但し仕事内容は街中での清掃仕事、範囲が決まった場所での薬草類の採取に限る


スラムに暮らす人達はそもそも仕事が無いので子供だけかつ低賃金でも飛び付いた特に子供を持つ親達が(親からすれば自分の子供がスラムから抜け出すチャンスが増えたので当たり前ではあるが)


この様にある程度の人達の思惑により多少の改善はなされているらしい


長くなったが、これが今のこの国の簡単な現状で将来的な話をしていると両親は国の関係の職業へ就く様に仕向ける発言をする



『国か〜国って事は軍だよね、確かにこの髪色で特殊系の適正持ちならある程度優遇もされるかもしれないけど国軍か〜』


マティアスが「ラインハルトの適正を考えれば戦闘に係る職業以外は無さそうだからな」


続けてマリーナが「ラインハルトが言う命の危険が無いって希望は難しそうね」


俺の希望はばっさりと切り捨てられる、まぁ、あの適正を見た時から諦めてはいたけどね・・


「それであれば国軍に所属するのが一番良いと思うのよね、近隣の国との戦争も最近は全く無いし、魔獣は出るけれど基本的に魔獣は冒険者が討伐するわよ」


だから軍は比較的、安全だとマリーナが追撃を入れてくる


「まあ、まだ10歳だからな、今は魔法や体力を中心に鍛えて職業に関しては学校を卒業するまでに決めれば良い」とマティアスが今後の方針を決める


その時、マリーナがふと思い出したかのように聞いてくる「そう言えば学校は何処に行きたい?」


『学校って何処でも好きに選べるの?』俺はそう返すとマティアスが「ある程度は自由に選べるが王都と副都であるジグムントの学校は試験があるな」


ただふたりの話では特殊適正を持つ俺なら試験に受かる事はほぼ間違いなく、むしろ勧誘が来る事も考えられるとの事だった、銀髪である為有力な適正持ちである可能性が高いと見られるらしい


〈あぁ、洗礼式の時に司教が俺を見て有望だなどと言っていた理由が解った〉


そして学校の施設や教育内容に関して言えば王都の学校が抜けているとも言っていた、ただし王都の学校にもマイナス面はある


それは貴族の子供は例外無く王都の学校に入る、そしてテンプレの様に貴族以外の生徒を見下してくる事が多いらしい


露骨に暴力を振るってくる等はほとんど無く、陰湿なイジメなどは有るだろう、なおかつ俺の場合は銀髪を理由に対象になる可能性が高いと思っておけと言われた、まぁ学校もすぐに決める必要は無いしな




2年が経ち俺はある理由により王都の学校へ行く事となった・・


その理由とは国王からの要請と書いて命令と読むヤツだ






読んで頂き誠に有難う御座います。

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