17.優勝と聖剣と勇者
マクシミリアンとの試合が終わり
冷静になって周りを見渡すと
うん、コレは流石にこのままって訳には行かないよな
試合場所には30近い壁がオブジェかの様に建っている、何処かの近代アートとかで有りそうだな、といつもの様にどうでもいい事を考えながら現実放棄する
「ところでアンタ、コレは元に戻してくれるんだろうね」とバーネット先生が現実を突きつける
そこに「バーネット先生、アレは僕等ではキツいですね」ノア先生だった
「アンタはアレを戦いの最中に消してたよね」
『消しましたね』
「なら、この後する事はアンタなら解るよね」
『MPポーションって用意してます?』
「あるよ、もちろん」
流石にこれだけ壁をつくると俺のMPも残りは多くない、ポーションを飲みながら頑張るかと思っていると
「すいません、明日の試合はこのままの会場で出来ませんか?」
「ああ、俺もこのままでいい、どうせラインハルトとの試合で同じ様になるだろうしな、それに同じパーティーで活動するんだ、こういう環境にも慣れておきたい」
ミハエルとフェリックスが話に入ってきた
「正直、私にとっては能力を活かしやすい環境だから少し気が引けるけど、ミハエルが良いと言うのであれば問題はないわよ」
「バーネット先生、どうでしょう、このまま試合をさせてみては?、どうせ来年からはダンジョンでの訓練もするのですし、本人達が納得してるのであれば僕は問題ないと思いますが」
「そうだね、当の本人達が認めてるなら、外野がゴチャゴチャ言うもんじゃないね」
ノア先生とバーネット先生の話し合いで、何故かこのままの状態で明日の試合をする事になった
翌日、俺は武術大会の1年の部で優勝した
まず準決勝でのエミリー対ミハエルは
エミリーが上手く壁を使いミハエルを奇襲するも、ミハエルも壁を利用しながら硬い守りを維持して時折カウンターを狙う
最終的にエミリーが投げナイフを風魔法で操作しながら飛ばしてデコイとして使い、ミハエルのいる壁の裏から飛び越えてミハエルを奇襲、ビクター戦と同じで壁を飛び越えてからウインドハンマーで自身を加速してミハエルに一撃を入れた、そこでミハエルが降参
次は俺とフェリックス
フェリックスは中央に陣取り、なんと俺が作った壁を氷の壁で繋げて、更に天井まで氷で作り上げてしまった、入り口は一箇所のみフェリックスはそこに向けいつでも魔法を打てる体勢を作った
俺は壁を消して侵入しようとするが、氷で壁の表面まで覆われていて消す事が出来なかった
俺の火魔法ではこの氷のドームは溶かせないだろう、かといって素直に入り口から入ればフェリックスに狙い打ちにされる、それは完全に悪手だ、例え俺が壁でフェリックスの魔法を防いでもフェリックスに接近する為には壁から出なければならない
天井まで作る事で空間も限定され接近する前に魔法の餌食だ、逆に接近さえしてしまえばフェリックスに俺を止める術は無い
なので俺は入り口を壁で塞いだ
そして炎属性のバレットで氷の天井を破壊
入り口を塞がれ逃げ場の無いフェリックスは氷の壁を水にして解除した
後は狩りの時間だマクシミリアン戦と同様に追い詰めて終了
フェリックスは氷を解除した水を全身に被っていたのでずぶ濡れだった
決勝は俺対エミリー戦
お互いが姿を隠しながらのスタート
しかも探査魔法もお互いが使える、如何に相手を出し抜くかの戦いになった
俺は移動しながら壁を増やしたり、あったはずの壁を消したりしながら、嫌がらせの様な戦い方をした
エミリーも時間と共に壁の位置や数が変わっていく事に気がついたが何も出来ない、俺は20枚の壁を新たに作り、10枚の壁を消して地形を作り替える
勝負を決めに行く、新たな地形に誘い込む様にバレットを撃ちながら誘導する、もちろんエミリーに直接当たるかもしれない程度には狙ってる
そうしないと誘導にならないからね
そしてエミリーが狩り場に到着、入り口が狭くなった、コの字形の行き止まりに上手い事誘導出来た
エミリーが狩り場に入った瞬間に俺は入り口に立ちバレットを撃つ体勢で声をかけるとエミリーは負けを宣言した
優勝を決めた後、まずやった事はポーションを飲みながら会場の壁を消す事だった、自業自得だけどね
ただし後日、バーネット先生達に大講堂の脇にある広場を利用して、同じ様な壁の施設を作る事に協力させられるのだ、ダンジョン等での遭遇戦や索敵の練習に使用される事になる
因みに3位決定戦は無かった
優勝 ラインハルト
準優勝 エミリー
3位 ミハエル、フェリックス
こんな形で表彰式が行われた
こうして俺は特別室の生徒と言う認識から変わって、名実共にこの学年のトップとして認識される様になる
そして、俺達は2年生になった
ただしその前に一悶着あったが・・
俺達がまだ1年生の終わりにその年卒業する3年生のパーティーから俺達〈城壁〉が学園を卒業したら、自分達のパーティーのもとに来いと誘いと言う名の強要を受けた、それも別の2つから
そのパーティーとは
1つは〈聖剣〉と言う痛い名前のパーティーで、副都を含めた領地を持つジグムント公爵家の三男がリーダーで貴族家の子弟で組まれているパーティーだ
ジグムント公爵家は王族の一家で、現在の公爵は前王のすぐ下の弟でパウル・ジグムント57歳
三男はベン・ジグムント15歳、ビクターが言うには、従兄弟ではあるが優秀な兄弟達の中でただ1人の問題児だと言う、と言うか王族唯一のアホで貴族達とつるんで問題しか起こさない、権威主義のドアホである
ベンの行動に当主のパウルも頭を悩ませていて、度々諫言しても聞き入れない為卒業後も領地に戻る事を許されない程だ、それをいい事にベンは王都で冒険者として活動する事にした
ベンが俺言った事を要約すると
・俺達の下部組織として将来作るクランに入れ
・ラインハルトは久々に出た特別室の生徒で王族に認められたのだから王族である俺に使えるのが当たり前だ
・なのでパーティーごと使えろ(卒業後ビクターはパーティーを抜けるだろう)
・ラインハルトとフェリックスは平民だが元貴族家なので特別に入れてやる
・ただし平民であり、大会で変な戦法を使ったリナは除名させろ
との事だ、話にならんな
そもそも王族に使える義務も無いし、もし使えなきゃいけないとしてもお前は絶対に無い
そして優秀で貴重な回復役であるリナを除名なんてする訳が無い
更に何故お前に俺達の将来進む道を決められなければならないのだ、ふざけるのは頭の中と顔だけにしろ
と、俺はやんわりと言葉を濁して伝えた
馬鹿は怒るが俺は無視して立ち去った
そしてもう1つは〈勇者〉と言うこれまた頭が痛くなる名前のパーティーだった
彼等は現3年生で1番のパーティーだ、全員平民出身者で組まれている
リーダーは大会3年の部を優勝(1年、2年でも優勝)
リーダーの名前はリオン・ベッカー15歳
リブムント領から見て北西にある街の出身
レオン達(彼等はメンバー全員で来た)の誘い文句を要約するとこうだった
・貴族達に迫害されている平民を救いたい
・同じ平民出身で特別室の生徒である俺に協力して欲しい
・将来作るクランに参加して欲しい
・ただしビクター、エミリー、ミハエルは除く
うん、馬鹿程では無いがこの人もヤバイ奴だ
まぁパーティー名で解ってはいたけどね
この人達は冒険者として、どうやって迫害されていると言う平民達を救うのか?
内乱でも起こして王国を潰すのか?
そもそもアンタ達にパーティーメンバーをどうこう言われる筋は無い
そして自分達の将来は自分達で判断して選ぶのでどうぞお帰り下さい
と、俺はやんわりと言った
彼等も怒っていた
「平民とは言っても元貴族はやはり駄目だ」
「貴族とパーティーを組んでいる時点で裏切り者だ」
「貴族に尻尾を振りやがって」
など、わめいていたが俺はまたもや無視して立ち去った
争いは同じレベルの者でしか起こらない、と言う前世のありがたい言葉を思い出しながら
馬鹿とヤバイ人は視点と立場が違うだけで同じタイプの人種だった、完全に時間の無駄だったな
こんな事が有って、俺はパーティーメンバーに一応話しと馬鹿とアホが何かして来ないとも限らないので注意をしておく
そして2年目の学園生活が始まる
2年生になって最大の変化は、自主練にノア先生も指導者として参加して
更にAクラスの生徒からも20名程が新たに参加して来た、人数が増えた事で魔導練習場と武芸練習場の2箇所で自主練をする様になり、バーネット、モルダー、クララ、ノアの先生方も毎日指導に来てくれる
40人なら片方の練習場で自主練を出来るのだが、分けた方が効率よく出来るとモルダー先生から提案されこの形になる
どちらに参加するかは個人で選んでいるが、余り偏らない様に先生方も気を配ってくれている
そしてもうすぐダンジョンでの実習が始まる
出て来るモンスターは階層によって変わるが最高でもDランクの魔物だと説明をされている
とは言え気を抜けば死ぬ事も有るのが戦いだ、俺達は気合いを入れてその時の為に練習を重ねる
ここまで読んで頂き本当に有難う御座います




