16.リアルウォール&バレット
武術大会2日目
今日は午前中にベスト8が決まり、午後の試合でベスト4が決まる
ベスト16に残ったのは全員Sクラスの生徒だった、この学園に入った時点で能力が高かった事以上にその後の自主練によって差が開いたようだ
ベスト8決定戦ではビクター、エミリー、ミハエル、フェリックスは順調に勝ち上がったそしてリナと俺の試合だ
リナ対ラインハルト戦
「ラインハルト君、私は全力で行くからね、ただラインハルト君は私を殺さない様にしてね〜信じてるからね」とリナが笑う
『なるべく気をつけるよ』と笑いながら返す
リナは試合開始と同時に自身の前に3枚の障壁を、左右にも1枚づつ城壁を張った
そして前方3枚の障壁を押して進む
ん?何故か左右に張った障壁も一緒に移動している
どうやら左右の障壁はリナの肩にくっついている様だ、障壁を張る際にリナの肩に固定して出したのか?
面白いね、ただし
俺は両手の短刀に炎の属性を乗せ正面から切り付ける、3回の攻撃で障壁は消え、俺はリナの首に短刀を添えようとした
その時、肩に固定されていた障壁がリナの突き出した手に移動して
俺に対して障壁の下の部分を前に上の部分を後ろに引いて障壁自体が斜めになる様にしていた、その障壁をリナがウインドハンマーで飛ばす
コレが当たっていたら、俺は空中に弾き飛ばされていただろう
障壁は斜めに空へ飛んでいった
俺は障壁が前に移動してすぐこの後何が起こるかを予想出来ていた、なのですぐに左に飛んでかわしリナの首に短刀を添えた
「私の負けです、やっぱりラインハルト君には勝てませんね」
『あんなふうに障壁を移動出来るなんて驚いたよ、ビクターやリナと特訓して無ければ、俺は飛ばされていたさ』
「ふふっ、残念ね、ただラインハルト君と特訓して無ければ、私は前の試合で負けてますよ」
こうして俺とリナの試合は終わった
そしてベスト8が決まった
・ビクター
・エミリー
・ミハエル
・リアム
・フェリックス
・アンナ
・マクシミリアン
・ラインハルト
以上8名だ
次はビクターとエミリーか
昼食後
ビクター対エミリー戦
開始の合図と共に両者が自分にバフをかける、エミリーは合宿後、支援魔法を筋力と速度だけだが使えるようになっていた
ビクターは他に魔力と防御もバフで底上げしてる
エミリーが動く
ビクターの左手側に走りながら長剣を振り抜く
ビクターは障壁で回避
エミリーは突きで障壁を壊して更に突きを連続で放つ
ビクターはバックステップしながら障壁を張り直す
そして、ビクターが更に障壁を出すとウインドハンマーで障壁を飛ばす
2枚目の障壁を見てエミリーも予測して右に飛ぶ事で回避
エミリーは着地してすぐビクターに向け飛んだ、飛び込みながら自分の後ろから足の裏に向けウインドハンマーを叩きつけて加速する
??
ビクターは一瞬反応出来ずに、エミリーに剣の側面で腹部を殴りつけられてダウン
「参った」
エミリーの勝利が決まった
「あ〜ベスト4に残りたかったがここが私では限界かな、それにしてもエミリーも無茶をするよね」
ビクターが笑いながら言うとエミリーが
「無茶をしないと殿下の防御は抜けませんから」
と返しながら右手を出す
ビクターも右手を出して握手する、エミリーはそのままビクターを引いて起き上がらせる
うん、美しい光景だ
時間的には短い試合だったが、お互いの特長が出た良い試合だった、攻撃と防御の教科書に載ってもいい程の密度が高い戦いだ
ミハエル対リアム戦
此方は前の試合とは打って変わって玄人好みの渋い内容だ
2人共に盾持ちのタンク役、ミハエルは盾に片手剣それと腰に手投げ斧を下げている
リアムは細い身体ながら1.2メートル以上ある大盾と1メートル程の金属製の六角棒の様な武器を持つ
お互いがジリジリとベタ足のまま爪先でにじり寄る様に距離を詰め盾で相手の攻撃を防ぎながら、自分のペースに持ち込もうとしている
ノエルが六角棒でミハエルの頭を狙って振り下ろせば、ミハエルは盾で六角棒を受け止め剣でノエルの足を狙って切りつけそれをノエルが大盾を地面に挿す様に立てて防ぐ、といった攻防が既に15分程繰り返されている
多分この大会最長の試合だ
お互い神経をすり減らしながら戦っている
ここまではノエルが常に先手を取りミハエルがカウンターを返す形だ
まだお互い焦りは見えない、自主練も一緒にやる様になり2人共、相手の能力はある程度解っている
この戦いは焦って隙を見せた方が負ける、そんな戦いだった
ノエルが動く、大盾を身体で押し込む様にミハエルの盾にシールドバッシュでぶちかます、ミハエルは腰を落としてその勢いごと盾で受け止めた
それをノエルはぶつかる瞬間に僅かに大盾を傾けてミハエルの右手側に身体が流れた、その勢いのまま裏拳の様な体勢で六角棒をミハエル目掛け振る
ミハエルは咄嗟に剣を離してしゃがんだ
ノエルの六角棒はミハエルの頭上を通り過ぎる
ミハエルは腰の手投げ斧をとりしゃがんだままノエルの足を手投げ斧の峰?ですくい上げるとノエルは足払いをされた様に身体が浮いた
ノエルはそのまま地面に仰向けで落ち、ミハエルは振り向き斧をノエルの顔に向けると
「そこまで」
審判が試合を止めた
ミハエルとノエルはお互いの健闘を讃え互いの右拳を合わせた
30分を超える熱戦だった
フェリックス対アンナ
この試合はまたさっきの試合とは打って変わって魔術士同士の派手な魔法戦となった
フェリックスは長身痩躯、アンナは背が小さい痩せ型、細くて長い男と細くて小さい女性の戦いだ
アンナは炎、フェリックスは水と此方も正反対だ
ただし目付きはお互い鋭く負けん気も強い
混ざらない水と油のようだ
試合開始と同時にアンナが炎の槍を飛ばすとフェリックスは氷の槍で相殺する
アンナの炎が蛇の形になり蛇が身体をうねらせながら地を這う様にフェリックスへと向かえば
フェリックスは水で蛇を作りまた相殺する
そんな戦いを見ながら
ところでフェリックスって確か英語だとフェニックスって意味だよな?なのに水魔術士で火属性は使えないってなんだかチグハグだよなぁ〜、などと本当にどうでもいい事を考えていた
そしてアンナは水色の髪と蒼色の瞳でガンガン炎を出す、2人共、チグハグな感じがよく似ている、似たモノ同士だな、などと更にどうでもいい事を考えていた
属性が正反対の魔術士の戦いは千日手になるかと思われた時
フェリックスが切り札を出す、あの氷柱だ
飛んできた氷柱に向けアンナが炎蛇で迎撃しようとする
互いの魔法がぶつかる直前に氷柱が分裂して7本の氷槍に分かれて2本は炎蛇に飲み込まれる様に消えたが残りの5本がアンナを襲う
アンナはその氷槍に対応出来ずに避けようとするがそのうちの1本がアンナの左腕を貫いた、他の4本は審判が土魔法で撃ち落として
「そこまで」と試合を止めた
俺は良く咄嗟に打ち落とせたなと審判を務めていた先生を見ていた、実はラインハルトもバレットで撃ち落とそうと魔法銃をアイテムボックスから出したが間に合わなかったのだ、審判の先生はノアと言う中肉中背の男性だった
アンナはすぐ学園の回復魔法が使える魔術士に治療された
フェリックスはアンナに近づいて
「すまない、流石にやりすぎた」
「別にイイわよ、ヤバそうな氷槍は先生が撃ち落としてくれたし、私だって本気で魔法を打ってたしね」
「それにしても、何アレ?途中で分裂するなんて見た事無いんだけど?」
「俺の奥の手だ、ラインハルトの使うスキル魔法からヒントをもらって練習した魔法だ」
「え?あんな事ラインハルトくんも出来るの?」
「ああ、ラインハルトのスキル魔法は俺のよりエゲツないぞ」
「・・・そう、なんだ」
俺のいない所でそんな会話をされていると思っていない中で俺の試合が始まろうとしていた
マクシミリアン対ラインハルト戦
マクシミリアンは黒髪で瞳は茶色だと聞いた事があるが常に前髪で隠れてるので見た事は無い
王国南西部の街の領主で男爵家の次男坊らしい、彼は初めビクターの仲間候補だったが、俺の入学が決まり候補止まりだったとビクターから聞いていた
体格は平均的で良く言えばバランスが取れている、自主練などでは余り自分を出さない、内向的な人物だ、だが剣の腕は学年でもトップクラス、エミリーにも引けを取らない、魔法は身体強化の支援魔法が得意だが放出系は不得意のようだ
試合が始まると俺もマクシミリアンも自身にバフをかけ相手に向かい飛び込む
俺は短刀の二刀流、マクシミリアンは両手持ちの剣だがエミリーの剣に比べると15〜20センチ程短い
互いの武器で相手に打ち込む俺は短刀を風魔法で属性強化して、スピードを上げ手数を増やすがマクシミリアンは剣1本で俺二刀流の手数を封殺する
剣1本なのに隙が無い、何処に打ち込んでも剣で俺の短刀がいなされてしまう、俺は一旦距離を取り様子を伺おうとしたが今度はマクシミリアンが距離を詰めて来る
離れて魔法を打たれるのを嫌ったのかと考えて短刀の柄をマクシミリアンに向けウインドスラッシュを飛ばすと剣で切り裂いた、剣の間合いからの魔法攻撃を容易く防ぎ、逆に反撃をして来る
舐めてた訳じゃ無いが近接戦闘では勝てなさそうだ
俺はスキルの壁を三枚出して無理矢理距離を取る
距離を取る事に成功した俺は一瞬魔法銃を使うか、考えたがアレを人に向けるのは躊躇われた
魔法銃を使うと属性付与も出来る上に、魔石によって属性付与をしなくても威力も上がり、何より連射が簡単になるのだ、引き金を引けばイイだけだから、それにリコイルも無いしね
素手で構えて撃つ速度に比べ軽く倍の速さで撃つ事が出来きてしまう、なので今回は無し
ただ素手でのバレットは撃つ、撃たなきゃ負けそうだ、俺は右手の短刀を鞘に戻し片手で構えてバレットを撃つ
マクシミリアンは通常を遥かに超える速度で飛んでくる弾丸に驚き、俺が作った壁に向かって飛び隠れた
剣と銃の市街戦か!ウォール&バレットの異種格闘戦って感じか?俺はテンションが爆上がりしながらも、逃げた!、ランダムに逃げるそして、逃げながら更に壁を作りたまにバレットを撃つ
マクシミリアンは唖然とする
気が付けばあちこちに壁が出来ている、しかも壁は高さ、幅がバラバラでラインハルトが今どこにいるのか完全に見失っていた
俺は満足するまで壁を作るとまた二刀流に戻って隠れながらマクシミリアンを追い詰める
ゲームで散々やり込んだ戦術だ頭が覚えている
なるべく足音を殺して、逆にマクシミリアンの足音を聞き逃さない様に注意しながら移動する
コレを見ている生徒や先生達はどんな顔をしてるのか見たかったが流石に自重した、ところで審判は俺達を見つけられているのか?疑問に思うが今はゴミ箱に捨てた
そして俺の狩りは最終局面に入る
マクシミリアンを捉えた、音では無く探査魔法でだが
俺の右斜め前、壁2枚挟んだ距離にマクシミリアンがいる、俺は静かに移動しながらもマクシミリアンを目視する事も出来た、相手は俺に気がついた様子は無い
当たり前だいくら剣の練習をしていたとしても、こんなケースを想定して練習はしていないだろう
ココは俺のフィールドだ!!
俺はマクシミリアンの背後を完全にとった、そして
マクシミリアンは壁を背にして、壁伝いに移動する
何処からバレットが飛んで来るのか警戒しながら、まさか俺がもうバレットを撃たないとは思ってもいない
突然、背中の壁が消えた、そして首には短刀が添えられている・・・
「参った」
マクシミリアンは両手を上げ降参のポーズだ
俺はマクシミリアンの背後を取ると壁の裏側に来るまで待っていた、マクシミリアンが此方に近づいてきているのは分かっている、後はその時を待ち壁を消すタイミングを測っていた
そしてマクシミリアンが俺の前(壁を挟んで)に来たタイミングで壁を消しそのまま右手の短刀を首に添えた
俺がスキルで作った壁は俺の認識で消す事が出来る、初めて壁を作った後に、コレこのままだと邪魔だなと思い、試したところ普通にMPを5消費する事で消去出来た
「ラインハルト君、何なのさこの戦いは?最初は普通の戦いだと思ったけど、どんどん壁が出来て、壁に囲まれたと思ったら今度は後ろにあったはずの壁が消えて代わりに君がいる、とんでも無いねラインハルト君は」
『ははっ、少し卑怯な戦法だとは思ったが、マトモに戦うと勝てなさそうだったからね』
「本気でスキルを使えば勝てたでしょ?」
『この壁もスキル内の能力だよ、それにバレットを強化して撃てば勝てるだろうけど同時にマクシミリアン君に大怪我させる事になるからね』
マクシミリアンとの話しが終わるとマクシミリアンは右の拳を出してきた、俺も拳を出して合わせる
それ以上は必要無かった
「おい、アンタはなんて戦い方をするんだい?あんなの反則だろ」と爆笑しながらバーネット先生が俺の肩をバンバン叩く
「審判のノアもアンタをしばらく見失ってたよ、多分アンタの探査魔法でわかったみたいだけどね」
なる程、今の俺が使う探査魔法だとバレるのか、俺の飛ばした魔力を逆に探知されるとか危な過ぎるな、今後バーネット先生に教えてもらうかと、相変わらず関係ない事を考えている
とにかく今日は満足だった、久しぶりにゴリゴリゲームをしまくった後の気分だ
そして俺はベスト4に残った
ここまで読んで頂き本当に有難う御座います
作者の私もこの話を書いていて1番楽しかったですw
楽しすぎていつもより少し長くなりましたが
読んで頂いた皆様にも楽しんで頂けたら幸いです




