14.合宿の終わり
国王や王妃、王女は護衛と共に王都へと帰って行った
俺の中にもやもやした想いを残して
その後の合宿でも今一つ集中力を欠いたままの参加にマリーナから注意を受ける事があった
新年の祝賀会でも、俺は1人上の空であったようだ
その辺の事はさっぱり記憶から消えていた
「父上から何か言われたのかい?」
ある日の夕食後に庭園を歩いていた時に王子に声をかけられた
『いや、・・』
「ラインハルトはそう言う所は本当に分かりやすいよね」
『そうか?』
「明らかにあの日から様子が変だからね、気がつくなって方が無理なぐらいさ」
『・・・』
「何を言われたかは知らないが、ラインハルトは気にしなくて良いんだよ、その内容に私が関わっているならば、それはきっと、私自身が解決するべき問題なんだ」
『内容の想像は付いているんだな』
「現状最大の課題だからな、国王が今この時に信頼出来る者に話す内容ぐらい王族なら想像は出来るものさ」
「そしてラインハルトへ話す場合には私が絡んでいるであろう事もね」
『本当に王族って色々考えているんだな、正直国王様なんかはもっといい加減な方だと思っていたよ』
ビクター王子は苦笑いで
「いい加減なのは否定出来ないね」
「だから前にも言ったがラインハルトはラインハルトのやりたい事をやれば良いのさ」
「何かに縛られる必要なんてラインハルトには無いんだよ」
『ビクター王子は?』
「私はすでにこの国に縛られているからね」
「残念ながら私はこの国の第一王子として産まれてきた、王族には王族のやらなければならない事があるのさ、責任と権利には必ず義務が付いてくる、本当なら貴族にも責任や義務が付いているはずなのだが、多くの貴族には権利しか頭に入っていないらしい」
『責任と権利そして義務か・・』
「ああ、詳しくは言わないがそれが出来ない者達には退場してもらうつもりだよ」
『問題にならないのか?』
「退場予定者の中には問題を起こす者も出るだろうね、最悪の予想を言えば国が割れる程の内乱かな?」
「もちろん、そうはならない様にはしたいが、コレばかりは相手の出方次第だからね」
『自分・・俺に何か出来るのか?』
「ある・・だろうね、ただ私はこの件にラインハルト達を巻き込みたくは無いんだよ」
「ラインハルト達とは普通に親しい友人としての付き合いを私が老人になるまで続けたいと思っているんだ」
「たからラインハルトは気にしなくても良いんだよ」
『解った、俺は俺のやりたい事をやる、その事に俺はもう迷わない』
「ラインハルトはそれで良いよ、それとは別にラインハルトが自分を俺と言い直した様に私の事をビクターと呼んでくれる様になると嬉しいな」
『解った、公の場以外では今後はビクターと呼ばせてもらうよ』
「ふふっ、嬉しいね」
俺はこの時にどの様な形になるかは解らないがビクターの支えになると自身に誓った
そしてビクターを支える為には、俺1人では無理だ、仲間が必要だ、俺と同じ様にビクターをそして、ビクターが支えるであろうこの国を一緒に支える為の仲間が・・
合宿最終日
俺達はマリーナに呼ばれ、兵士達の練習場に来ている
「さて、寂しいけどこれから最後の訓練をしましょう」
『ココで?内容は?』
「もう少し待って、すぐに来るはずだから」
そこにマティアスが現れた、何故か黒狼達と共に、しかもマティアスは完全武装でだ
「来たわね、では始めましょうか、内容は・・」
「私達〈鉄壁〉対 貴方達〈城壁〉よ」
「人数は差があるけど、まあハンデ戦みたいなものね、ただし私とラインハルトはスキルの使用禁止ね」
「後、これ以上は危ないと思ったら両手を上げて戦線を離れなさい、コレを各自で判断するのも訓練の内よ、何か質問はある?」
『黒狼達は?』
「彼等はただの見物人よアーデルハルトもね」
アーデルハルトは
「僕も参加したい!!」
「駄目よ、コレはパーティー対パーティーの戦いだからね」
「そうだな、私達を・・鉄壁を越えていくのだろ?、城壁の君達は?、コレはその為の試練だ、私達にその可能性を見せてくれ」
俺は以外な展開に冷や汗が止まらない
まだ早すぎる、その思いは確かに存在するが、自分達がどこまで出来るのか、試したい気持ちも確かに存在する
『やるしか無い・・よね』
「そうね、こんな機会は滅多に無いわ」
エミリーが言うとみんなが頷く
ただやるなら全力で挑みたい
『30・・15分、時間が欲しい、戦う以上悔いは残したく無い』
「良いわよ、30分でもね」
『ありがとう』
俺達は練習場の隅に集まり作戦会議をする
「ラインハルト、マリーナ殿のスキル以外のステータスや得意な魔法は解るか?」
『おうじ・・ビクターならステは見えるはずだろ?』
「以前ある魔法でも隠蔽は可能だと言っただろ?、それが時空魔法だ、多分だがな、なのでマリーナ殿に関して少しでも情報が欲しい」
迷っている暇は無い、俺が知っているのはステと魔法全般的に不得意は無いって事だけだ、それを伝えるとみんな流石に苦笑いだ
「やはりマリーナ様は規格外だな」とフェリックス
「マリーナ様も問題だけど、とりあえずマティアス様の防御を抜かないと話しにならないわよね、魔法で注意を引きつつ正面からミハエルが側面からラインハルト君と私がマティアス様を攻めるのはどうかしら?」
正面から行けと言われたミハエルがわかりやすくひるむ
『難しいかな、此方が魔法を打てば、間違いなくマリーナが魔法で相殺するか魔法防御で防ぎにくるはず、下手に攻めればマリーナだけでなくマティアスのカウンターが来る、あの2人が作る防御線を崩すのは並大抵では無理だ』
『俺のバレットが使えれば可能かもしれないが・・』
「正直、話しを聞く限り私達に勝ち目は無い、ならば、おふたりをよく知るラインハルトに作戦を決めてもらい私達は今出来る全力で合宿の成果を見せる事が私達の為にこの場を、そして時間を作ってくれたマティアス殿、マリーナ殿に対する礼儀だろう」ビクターの一言でみんなが頷く
俺は頭の中で作戦を考える、コレは勝ち負けが大事な戦いでは無い、ビクターが言った様に成果を見せる為の戦いだ、マティアスとマリーナに俺達の可能性を見せる事が目的なら・・
俺は1つの案を提示した
みんなは俺の案に驚きながらも頷く
俺達は30メートル程離れて2人に向き合う
「覚悟は出来たみたいね」
『まあね』
「なら、見せてちょうだい、貴方達の成果と覚悟を」
このマリーナの一言が始めの合図になった
始まると同時にマティアスが前に出る
俺達は陣形を組む
先頭に俺
2歩下がって左右にエミリーとミハエル
更に2歩下がって左からリナ、フェリックス、ビクターの並びだ
上から見ると、俺を頂点とした三角形の形になる
マティアスは俺の15メートル前まで来て止まる
俺は自分に力、速度、防御力のバフを、ビクターはエミリーとミハエルに同様のバフをかけて、更にビクターが俺とフェリックスの魔力にバフをかける
ビクターは攻撃自体には向かないが支援、防御魔法の使用速度、制御能力は充分優秀だ
俺はマティアスに向かって仕掛ける
その後ろからエミリー、ミハエルが続く
更に後ろではフェリックスは俯きながら魔力を集中させる
俺が両手に持つ短刀でマティアスに向かい切り付ける
マティアスは当たり前だが盾で受け流す
そして俺にシールドバッシュを仕掛けるが俺は攻撃してすぐ右へと飛んで回避
そこに盾を構えたミハエルが突っ込み盾どうしでぶつかり合う
更にエミリーが左側から両手持ちの長剣でマティアスの足を狙って斬りつける
右側に飛んだ俺はマティアスに向かって風魔法のウインドスラッシュを放つ、するとマリーナが俺とマティアスの間に魔法障壁を張る
俺の魔法は魔法障壁によって弾かれ
マティアスの足を狙ったエミリーの斬撃はマティアスの剣に阻まれた、阻まれたがそのままエミリーはマティアスの顔に向け、剣で突きを繰り出す
マティアスは顔を傾けて突きを躱す
リナとビクターは5メートル程前に出て俺とエミリーの前に魔法障壁を張る
その障壁にマリーナの魔法アースニードルが俺に、マティアスのカウンターがエミリーにそれぞれ飛んてくる
リナとビクターの魔法障壁のおかげで俺とエミリーは何とか回避出来た、その間ミハエルは全力でマティアスと盾どうしで押し合いマティアスの盾を押さえてくれている
そして俺達の本命の攻撃、フェリックスが3メートルを超える氷の柱をマティアスに向け放つ
マリーナは油断無くマティアスの前に魔法障壁を張る
ミハエルはフェリックスの魔法と同時に押し合いをやめて左に避ける
フェリックスの氷柱が魔法障壁の2メートル程前で5本の氷の槍に分かれた、これは俺が見せた土属性バレットの散弾からヒントを得てフェリックスが練習していた魔法だ
この5本の氷槍はそれぞれ時間差を付け魔法障壁に向かう
最初の2本は障壁によって弾かれ消えたが障壁も同時に消滅する、残った3本の氷槍がマティアスを襲う
マティアスは1本を盾で弾き飛ばし、もう1本を剣で砕いた、そして残りの1本がマティアスに当たると思った瞬間に氷槍が消えた
マリーナが放った炎の矢でお互いが相殺されてしまった
ここまで約90秒の出来事だ
『俺達の負けだよ』
俺は素直に負けを認めた、
正直もっと卑怯な手をつかえば戦い方はある
例えばマティアス、マリーナは決して本気を出してこない、俺達に大怪我をさせる気は無いだろうからね
それを逆手に取り此方は全員で防御無視の波状攻撃や仲間に怪我人出る事を覚悟したミハエルが盾を抑え込んでいる状態で残りのメンバーがありったけの魔法を放つとかね
ただそんな事は出来ないし、する気もない、何よりそんな事をしても2人が認めてくれるはずもない
よって俺達は真正面からなるべく自分達の持ち味を出した上でフェリックスの一撃にかけた超短期戦を選択したのだ
まぁ本気だったらミハエルが力比べでマティアスの盾を押さえ込むなんて出来ないし
マリーナの時空魔法で5本の氷槍なんて消されるんだけどね、逃げたキラーアントやリザードエイプを倒した時空の斬撃なら氷槍より早く飛んできて迎撃するなんて簡単なはずだからね
とにかく俺達は全力を出し切れたのは間違いない
清々しい程通用しなかったけどな
「ふむ、最後の氷柱の魔法は良かったな、まさか途中で5本の氷槍に分かれ攻撃してくるなんて初めて見たよ、前衛もそれぞれ自分の役割を考え行動出来ていた、残りの2人、殿下の支援魔法と防御魔法の使用する速度、精度も良かった、リナさん?だったよね君も防御魔法もしっかり出来ていた、そして怪我人が出た時のために回復魔法の準備もしてたね」
「あら?貴方にしては優しい言葉ね、貴方に厳しく言われたら、どう慰めるか考えていたのに」とマリーナが笑い、マティアスは苦笑いを浮かべ
「俺はそのままを言っただけだ」
「そうね、私もあの氷槍で障壁を消された時は少しあせったわよ、アレを初見でくらって完璧に対応出来るパーティーは多くは無いわね」
やはりフェリックスのあの氷柱から氷槍に分かれる魔法は高評価だ、初めて見た時は俺も驚いた
「貴方達、城壁メンバーの合宿の成果は充分見せてもらったわ、これから先も油断や慢心せずに成長して私達、鉄壁を越えていってね」
見学していた黒狼のメンバー達が、アイツら俺達より強くない?などと言っていたが
アーデルハルトは目を輝かせ
「兄さん達凄かった!!お父さんとお母さん相手にアレだけ戦えるなんて本当に凄いよ!!」
と、いつも通り惚れ惚れする顔で言ってきた
こうして俺達の合宿が終わり、学園生活に戻る事となる
ここまで読んで頂き本当に有難う御座います




