13.新装備と目的
合宿は順調に進んでいる
週のうち5日は練習、2日は実戦、学園入学前まで俺がやっていたスケジュールだ
皆んな自身の装備は持って来ている
実戦訓練も順調、パーティーのバランスは悪くない上にアーデルハルトも前衛として参加している、マリーナは今の所は指導のみ
俺はこの合宿中は前衛として実戦に参加している、理由はバレットを撃っていると他のメンバーが練習にならないとマリーナに言われたからね
まぁ、相手はDランク以下の魔物なので属性強化のバレットを撃つとオーバーキルになるからな
この辺はバーネット先生の指導の賜物だ
バーネット先生の個人指導を受けて属性魔法と魔力の制御範囲の能力が格段に上がった
これに関してはマリーナも驚くほどで、魔法練習の時にメンバーやアーデルハルトも一緒に俺がバーネット先生から学んだ内容を噛み砕いて説明した
俺は前衛に入る時は魔法も壁も出来るだけ使わずに短刀を逆手に持った二刀流で遊撃か支援魔法で自身を強化しての回避盾をしている
遊撃は元々木の陰からバレットを撃つ事で魔物を倒していたし前世でのゲーム〈ウォール&バレット〉で壁から壁へ隠れながら移動して相手を奇襲するスタイルでプレイする事が多かったので何となくしっくり来る(次に多かったのはスナイパー役と両極端だった)
逆に回避盾役は支援魔法を使っているとは言え俺自身は紙装甲なのでかなり怖い、防御装備は入学前と同じ革の装備だ、装備が重くなると動きづらいので
ただ武器は王都にある、リナの親父さんがやっている工房で短刀を2本打ってもらい使っている、刃渡りは40センチ程で刀身の厚みは約1センチと厚みのある日本刀の脇差しをイメージ、それを親父さんに説明して特注で打ってもらった一品だ
ロッドは使わなくなりその代わり短刀の柄に小さな魔石を取り付け、更に魔石を砕き粉状にした物を滑り止めの組紐や柄自体に混ぜ込んで魔力の通りを良くして、ロッドに持ち替えなくても魔法が使える様にした
更に刀身に少量のミスリルを混ぜた鋼で打たれており刀身に属性魔法を乗せ攻撃力を高める事が出来る、この短刀2本でロックドラゴンを討伐して、手に入れた素材を売った分の金額が消えた、高くついたがそれだけに性能も高く満足している、リナの親父さんにも面白い物を作らせてもらったと喜ばれた
そしてもう一つ新たな武器が手に入った
それは魔法銃だ、形はリボルバー式の拳銃、前世の漫画に出て来る主人公で、女性に大きなハンマーで殴られても死なない特技を持つ新宿住まいの男性が持っている銃に似ている
これは〈ウォール&バレット〉が熟練度2に上がった事で増えた新しい能力で〈ガンスミス〉と言う
ただコイツはかなり曲者な能力で自分の意志で魔法銃を作る事は出来ない、レベルアップや強力なモンスターを討伐した時に低確率でドロップするらしい、もちろんどんな性能の銃が出るかも分からないピーキーな能力だ
初回は確定ドロップなのか?、熟練度が上がった時に急に目の前に現れてかなり驚いたよ
魔法銃(今後はリボルバーと表記)は専用のホルスターをこれまたリナの親父さんに相談して作ってもらい、普段はホルスターに入れてアイテムボックスにしまっている、今はホルスターを腰の後ろに固定して短刀は左右の腰に挿している
そしてこの銃はリボルバーの中にあらかじめ魔石を入れる事でその魔石の属性を勝手に付与して撃つ事が出来る、リボルバーの穴は3つ、つまり3種類の属性効果のある魔石を手に入れる事が出来ればその3種類の属性バレットがリボルバーを回す事で撃ち分けられる(実際の銃とは違いコイツは撃つ際にリボルバーが回転する事は無い)
などと脱線しながらも戦いは進む
夕方になる頃には皆んなでハウンドウルフを12匹、マッドベアーを8匹、キラーアントを26匹、アーミーワプスを42匹倒した・・・やりすぎだ
アーミーワプスは巣を見つけた事でこの数となった、アーミーワプスの巣は木の半分から上を全て覆い尽くす形で作られていて直径が2メートルを超えた物だった、そしてこの巣からは非常に美味しい蜂蜜が取れる為、マリーナが絶対に持ち帰ると、この日唯一参戦して来た
もちろん全ての獲物はマリーナのアイテムボックスに収納されている、俺のアイテムボックスでは入り切らないからね
*
合宿も2週間近くたち実戦訓練も4回行った
王子やミハエル、リナが主に防御を受け持ち、アーデルハルト、エミリー、フェリックス、俺が攻撃を受け持つ、更にアーデルハルトが入る連携面でもかなり良くなっていると思う
アーデルハルトは片手剣を右手に持ち、直径45センチ程のラウンドシールドを左腕に付け、状況を見て防御側にも回ってくれる、まさに正統派の万能タイプだ、俺は邪道派?の万能タイプとミハエルに言われた
ミハエルが俺と弟を比べて酷い事を言って来る様になってしまった
そして年末が近づき流石に王都に戻らないといけない国王様の一団は明日出発する
その別れの晩餐会には俺達パーティーメンバーはもちろん、俺の家族も要請され参加
その席上で国王が余計な事を言い出した
「ラインハルト達パーティーの城壁とはマティアスとマリーナの鉄壁にあやかり、またその鉄壁を超える事を目指して付けた名だそうだな?」
ただでさえ居心地が悪い晩餐会で更に爆弾を落とすとは、もしや国王の適正は爆弾魔なのでは?
俺は苦笑い、俺以外のメンバーは少し恥ずかしそうにしている
「まあ!皆んなは私達を目標にしてくれてるのね、少し恥ずかしいけど、嬉しいわね」
「ああ!ラインハルト達なら私達を超えられるさ、頑張ってくれ」
2人から言葉をかけられ嬉しそうな表情に変わるメンバー達、そこに国王が余計な一撃を放つ
「ビクターは我等、家族に褒められるよりマティアスやマリーナに褒められる方が嬉しそうだな」
とニヤニヤしながら言うと王子も負けずに
「確かに、父上は私の事を玩具か何かと思っているのか揶揄う様にしか褒めて頂けないので、マティアス殿やマリーナ殿に褒められるのは素直に嬉しく感じますね」
「貴方が普段からビクターを揶揄い過ぎるからこんな事を言われるのですよ」
と笑いながら王妃が言った
どう反応すべきか考え、周りが苦笑いしている中マティアスだけは真剣に頷いている
父さんはきっと学園時代から国王に揶揄われていたんだな・・しかし国王は誰彼構わず揶揄うのか、周りで働く人達も大変なんだろうな・・
「ラインハルトよ、何か私に対して良からぬ事を考えていないか?」
「いえ!、その様な事はありません」
「そうか?なにやら不穏な事を考えている気配がしたのだが?」相変わらずニヤニヤと笑いながら言った
無駄に鋭いなこの人
ただやはり国王は誰彼構わず揶揄う人だと認識した
そんなこんなで晩餐会も終わると何故か俺だけ国王から呼び出された
個室にて国王の対面に座ると
「ラインハルトよ学園生活はどうだ?」
俺は質問の意図が分からずに曖昧にこたえる
『色々な事が学べ、有意義に過ごさせて頂いております』
「そなた口調が硬いな、まあいいか、貴族達とはどうだ、上手くやっているのか?」
『はあ、良く関わるのはミハエルとエミリーだけなので何とも言えませんが特に悪いと言う事も無いと思っています、今後の事は分かりませんが』
国王は真面目な顔になり
「うむ、マティアスはな、学園にいた時に貴族からその優秀さを妬まれてな、私が学園にいた時は間に入ったりしたのだが、私が卒業後はかなり揉めたようだ」
「ミハエルやエミリーの様にマトモな者もいるが大半の貴族共は正直問題ばかりで私でも手におえんのが現状だ、そしてそんな状況を変えたいと考えマティアスに私の側近になり変革の為にチカラをかせと言ったが断られてな」
俺はいまだに話の意図を汲み取れずにいる
「貴族共がこのままではいずれ王国が崩壊する、今はまだ何とかなっているが、そのうちに国の地方領から問題が出て来るだろう」
「貴族共には馬鹿が多すぎてな、領を収める事すらマトモに出来ない馬鹿がうじゃうじゃいるのだ」
「この事はビクターも解っている、しかし解決は1人では出来ないのだ、私はマティアスに断られてしまったが、ラインハルト達はビクターを助けてやって欲しい、もちろん今すぐ答えの出る話しでは無いと解ってはいるが、今から少しでも考えておいてくれんか?頼む」
と言うと国王が軽くではあるが頭を下げた
『やめて下さい、頭を上げてください』
俺は咄嗟に声に出す
「こんな事をまだ子供のそなたに言うのは流石に気がひけるが、ビクターは本当にラインハルト達を信頼している、だがビクターは王国の問題に対してそなたや他のメンバーに助けを求める事が出来ない、ビクター自身は助けを求めてはいけないと思っている、自分がやらねばならぬ事に巻き込んではいけないと考えておるのではないか?、と私は思っている」
「その事をラインハルトにも知っておいて欲しかったのだ、ビクターが1人になってしまわないうちにな、それが今回リブムントに来た目的だ」
「ラインハルト、そなたには他の者には無い力が有る、魔法の能力だけでは無い、周りを引っ張って行く事が出来るカリスマがある、少なくとも私はそう見ているし多分ビクターもそう思っている」
「その年でそう思わせるだけの力が、ラインハルトそなたにはあるのだ、考えておいてくれ」
そう国王に言われ俺は
『考えさせて下さい』
一言だけ言って退出した
王国の変革なんて俺には荷が重すぎる
思わず呟く
『なんで俺なんだよ・・』
ここまで読んで頂き本当に有難う御座います
投稿時間がかなりバラつきますが
今後もよろしくお願いします




