11.制御と奥義
自主練をする事になり場所が問題になる
学園の施設はかりられるのか?
今は俺達だけだから、小さなスペースがありさえすれば問題無いが、今後他の生徒達が参加してくるとある程度しっかりした場所、施設が必要になるだろう
『バーネット先生に相談してみるか』
「私も付き合おう」
ビクター王子が後ろから声をかけてきた
『王子、いつからいたのですか?』
「ラインハルトが施設がどうのとブツブツ独り言を言っていたあたりからだよ」
ほぼ最初からだ
「バーネットの所へ行って、自主練の為に施設利用の許可を貰いに行くのだろう?」
「私も同行した方が話しが早いだろう」
俺は了承して王子と共にバーネット先生に会いに行く
「あら、殿下とアンタが一緒に来るなんて何かあった?、それともただアタシに会いたかっただけ?」
バーネット先生は俺達の分までお茶を用意しながら悪戯っ子の様に笑う
『バーネット先生にご相談がありまして、実は今日の放課後からパーティーのメンバーで自主練をする事にしたのですが学園の施設を利用する事は可能でしょうか?』
バーネット先生は少し考えて
「実際に魔法を放っての練習?」
『とりあえずは魔力の制御などの基礎練と武芸の基礎練ですね、ただこの先魔法を放つ訓練もするつもりです』
・・・
「なら予定の無い日は魔導練習場を20時まで利用出来るように施設管理部へ連絡しておきます、それで良いかしら?」
「助かる」
ビクター王子が言うと
「良いのよ、放課後に練習場を使う生徒なんて、最近では10年以上いなかっただけで前は普通に貸し出していたもの」
「因みに、以前練習場を借りていたのはアンタの父親、マティアス達だね」
『バーネット先生は父さんの事も教えてたんですね』
「長い事ココにいるからね」
驚きながらも、まぁそう言う事もあるよなと思っていると
「アノコは魔法関係以外は本当に優秀だったわ、武芸全般はもちろん、座学もね、残念ながら適正が魔法関係じゃ無かった上に放出系の能力がからっきしだったから魔法の授業の成績は良くなかったけれどアノコの努力の量はアタシの知る限り1番ね、だから良く覚えているよ」
俺はマティアスが王都の学園を卒業した事は聞いていたが、学校生活などは特に話しをしてもらっていなかった、貴族との関係が面倒だった事は聞いたけどね
『他に父さんの事で覚えている事は有りますか?』
「ん〜そうね、人望はあったわね、口数は少ないけど行動で同期の生徒達を引っ張る存在って感じだったわ、だからアノコが卒業後に冒険者になった事、更にはソロで活動していると聞いた時は驚きもしたわ」
「でも3年ぐらいしてパーティーを組んだって聞いてからは凄い勢いでAランクまで登っていったわね、まあパーティーを組んだって言ってもアンタの母親との2人だけだったけどね」
「今はリブムントで冒険者ギルドに勤めているんでしょ?、それに以前王都にも来たらしいじゃない、なんでアタシの所に顔を出しに来ないかね?」
『え〜と、父さんに手紙で言っておきます』
俺は苦笑いで言うと
「そうね、手土産持参で来る様に言っておいて、その辺はトーマスの方が抜かりない感じね、アノコも優秀ではあったけど授業中は寝てるし実習でも自分は手を抜きながらも成績は常に上位をキープしていた、しかも今でも毎年必ず手紙と珍しいお酒なんかを送って来るわ、王様になって会いに来る事は無くなったけどね」
そりゃ王様の事も知ってるよな・・ん?
『2人を比べるって事は王様と父さんは学園内で知り合いだったんですか?』
「学年はアノコの方が1コ上・・ああトーマスの事ね」
「1コ上だったけどアンタの父親は有名だったから殿下の父親が何かと気にかけていたわね」
名前で言えば済むのに、と思いながらも俺の知らない父親や国王の話を聞くのは楽しかった、ビクター王子は苦笑いだがね
とりあえず自主練場所が確保出来たので、バーネット先生にキリの良い所でお礼を言って退出した
放課後
城壁のメンバー揃って魔導練習場に行くとバーネット先生が練習場前で待機していた
『何かありましたか?』
「アンタ鍵を持って無いだろ、だからアタシが持ってきてやったのに、何かあった?は無いだろうよ」
『あっ!確かに放課後に扉の鍵が開いてる訳無いですよね』
「アンタ賢そうなのに案外抜けてるね、アノコはその辺はしっかりしてたよ、終わったら中央棟の1階に管理部の部屋があるからそこに鍵を返しな、それと時間は20時までだが食事や風呂の時間を考えなよ、女子もいるんだからね」
この学園は大きな校舎が3棟あり1年生は右棟、2年生は左棟、3年生は中央棟になる、左右の校舎の裏には男女別の寮、中央棟の裏には魔導練習場、武導練習場が並んで建っており更にその奥に大講堂がある
3棟のうち中央棟は前に突き出す形で建てられ全体を上から見ると3棟の校舎と男女の寮、大講堂が六角形に配置され魔導、武導の練習場が六角形の中央に配置されている
俺達はバーネット先生から鍵を受け取り練習場に入る
今日は魔力制御の練習をする予定だ
『じゃあ始めようか』と言うと
「その前に聞きたいのだがラインハルトは魔力制御の練習でどんな事を考えながらやってるんだ?」とフェリックスが聞いてくる
『え?どんな事って魔力の玉を身体の中の鳩尾に作るイメージをしてそれを身体中に動かす感じかなぁ?慣れてきたら速度や玉の大きさや玉の数を増やして、血液が身体を巡る様にいかにスムーズに動かせるかを考えながらやるよねぇ?』
「「「「「え?」」」」」
「イヤ!百歩譲って速さ、大きさは分かるが数を増やす?無理だろそんなの」
「僕は速さを変えるのも無理だよ」
「私も・・」
「もしかしてラインハルト君は玉の数を増やした上で速度も変えるの?」
「そんな事、絶対普通じゃ無いからなラインハルト」
フェリックスだけじゃ無く全員に否定された
『誰か魔力視が出来る?』と聞くとフェリックス、リナ、ビクター王子が手を上げた
『なら俺の魔力の流れを魔力視に全力を注いで見ていて』
『まずは・・普通はいいか、大きさを変えて・・変えながらするよ』
「え?、え?本当に?大きさが大きくなったり小さくなったりしながら普通に循環してる」
「ああ、だけど魔力が安定して無いからでは無く、大きさを変えながら非常に安定して循環してるね」
「正直・・気持ち悪い」
『次は数を増やすよ』
「「「増えた!」」」
しばらく循環させ
『最後は更に数を増やして、それぞれ大きさを変えて、そんでもって動きと速度も変えるね』
「「・・・気持ちわるっ!!」」
「・・4個の魔力の玉が不規則に循環して・・速度も大きさも本当にバラバラ」
『王子とフェリックスは気持ち悪いとか言うな!!』
『とまあ、こんな感じだね、皆んなも慣れれば出来るから練習してみようか』
「・・・ムリよ、魔法系の適正持ちが驚く事が出来る訳無いじゃない」
「うん、僕には出来る未来が見えないよ」
「イヤ!アレは適正とか関係無く無理だと思うよ」
エミリー、ミハエルだけじゃ無く王子まで・・
フェリックスとリナは話す事もせず放心してる
『練習しに来て無理とか言ってても始まらないよ』
『とりあえずエミリー、ミハエルは普通にやってみて、ゆっくりで良いから出来るだけスムーズに動かすイメージで』
『王子、フェリックス、リナは普段より少しでも早く、尚且つスムーズに!はい、やってみよう』
俺が思っていたよりも魔力制御は皆んなから大切だと思われていないようだ
マリーナは以前バレットを撃った時、マティアスに魔法はイメージが大切だと話したが、1番大切とは言って無い
実際マリーナは魔力制御こそ魔法を扱う上で1番大切だと俺に言った、だから俺は基礎の基礎である魔力制御がある程度出来る様になるまで魔法、スキルの使用を禁止されていた
魔力制御が安定しないと魔力の暴走や暴発につながり、結果的に成長を止めてしまうとマリーナは考えている
マリーナは多分この国で1番の魔術士だ、そのマリーナとその他の魔術士との考え方にこれほどのギャップがある事に驚いた
そしてようやく解った、バーネット先生との話した時もなんで俺は頑なに納得出来ずにいたのか?それはバーネット先生自身が大切だと思っていても1番大切だとは理解していないからだったんだ
マリーナに聞いた事がある、エルフは生まれ付き魔力が高くMPも人間より多い、魔力制御なども感覚だけで出来る人が多いらしい、多分バーネット先生もそのタイプなのだろう
因みにマリーナによると人間の一般的な魔術士か持つMPは300〜400、500以上あると国軍の魔法団に推薦されるレベルらしい、一方エルフは平均で600、能力が高い人は1000越えの猛者もいるらしい
マリーナが約750程、エルフは魔力お化けだ
俺は明日改めてバーネット先生と話しをする必要があると心の予定表に書き込み意識を皆んなに戻す
魔力視で皆んなを見ると
エミリー、制御が安定せず速度、循環のスムーズさ共に苦戦中
ミハエル、エミリー程では無いが制御が安定していない、速度、循環も同様
リナ、彼女も制御が若干不安定、速度、循環は上記2人よりはかなり速いしスムーズだが適正を考えると物足りない
フェリックス、制御は現状では及第点、速度も及第点だが循環のスムーズさはあと一歩
ビクター王子、現状全てが他のメンバーに比べて高水準、慣れてくれば近いうちに速度だけで無く魔力の玉を1個増やせるだろう
フェリックスより王子の方が基礎が出来ているのは驚いたが、環境の差も有るかもしれない、王子と商人の子だ普通に考えて差があって当然だな
17時過ぎから始めて15分程経ったが皆んなの集中力が途切れ始めた事を魔力の動きから感じた為、制御練習は終わりにした
皆んな15分で汗だくだ、俺にもそんな時が有ったな
今の俺は朝、晩で30分ずつ複雑化した制御練習をしている、因みに朝は5時起きでランニング、素振り、制御練習を各30分ずつやるのがルーティンになっている
夜は30分の制御練習と残ったMPをギリギリまで使って寝る、筋トレと同じで負荷をかける事でMPの回復力と量が増えやすくなる、使い切ってはいけない、ギリギリの負荷をかけるのがポイントだ、筋トレでも負荷のかけ過ぎは怪我につながる、長期的に見ればマイナスにしかならないのと一緒だ
まぁマリーナに教えられただけの事だけどね
制御練習を終えて俺は感じた事をそれぞれ伝えた
俺がしているルーティンも教えてみると
「アレを毎日30分ずつ2回?・・ラインハルトは本当に人間か?化物過ぎるだろ」
うん、俺は心が広いから多少の失言は笑って許せるよ・・(怒)
「制御のレベル差はアレだが私達もラインハルトと同じ様なメニューをこなせば同じ様になれる・・よな」
ビクター王子は自分で言いながら自信なさげになっていくのはどうなの?
『大丈夫、出来る様になりますよ』
・・・・
完全に沈黙してしまった
其処で俺はマリーナに教えられた魔力制御の大切さを少し誇張気味(決してウソでは無い)に話した
「魔力制御こそ魔法の基礎にして奥義だと!!」
うん、フェリックスは単純でありがたい
大事な事なのでもう一度言うが〈ウソでは無い〉
ただ少し言葉が足りないだけだ
1番大切なのは間違いないし制御の熟練度が上がれば消費されるMPは減るのに威力は下がらない
魔法の威力を上げるにはより多くのMPを込めるか基本の魔力を上げなければならないが
魔力制御で減ったMP分足して魔法を放てば元々の消費量で高い威力の魔法が放てる、しかも発動までの時間も短くなる、制御が上達する事に悪い事は1つもない、良い事しかない
奥義と言っても差し支えないはずだ(多分)
そんなやり取りで皆んなのモチベーションだけは何とか回復させ、今後は朝晩続けるように言い聞かせた
その後はお互いの課題を踏まえて話し合った
そして話し合いの結果、朝晩だけで無くしばらくは自主練でも制御練習をする事になったのは前向きになったと考えていいよね?
魔導練習場の時計を見ると18時半だった
少し早いが今日は初日と言う事もあり
練習を終わりにした
魔力制御の大切さは十分皆んなに伝わった事だろう、この事が後々大変な事態を招くとか、招かないとか
信じるか、信じないかはあなた・・・
ここまで読んで頂き本当に有難う御座います




