第3話 災いの樹海にて
「うわぁ、湿気えぐー…。汗はかかないけど体感的には暑くて参っちゃうよぉ…。」
樹海に入ってからめっきりとモンスターの数が減った。と言うより遠くからこちらを見ている物が多い。
「初期スポーン地点のモンスターと比べて用心深いのか。せっかくだから幸運値100の力を試してみたいのだけど…。もう!照れ屋さん達め!」
幸運値とはステータスにある'Lack'と書かれているやつだ。職業を決めた段階でマイナス100から100まででランダムで決まる。僕は勿論マイナス100だ。スライム相手に与ダメ0の真相はこれだ。幸運値はアイテムドロップ率に関係してくるのだが、それだけでなく戦闘時の会心発生率にも影響する。0なら会心は発生しない。100なら絶対会心。マイナス100は確定攻撃失敗。とまぁ、スライム戦での結果はこれによるものだった。しかし、伝説級"反逆者"により幸運値はマイナス100から100に変化し、全てが会心。男のロマン戦士となったのだー!
ドドドドドド
と突然辺りに地面を何かが這いずり回るような鈍い音が響き始めた。音は次第に近くなりやがて止んだ。
「…どれだけやれるか試してみよう…!」
パァァンッ!
地中から全長20メートルはあるであろうムカデ型モンスター、デッドピードが姿を現した。
「キシャァァアッ!!!」
「怖ぇぇぇええ!!!」
そもそもでかいムカデとか全人類が苦手だろ!!
「シャァァア!」
ブンッ
デッドピードは自らの身体をムチのようにこちらめがけて振り回してきた。
「こっわ!」
当たったら確定で死ぬなぁとか考えながら、必死に避けていた。
当たらないことに痺れを切らしデッドピードは叫び始めた。
「キシャァッ!」
デッドピードは巨大な牙を生やした口から猛毒な息を吐き出し、周囲に撒き散らした。
「毒ってまずくね!?えっちょ!…うぐっ…苦し…」
しかし身体に異変など何一つ起きていなかった。それどころかエネルギーが溢れてくるのを感じた。
「くない…!そうか"不屈"か!」
「ッ!キシャッ!」
「今度はこっちの番だぜ!?」
とりあえず近づいて…
ヒュン
自分が想像するより遥かに速く動く事に驚いた。
「うっお!速ぁ!」
しかし、すぐさま冷静になりデッドピードみがけ飛びかかり拳を振り下ろした。
ドゴォォォォォォォオン パラパラ
絶句したデッドピードはおろか周囲の木々までが消滅してしまったのだ。
「…あれ?これ超強くない?」
突然魔法陣が現れ、宝箱?のようなものが出現した。
「なんだこれ。中は…おぉ!」
中にはデッドピードを模した装備1式が入っていた。
「大したモンスターじゃなかったな…。1エリアに一体はエリアボスがいるらしいし探してみるか。」
エリアボスとは特別種と呼ばれるモンスターのことである。
【超級毒系統魔法の獲得条件を満たしました】
〜
【プレイヤーの皆様にお知らせします 特別種 '死を操りしデッドピード' は本時刻をもちまして討伐されました】
災いの樹海にてデッドピードの討伐と樹海にドーナツのようにポッカリと開けた大地の事は世界中のプレイヤーの間で話題になった。
「デッドピードって、あの猛毒吐いてくる特別種だろ??」
「なぁ。あれやったのランカーらしいぞ。」
「聞いた聞いた!すげぇよなぁ!恐らくだが爆弾道化師の仕業じゃないのか?」
「え?あれはクラン"強欲な鷲"の大規模な訓練だとばかり…」
しかし、人々は知らない。推奨レベル80特別種、'死を操りしデッドピード'を倒したのは伝説級持ち(レジェンダリープレイヤー)の、シンだとは。