大団円
「ちょっと聞き逃したことなんですけど、いいですか」
ザ・キング・オブ・オーシャンズ・パラメモリアル・ガイアス3世を右舷にくくりつけた状態で東京湾の中に入る「桜」の艦上で、舞が派利教授のかたわらに立ってそう尋ねた。
「かまわんよ、何かね」
ザ・キング・オブ・オーシャンズ・パラメモリアル・ガイアス3世を舷側に見上げながら感傷にふけっていた派利教授は現実に自分を引き戻した小柄な女子高生を見下ろした。
「確か、教授はあれが食用となるには何か問題があるって言ってましたよね」
「うむ、とるに足りないことだがな」
そう言うと、派利教授は遠い目でザ・キング・オブ・オーシャンズ・パラメモリアル・ガイアス3世の頭部に目をやった。
「至上の美味をもつ魚。それだけを目指してわしはパラメモリアル・ガイアス・シリーズの開発をしてきた」
舞はウソでしょ、と思ったが、ここではそういうことを言わないのが礼儀である。
「しかし、その開発過程で細胞に大きな変化が生じた。そのときは大して気にも止めなんだが、それがその後の開発に必要な因子であること、しかし、食用魚には不必要な因子であることが判明した」
「その因子って言うのは・・・」
派利教授は言葉を切ると、しばらく無言でザ・キング・オブ・オーシャンズ・パラメモリアル・ガイアス3世を見上げていた。沈黙の時が過ぎ、彼らを見つけた華奈と阿蛇がこちらにやってくるのが見える。その時、突然、派利教授が乱杭歯の並ぶ口を開いて激高した。
「何故いかん、生命力が強すぎるがゆえに煮ようが焼こうが腹の中で再増殖を始める食べ物があってはいけないというのか!単に食したもののエネルギーを吸い取るだけと言う代物ではないか」
「どこが問題ないって言うのよ!」
再び、舞のノーザンライト・パワーボムが炸裂し、派利教授の顔面は床にたたきつけられた。
「し、しかしだな、ダイエットには最適の・・・」
「んな訳がないでしょうがっ!」
「舞、落ち着きなさい!」
「んな力で締めたら、教授の首がおれるだろうが、落ち着けっ」
・・・・・かくして、科挙学園最大の食用生物であるザ・キング・オブ・オーシャンズ・パラメモリアル・ガイアス3世の亡骸は、学園に着くなり、あわれ原子分解処理となったのであった。
合掌
「でも、魚拓が採れたからいいもんね。岡野家の家宝にしちゃお」
「どうやって採ったんですの?そんなもの」