表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート『おままごと』

作者: 川住河住

「あい。どーぞ」

 砂場遊びが大好きな娘が泥だんごをくれた。

「ありがとう。パクッ! モグモグ! わあ、おいしい!」

 私が泥だんごを食べたふりをして笑うと娘も満足そうに喜んでくれた。


 公園の砂場に来るといつも脳裏に浮かぶ。

 仲のよかった女の子との楽しい思い出を。

 一人でさびしそうに遊んでいた彼女に私から声をかけたのを今でも覚えている。

 いじわるな友達はあの子を仲間外しにしていたし、親からもあの子といっしょに遊んだらいけませんと言われていた。けれど、せめて私だけは友達でいてあげたいと思った。

 私たちは砂場でおままごとをしながらいろいろなものを作った。

 三角形のおにぎりやふっくらオムライス、それからまん丸チョコレート。

 料理を作るのはいつも私で、食いしん坊な彼女はいつも食べる係だった。彼女はどんな料理でも残さず食べてくれたから、私もうれしくてよく笑っていた。

 この関係がずっと続けばいいと思っていたのに、彼女は突然引っ越すことになった。

 お別れの日は、ちょうどバレンタインデーだった。

 私はすぐに四角い箱に丸めたチョコレートを並べて、きれいな包装紙で包んで渡してあげた。

「私のことずっと忘れないでいて。ね?」

 チョコレートを受け取った彼女は涙を流して喜んでくれた。


 思い出に浸っているうちに娘が泥だんごを口に運ぼうとしていたので注意する。

「本当に食べちゃダメよ」

 娘は小さくうなずいて砂をいじり始める。

 私は言うことを聞く素直な子が大好きだ。

 どこからかボールが転がってきた。

 それを追いかけるように小さな女の子とお母さんらしき人がやってくる。

 私はボールを女の子に渡してやると、お母さんの顔をじっと見つめる。

 もう何十年も会っていなかったけれど、すぐにあの子だと気がついた。

 驚いている彼女に私は微笑みかける。




















「また仲よくしましょう。あなたの大好きなチョコレートをたくさん作ってあげる。ね?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ