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ちなみに、香苗はというと。
「鈴鳴奈っ、鈴鳴奈は何処へ逃げたッ!?」
「見当たりませんぜ奥様」
「向こうには居ませんでした!」
草の根をかき分け未だに鈴鳴奈を探していた。彼女達は雑木林を見つけるたびに突撃し、いつの間にやら森の中をさ迷っていた。もう日は沈み、辺りは真っ暗。幽霊か、さもなければ熊が出そうな雰囲気である。
香苗のすぐ後ろをついて歩いていた鈴鳴奈の父が、ぽつりと呟いた。
「鈴鳴奈ちゃん、どこ行っちゃったんだろうねぇ……」
「チィッ……鈴鳴奈……。一体何処に居るのだ……。絶対に探しだしてやるからな━━!」
香苗の叫びが森の闇に吸い込まれていった。