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十二月二十三日。月曜日。

「お母さん。鈴嗚奈さんを……僕に下さい!」

頭を下げる若い男に、長い髪を明るく染めた中年の女性は鼻を鳴らした。

「ふんっ。どこの馬の骨とも知れぬ輩に妾の娘をやれるわけなかろう。馬鹿も休み休み言え」

女性のすげない言葉に、男の隣に座っていた女が身を乗り出す。年はおそらく十代の後半で、男と同じくらいに見える。長い髪を金髪に染めていて、女性とよく似たつり上がった目をしていた。

「母様っ!それはあんまりです!」

若い女に続き、男も身を乗り出す。

「お母様!お願いします!」

中年の女性は手にしていた扇子をパンと叩いた。広い居間に音が響く。

「黙れ!貴様に母と呼ばれる筋合いはないわ!」

元々きつい目元を更に眼光鋭くする女性。だが若い女は諦めなかった。前のめりになり、目の前のテーブルに片手をつく。

「母様!お願いします!スーザンさんとの結婚を許してください!」

女性はイライラとした様子で片手を振った。顔にかかった前髪を一気にかき上げる。

「お願いします!」

「お願いします!」

若い女と男が順番に頭を下げた。女性は左の手のひらを思いきりテーブルに叩き付ける。大きな音が鳴り、コーヒーカップの水面が揺れた。

「えぇいッ!駄目と言うのがわからんかっ!貴様等の顔などもう見たくもない!何処へなりと消え失せろッ!!」

「母様!」

「鈴嗚奈さんのお母さん!」

女性は立ち上がると若い二人を見下ろした。お湯も凍り付くような冷たい眼差しだった。

「……さっさと失せろ!」

そのまま部屋のドアの方へ向かう女性。

「クッ……また来ます」

「スーザン……」

苦々しげな顔をする男と、その腕にそっと手を置く若い女。女性はチラッとだけその様子を振り向くと、背を向けたまま吐き捨てた。

「二度と妾の前に現れるな」

重々しいドアがバタンと閉まった。




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