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サトラセ士ケイタの言霊(旧作)  作者: 海地日向
第一章 デノーフ・バ・フィアー
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第六話 レノとの交渉(2)

サブタイトルを修正しました。

※2017年10月30日

※2017年11月26日 再修正しました


 「……ふぅ。分かったよ。詳細を聞かせてもらえるかい」

 「レノ、ありがとう」


 レノはどこか諦めたように応じてくれた。

 今までの人生において一番時間をかけて人と会話した気がする。

 急激に疲れを感じたが、これからが本番だ。

 じっくりと時間をかけてレノにオレのアイデアを伝えた。


 別のルートも含めれば、何度もオレと人生を歩んだ相手だ。

 きっと分かってくれるだろうと勝手に信じていた。


 オレは既にスワンの魂と融合をしていること。そして、スワンから得た全ての情報をレノに伝えた。


 これはレノから信頼を得るためでもある。

 それに、融合されてしまえばレノに知られてしまう情報でもある。

 つまり、オレ達にとってこの情報に価値はない。

 それよりも俺の人間性、アイデアに価値を見出してもらう必要があった。


 「ケイタは頭は悪くないし、度胸もあるね。

 ひょろひょろで脆弱な人間族かと思っていたけど、なかなかやるじゃないか。

 この状況下でそんなことを考えるのはケイタぐらいだと思うよ」


 事前にレノのことを知っていたのは非常に大きい。

 狩られる立場の人間に余裕などないのだから。

 オレはみんなのことが心配になったが、今はまだ交渉の途中。

 気持ちを切り替えレノをまっすぐに見つめた。

 わずかだが……レノは微笑んでいるようだった。


 「乗るかどうかは、レノ次第だ。オレには選択肢はない。

 だけど、レノであれば乗ってくれると信じてる」

 「いや、そんなに自分のことを卑下する必要はない。

 ケイタの話を聞いて、僕はケイタという人物の強さに惹かれたよ。

 強さというのは、戦闘能力だけではないからね」


 レノは感心したように呟くと顔を上げ、空を見上げた。

 オレはレノが回答してくれるのをじっと待つ。

 既に一時間を経過し闘争開始のドラムは鳴り終わっていた。

 だが、オレはレノとの交渉を続けることに成功していた。


 「悪いね。さっき試させてもらったんだけど、ケイタのスキルは見れなかった。

 ケイタの世界の情報を聞く限り“隠蔽”を自然に取得することはないだろう。

 つまり、スワンという人物と魂の融合をしたのは事実、ということだね」


 そうだ。オレはスワンの魂を受け入れ、魂の融合をしている。

 そして、オレが覚悟を決めることができたのは、スワンが自分の世界に戻らない覚悟をオレに見せてくれたから。


 「ケイタの想像通り僕は魔族を憎んでいるが、同じくらい人間族を憎んでいる。

 だが、ケイタの世界の住人に罪が無いことは理解している。

 ケイタが僕の望みを叶えるのに協力してくれるのであれば、僕も協力しよう」

 「……ありがとう」


 手放しでは喜べないが、それでも一回目の交渉は無事に終わった。

 これから始まるのは未来を変えるための共同戦線。

 ただ、オレの立場からすれば、まだ交渉は続いていると考えた方がいい。

 オレが得たスキルが役に立たないものであった場合に問題が発生するからだ。

 最悪の場合――状況が振り出しに戻る可能性がある。


 「早速だけど隠蔽を解除するから、スキルとステータスを確認してもらっていい?」

 「もちろんだよ」


 スワンから得た知識に基づき小声で『隠蔽』と唱え、隠蔽を解除する。

 すると、体から何かがはがれ落ちたかのような感覚があった。

 そして、レノがオレをまっすぐに見つめると、先ほどと同じように体の中を見られているような感覚に襲われた。


 「おぉ! ケイタはレジェンド持ちか!」

 「レジェンド? レジェンドって何?」


 レノの目がきらきらと光を放っているように見える。

 まるで、新しいおもちゃでも見つけたかのように楽しそうな顔だ。 


 「レジェンドスキルは最上位のスキルで、非常に強力な効果がある。

 このランクのスキルを所持するものは本当に少ない。

 ケイタはそのレジェンドスキルを持っているんだよ!」


 スワンからはレジェンドスキルの情報は得られなかったな。

 つまり、オレが新規に得たスキルだと思われる。

 どうやら風はオレの後ろから吹いているようだ。


 「スキルの名前は“言霊”だ」

 「言霊? あの言霊? この世界でも言霊という概念があるのか?」


 言霊のことは詳しく知らない。

 言葉に霊的な力を乗せ、魔法のような力を発現するようなイメージを持っている。


 「いや。言霊という言葉は始めて聞いた。

 そっちの世界で習得したスキルだから、そっちの世界の影響を受けたのかもね」

 「なるほど。どういった効果があるのか想像できる?」

 「分からないね。僕が知っていれば知識として答えられるけど。

 “透視”ではスキル名と各スキルの数くらいしか分からないんだよ。

 他人のスキルの詳細を確認するスキルなんて聞いたことないな」


 この世界においてスキルというものは身近な存在だ。

 だけど、全容は明らかになっていないということだ。

 詳細を確認するスキルは有ると考えて、警戒するべきである。


 「隠蔽、透視とくれば“改ざん”というスキルもある?」

 「うん。あるよ。スキル名を違うスキル名に変更して見せるスキルだ。

 あまり実用性はないように思うけどね。僕は持っていない。

 隠蔽を突き抜けてスキルを確認するスキルも聞いたことないよ」


 これも鵜呑みにするべきではないかもしれない。なにせ世界は広いのだから。

 改ざんを手に入れたら、改ざんと隠蔽はセットで利用したほうがいい。

 特にオレのようなスキルを保持する者には必須のスキルだと思われる。

 隠蔽を使わずに改ざんしたスキル名を見せて、油断させると言う手も使えるし。


 「それで言霊だけど、ケイタは想像できるかい?」

 「たぶん、言葉に力を与えて魔法のように何かを発現する力、じゃないかな」

 「ケイタの世界には言霊という概念があるんだね。

 それは、魔法を使わなくても魔法に近いことができるということかな?」

 「そういうイメージを持っている」


 そこで、レノは考え込むような顔を見せる。

 魔法やアクティブスキルは“魔源力”を消費することで発動される。

 言霊は、おそらくアクティブスキルなのでコストが必要だ。

 強力な魔法と同じ威力の力を“一定のコストで発動”できるなら意味がある。


 スワンから共有された記憶から、パッシブスキルはコスト不要だと理解している。

 つまり、ステータスの“魔源力”の消費無しに利用できるということだ。


 「有用なスキルじゃないの?」

 「いや、有用なスキルだと思うよ。

 魔法と同じ効果を一定の魔源力で発動できるのであればね。

 ただ、それだけだとレジェンドスキルにしては物足りない気がしてね」


 レジェンドスキルは非常に強力なスキルと認識されているようだ。



 (オレも期待してもいいのかな。スワンがオレに期待してくれたみたいに。

 オレのスキルには未来を変える力があるのかもしれないって)



 交渉の場には強い追い風が吹いている気がした。


 「じゃあ、ケイタの持っている全てのスキル名を教えるよ。

 具体的な効果は僕が知っている物だけに限られるけどね」


 スキル名とレノが知っている情報を全て聞くことが出来た。

 スワンから受け継いだスキルは、レノから聞いた情報と同じ。

 情報に差異は無く、正確に確認できるということだ。

 レノの説明を一通り聞いて、頭の中を整理した。



●レジェンドスキル:言霊


●ユニークスキル:サトラセ、自然の助力【天】、破壊の拳


●レアスキル:隠遁、ハイラッキー、記憶力【強】


●コモンスキル:学徒、巧遅、共存【天・中】、耐精神【中】、耐神経【中】、隠蔽、料理、生活魔法、肉体強化【中】、索敵【嗅覚・聴覚】、韋駄天、悪食、愛嬌


●固定スキル:適性【地海天】、言語理解、魔法【海天】



 言霊、サトラセ、隠遁、そして学徒と巧遅がオレのスキルだ。

 その他はスワンとベロスのスキルということになる。


 「サトラセ? どういうスキルか知っている?」

 「言霊と同じく、言葉そのものを聞いたことが無いな。

 サトラセの意味は分かるかい?」

 「サトラレなら分かるが、サトラセか……。

 悟らせるという意味だとすると、相手に分からせるとか認識させるとか」


 そこまで言って、オレは重要なことに気がついた。

 もしかして、レノとの会話中、既にサトラセは発動していたのではないか。

 このスキルが交渉に力を発揮していたんじゃないか。


 オレはこのスキルを意識して使っていない。

 そうなのだとするとサトラセはパブリックスキルである可能性が高い。

 パブリックスキルならセットしたままで効果を発揮することができる。


 「そうか。おそらくサトラセもそっちの世界の影響を受けたスキルだろうね」


 特にレノは気にしている様子も気づいている様子もなかった。


 「自然の助力は“天”だから、天の適性に関連する自然の力を利用できる」

 「使いこなせれば、強力なスキルなのかな」

 「確実に強力だよ。ユニークスキルだからね」


 いずれにせよ、オレのゲームの知識よれば、自然に関連するスキルは訓練が必要だ。

 どれくらいの影響があるのかは慎重に確認した方がいい。

 自然系のスキルは仲間を巻き込む可能性があるからだ。

 そのことを念頭に置いて、戦略的に利用しなければならない。


 次に破壊の拳だ。これは名前の通りだった。

 もしかするとスワンは拳闘士だったのかもしれない。

 物理攻撃スキルで、かつ拳で攻撃する際の威力上昇、破壊力を期待させる何とも魅力的な名称のスキルだった。


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