第三話 動き出した運命
サブタイトルを修正しました。
※2017年10月30日
※2017年11月24日 再修正しました
「そういえば、主はスキル所持数も抜きん出てたよ」
「スキル所持数?」
「えっと、詳細は教えてもらえなかったけど。
コモンスキルからレアスキルまでかなりの種類を持ってたよ」
スキルは数の多さやレア度の高さが重要なのではない。
使えるスキルであり、使いこなせるかが重要だ。
それに、スワンが知らない情報があることも分かった。
資質、ステータス、スキル所持数等は情報を集めて、きっちりと検証する必要があるだろう。
いずれにしても、オレが自身のスキルを取得したことを除けば、今までのオレとの違いは何もない。
取得したスキルの使い勝手が良いことを期待しよう。
スキルを使いこなせるかどうかは努力次第であり、その結果が未来に大きく影響を及ぼすのは間違いない。
「そっか。期待に応えられれば良いけど」
「間違いなく強力なスキルを得てるって信じてるよ。
そのスキルを使いこなして、未来を変えて!」
「スワンは強いんだね」
「へへ。強くなったんだよ。もう同じ未来はごめんだから」
光の球であるスワンの表情は見えない。
それでも明るく応えてくれたことは伝わってきた。
既に立ってしまった死亡フラグはへし折ったって良いだろう。
(未来を変えるため、ね。いっちょがんばってみるか)
「あまり時間がないって言ってたけど、まだ大丈夫?」
「ううん。あんまり余裕ないよ。
なんせ転移魔法と結界を並行で発動しているんだから。
すごいでしょ? でも、もうすぐ限界が来ちゃう」
「分かった。手短に確認させて。別世界の情報は誰が教えてくれる?」
「私と魂を融合すればある程度は共有されると思う。
だけど、私も主の記憶は少ししか教諭されてないの。
べロスちゃんの記憶も全部は知らない。
もしかすると、魂の割合にも関係するのかも」
「魂の割合?」
「うん。魂の闘争によって魂を融合する際に、魂の割合を決める必要があるの」
覚悟はしているつもりだったが、闘争という響きに、喧嘩をしたこともないオレは少し引いていた。
本件に関してはもっと詳しく話を聞きたかったが、時間は限られている。
融合後に得られる情報に期待し、他に確認すべきことを優先することにした。
「それについては了解。
次の質問だけど、岩に触れたオレがスキルを得たということは、真乃や鏡野、剱もスキルを得たということだよね」
「岩に触っていたら全員が対象。
だから、偶然に岩を触った人が他にもいれば対象になるね」
確かに。
いつからそこにあったのかは知らないが、偶然触ってしまった人もいるだろう。
(あれ? そういえば、ベロスはいつ触ったんだ?)
「ベロスは洞窟に連れて行ってないんだけどな」
「うーん。どこかで触れたのは間違いないよ。
ベロスちゃんもスキルを持っていたからね」
ベロスは偶然にも岩に触る機会があったということだ。
「魔族の魔法を事前に止めることはできないの?」
「各国は戦力を増強しているけど、まだまだ脆弱で。
それこそ魔族に立ち向かえるような状況ではないかな」
魔族を止めるために他者に助力を求めるというのは難しいみたいだ。
「真乃と剱とはどこで再会したか知っている?」
「分かんない。私が主と会ったときには真乃様と剱様の三人だったから。
真乃様に限って言えば、おそらく【保護地域】の近くじゃないかな。
保護地域は、こっちの世界から転移してきた大地が落ちた場所のことね」
スワンの世界に転移された後は保護地域に指定されるのか。
魔族が転移させた知れば、各国は警戒するだろう。
攻め滅ぼされるより、保護地域に指定されただけましなのかもしれない。
「岩に触れた者は転移の際に、魂の融合をする相手がいる場所に強制的に飛ばされて、時間の流れがほとんど止まった結界の中に閉じ込められるの。
私はベロスちゃんが相手だったから、言葉が伝わらなくて大変だったんだから。
ところで、そろそろ限界だけど」
「分かった。全勝が邪龍になるのを止めるのは可能か?」
質問してから思ったが、そもそも全勝は何故邪竜になったのだろう。
「無理だと思う。彼は私と同じく姿を変えることができるから。
それに、高い魔力を持っているから、魔族と融合したんだと思う。
だから魔族の協力を得て行動してると思うの。足取りを追うのは難しいかな」
「うーん……そうか」
全勝は未来を変えるためのキーマンの一人で間違いない。
だが、見た目で全勝と分からず、裏に誰がいるのかも分かっていない。
「オレの両親と妹がどうなったか知っているか?」
「……ごめんね」
「……そうか」
家族と友人が無事な間に見つけ出したい。
そのためには生きていくための力を身につけ、人脈を築く必要がある。
どうするべきかと悩んでいると、目の前の光が揺らぎ始めていることに気がついた。
「最後の質問。オレ達が敗れた後の世界はどうなった?」
「何とか粘っているけど、もう時間の問題かな。
それに、魔族は大規模転移を再度実施しようとしてるの。
転移先は因果の関係で転移された大地があった場所に戻ろうとする。
つまり、主の世界が次のターゲットだと思うわ」
信じたくはないが、オレ達が敗れた結果、魔族は地球に侵略を開始すると言っている。
死亡フラグだけを折れば良いと言う訳ではなさそうだ。
「私から二つお願いがあるの。
一つ目は、今までの主からの伝言ね。“そうりんを壊せ”だって」
「そうりん? 何それ?」
「分からないよ。主は何となく分かってたみたいだけど。
壊すんだから道具か装備か。何かしら形があるものだと思うよ」
「探して壊すにしても、物の検討がつかないと厳しいね」
「うん。でも、何とか探し出して破壊してね」
「……分かった。最優先で取り組むよ」
「二つ目はすでに言っちゃったけど、私の魂と融合して欲しい。
その際に、私の魂の解放条件を設定させてもらいたいの」
「オレが結晶石化したら、というやつだね。分かった」
「へへへ。ありがとう」
どうやって設定するのかは分からないけど、今まで何度も繰り返してきたことだ。
きっとできるのだろう。
そこで限界が訪れたのだろう。
周囲には何の変化も見られないが、オレ達がいる空間から歪むような音が聞こえ始めた。
「主を私の世界の少し過去に転移させるね。
過去に転移するといっても、ほんの数ヶ月程度だと思うけど。
事前に準備する期間は確保できるんじゃないかな。
私はきっと未来は変わる。そう信じてるよ!」
「スワン……」
スワンはオレの魂と融合するつもりで転移してきている。
オレが結晶石化しない限り、魂は解放されない。
つまり、最初から別世界に戻るつもりは無い。
オレに全てを託すつもりで覚悟を決めてここに来たのだ。
「良いんだよ。私の記憶が次の私に引き継がれないこと。
これが私の望みなんだから」
オレがそのことに気がついたのを察したのか、スワンは強い口調で望みを告げると、目の前の光の球が強い光を放ち、収縮を始めた。
「主の世界で転移が始まったみたいね。
私はこの転移魔法に便乗して主を過去に転移させる。
これまでの闘争では相手から主導権を奪い切れなかったようだけど、今回は違う」
彼女は早口で話を続ける。
「限界が来ちゃった。全勝はどこで主を見ているか分からないから。
くれぐれも気をつけて! 私は……」
そこまでまくし立てるように話すと、目の前の光の球は二つに分かれる。
大きな光はオレの胸に衝突して消え、もう一つの小さな光はこの空間に薄く発散し、そして消え去った。
スワンがいたところを観察すると光が収束しているような渦が見える。
白と黄金色の渦が、非常にゆっくりだがオレの方に近づいてきていた。
光の渦に向かって空間全体が飲み込まれ、オレを中心に狭くなってきているようだ。
「もう、覚悟は決めたよ」
逃げ道は無いと潔く諦め、身を任せる。
目の前に来た渦に手を伸ばすと、手が渦の中心に向かって伸びていった。
引き伸ばされている感覚や痛みは無く、手を引き戻すと元に戻る。
「痛みが無いのは良いけど、飲まれるというのは気分がいいものじゃないな。
待っていても状況は変わんないし。敢えて、特攻してみるか」
ふぅっと一つ小さなため息を吐き、オレは光の渦に向けて歩を進めた。
オレの心はなぜか前向きで晴れていた。
聞きたいことが全て聞けたわけではないし、これはゲームではない。
だけど、オレの得意分野で彼等に恩を返せるかもしれない。
理由としてはチープかもしれないが、どうせ逃げられない道なのであれば、死亡フラグを叩き折って、魔族が地球に来られないようにしてやればいい。
「そうだ。やるからにはオレは徹底的に強くなる。
今までと変わらず、コツコツと最強を目指せばいいんだよ。
それがオレ的ルールだ」
オレはまっすぐに光の渦の中を進んでいく。
オレの体は伸びるように光の渦に飲み込まれていった。




