第二話 天人族スワン
サブタイトルを修正しました。
※2017年10月30日
※2017年11月24日 再修正しました
「転移された大地は、スワンの世界の大陸と大陸を繋いでしまう。
この状況を利用し魔族と手を組んだ帝国が戦争を引き起こす。
その頃、オレは真乃、剱と一緒に行動中。途中でスワンと出会い行動を共にする。
そして封印神角のある女神が封印されし地にて邪竜討伐戦に参加した」
(しかし、これって。妙にリアルだけど本当に夢の中?)
「その後、邪竜化したのは……全勝だということが判明。
それでもオレ達は戦い続け、真乃が邪竜に止めの一撃を加える。
だが、邪竜はオレに向けて一矢報いるための一撃を仕掛け、スワンには呪いをかけた。
真乃は……オレを庇ってその一撃を受け、結晶石化した。
その後、邪竜を討伐するも剱がオレ達を裏切り、最後はオレも結晶石化した」
「うん……、うん」
くそ。これが夢ではなく現実だというのなら、なんて未来だ。
オレ達は死亡フラグが立った状態で転移し、絶望的な未来に何度も、何度も立ち向かってきたということか。
「結晶石化というのは、死とは違うのか?」
「一緒一緒。私の世界『デノーフ・バ・フィアー』では全ての生き物が死を迎えると、消滅して結晶石を残すんだよ。
それを結晶石化と呼んでいるの。だから同じだと考えていいと思う」
結晶石化という言い方ではあるが、結局は“死”というものが身近にあること。
そして、オレやべロスのことだけではなく、真乃、剱、鏡野、そして全勝のことまで知っていることに、少なからず動揺していた。
(理由は分からないけど、時間が無いって言っていたな。
信じ難い話ではあるんだけど。まずは重要だと思われるポイントの確認かな)
未来を変えることが目的と言うのなら、オレと真乃の結晶石化の回避は必須事項だ。
「なぜ、剱が裏切ったのかは知ってる?」
「全然、もう全然分からない。
彼は全勝の催眠配下にあったみたいだけど、主が解放したって言ってた」
「全勝の催眠配下?」
「そうそう。具体的な方法は分からないけど、主と真乃様がそう言っていたよ」
催眠という物騒な話を聞き、ずぐんと心が疼いた。
「催眠状態は、どうやって解放したかは?」
「それもね。それも知らないんだよ。主は秘密が多い人だったから。
おそらくだけど、魔法か道具を使っているんじゃないかな。
魔法なら魔法で解除、道具なら道具を破壊すれば解放できるかもしれないけど」
軽快に回答するスワンに対して、率直な疑問を口にする。
「今までのオレも剱が裏切ることを知っていたのに、なぜ回避できなかった?」
「ううぅ。それを言われると苦しいです。回避するには、ですね?
うーん。討伐戦に参加させない。もしくは彼を結晶石化するしかない、かな?
いや、もちろん、主はそのどちらも選択しなかったよ!
主は彼が催眠状態から解放されているって信じてたから!」
それはそうだろう。結晶石化イコール死だとすると、簡単にそんな選択肢を選ぶとは思えない。
「スワンも剱が催眠状態から解放されていることは確認したの?」
「ぐぐぅ。私は他人のステータスを視るスキルを所持してないのよね。
でも、主と真乃様はステータスを見て、催眠状態が解除されているのを確認したって言ってたよ」
「それは、厳しいな。ステータスの表示では分からないってことだからね」
「うんうん。そうなるね」
ステータスでは分からないということは、隠しパラメータとか、そういった情報が存在する可能性を秘めている。どうにかして、その情報を確認する方法を得る必要がある。
「あ、そうそう。一点追加で説明しておくね。
私がもう一度転移すると、転移前にいた世界に戻されちゃう。
だから、主がこれから移転する世界の私は何も知らないの」
もう一度転移をすると、出発地点に戻される、と言っているのだろう。
つまり次の世界では、オレだけが過去と未来を知っているということになる。
「それなら、スワンはどうして過去のことを知っているんだ?」
「へへ。二つあって。一つは主と魂の融合し、主と一緒に転移したこと。
もう一つは、主が結晶石化された場合、私の魂が解放されるようにしたこと」
また新しい言葉――魂の融合が出てきたことに困惑する。スワンは口調を変えることなく話を続けた。
「それでそれで。魂が解放されると、一つの世界に同じ魂が二つ存在することになるよね。
だから、その世界の私に私の魂が吸収されて、記憶が共有されるの」
「理屈は良く分からないんだけど、無理矢理に納得するよ。
そうやって今までの記憶を蓄えてきたと」
もしこれが真実というのなら、かなり辛い人生を歩んできたのだろう。何度も仲間が死ぬところを、仲間が消滅していく瞬間を見続けてきた。
「真乃の犠牲を回避する方法は?」
「ううん。私には思いつかなかった。
未来は少しずつ違ってはいたけど、結果はいつも同じ。
だから、未来を変えるために、諦めずに何度も何度も繰り返し続けたんだよ」
スワンの声色が急激に沈んでいく。未来を知らないスワンは、オレが結晶石化した瞬間に記憶が戻る。そこでまた同じ結果になったことを悟る。
「毎回、真乃がオレの変わりに攻撃を受けたのか」
オレはすでにスワンを信じ始めていた。これが夢ならそれまでだ。オレの夢だ。
オレが黙っていれば誰にも怪しい夢を見たなんてことはばれようがない。
もし、夢でなければ、死ぬ気でみんなの死亡フラグを折りまくる必要がある。
「オレは過去と未来のことをみんなに共有しなかったんだな」
「うん。だって信じてもらえないでしょ。秘密主義だったし」
「正しい選択だよ。スワンには伝えた?」
「ううん。ただ、こうなることを想定していたのかもしれない。
主は何があっても私だけは生還させるって言っていたよ」
魔族に知られることを警戒したのもあるだろう。
だけど、今までのオレは『今回で終わりにする』と思っていた。
だからこそ、スワンには告げなかったのだ。
次のスワンは知らないし、知らないで良い。
知らないままループが終わるのが、一番幸せなのだから。
さて、今までの話からすると邪竜討伐戦後、オレが生き残る未来は存在していない。
この先の未来を見たければ、全てはオレ次第ということだ。
「今まで未来を変えることはできなかったけど、今回は違うんだから!」
「そっか」
スワンがそこまで信用してくれることが嬉しかった。
キット今までのオレ達は旅の中で信頼を積み上げてきた。羨ましいくらいに。
「今までのオレはスキル無しだったんだよね。どうやって戦ってた?」
「へへへ。それこそ魂の融合を逆に利用したのよ。
主は魂の融合をすることで、私とベロスちゃんのスキルを使えるようになるの。
でも、それ以上にすごいのは……主の資質とステータスだよっ!」
スワンが急に勢いづいて声高に説明を始めた。
急激なテンションの変化にオレはついていけなかった。
「そ、そうか。資質とステータスとはどういうこと?」
「主は私とベロスちゃん、そして本来の“魂の融合の相手”の資質を受け継ぐの。
全部ではないみたいだけど、それでも十分なのよ。
二人と一匹の資質を受け継いだ“反則的に上昇した資質”があるからっ!」
本人は見えず、目の前には光の球しかないのだが、スワンが前のめりで説明している姿が想像できた。
「ステータスの全ての項目は資質のランクに依存するの。
例えば力の資質ランクが高いと力の限界値も高い、ということだね」
「資質に基づいてステータスの限界値が決まるっていうことか」
「ただ、ステータスは肉体に紐付くみたいで、共有できないの。
私がべロスちゃんの体に替わると、ベロスちゃんのステータスになっちゃう」
ステータスは肉体に紐付いている。当然、肉体は融合しない。
つまり、ステータスは共有することができないと言っているのか。
「ちなみに、資質は種族によってバラつきがあるの。主は人間族よ」
「……なるほど」
「へへへ。ステータス限界値は資質によって決まる。
本来、この転移魔法では一人の資質しか受け継げない。
だ、け、ど、主は二人と一匹から受け継いだ反則的に上昇した資質があるの!」
スワンは妙に高いテンションを維持したままの口調で続ける。
「資質ランクが高くなったことに伴い、ステータス限界値も高くなった。
つまり……」
「そう! 主はある意味ステータスチートってことよ!
でもまあ、初期ステータスは底辺だけどね~」
(最後の言い方はなんか引っかかるな。
つまり、スワンの魂はオレの魂に融合されてから解放された。
ということは、オレの記憶や知識が共有されてしまっていると。
だから、チートなんて言葉を知ってるんだろう)
だが、努力の結果をチートと言われるのは釈然としなかった。今までもそうだ。積み上げた努力は決してチートなどではない。
結果として、ステータスチートレベルに行き着くのかもしれないが、プロセスが大事なのである。
「今のステータスは底辺なんでしょ?
だったらチートではなく、努力の賜物と言って欲しいね」
「へへへ。その通りだね。
ただ、資質が高すぎて、どのステータスも上がりっぱなし。
私が主に会った時には既に気持ち悪いくらいのステータスだったし。
だから、チートで良いのよ!」
どうやら、今までのオレは基本を忠実に守り続け、ステータスを上げ続けていたようだ。




