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サトラセ士ケイタの言霊(旧作)  作者: 海地日向
第一章 デノーフ・バ・フィアー
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第一話 光の球との遭遇

※2017年10月21日 修正しました

※2017年11月24日 再修正しました


 (なんでこんなことになったんだっけ?)


 つまるところオレの疑問はそのたった一言に集約された。

 オレは絶賛自由落下中であり、気持ち悪いくらいの浮遊感を感じている。



 (いずれにしても、このままじゃまずいんじゃないか?)



 このまま落ち続けた場合、仮に下が地面でなかったとしても死に直結するダメージを受けることは容易に想像できた。

 だが、ジタバタしたところでどうにもなりそうにない。

 さてさて、この状況はどうしたものかと考えていると足元からゆっくりと体が光り始め、浮遊感はゆっくりと減速されていく。

 そして、光が完全に体を覆うと一際強く輝き、徐々に優しく暖かい光に変わった。


 落下しているのは間違いなかったが、いつしか落ちているのかも分からなくなってきた頃に、足の裏に何かが触れた。



 (着地したみたいだな。地面、ではないみたいだな。光る、床?)



 足の下は強い光を放っていたが、それは周囲も同じで、オレの体を覆う光以上に強い光を放っている。



 (眩しくて、目が開けられない……)



 目の位置に影ができるように手をかざし、周囲の様子を窺う。

 そして、目が慣れてくると、立っているのは真っ白い空間の中ということを理解した。


 「また、か」


 原因は不明。しかし状況は似たようなものだ。

 その状況にうんざりとしながら、オレは妙に慌ただしかった今日の出来事を思い出し始めた。



--------------------------------------



 今日は数少ない友達の山賀やまが 真乃まの蕪風かぶかぜ つるぎ鏡野かがみの 彩香さやかと出かけることになった。

 真乃はオレの初めての異性の友人で、ちょっとした事が切欠で友達になったが、オレの交友の輪を広げてくれた希有な存在だ。

 真乃のおかげで剱、鏡野と友達になれたのだから、面と向かっては言い難いがオレは真乃に恩を感じている。


 まあ、それは良いとして、オレ達が一緒に出かけることになった目的は、夏休みの自由研究を制覇するためだ。

 剱と鏡野が担任の里根さとね 芳香よしか先生に掛け合ったことで、グループでの報告が認められたのである。

 オレ達はグループ報告の題材として、地元で有名な洞窟の中にある最近なって解放された新エリアを選択し、調査することにしたのだ。


 洞窟には特に目新しい物は無かったが、それなりに楽しみつつゆっくりと調査しながら進んでいると、新エリアで特徴的な“青い岩”を見つけた。

 オレは、その青い岩を見て驚いた。

 以前、家に来た剱の親戚の全勝まさかつが持っていた“青い石の欠片”と酷似していたからである。


 全勝はオレの妹の麻耶まやに会いに来たと言っていたが、麻耶は運良く外出中だった。

 麻耶が不在であることを告げた時、飼い犬のべロスが全勝に飛びついてしまったのだ。

 突然の出来事に全勝は酷く驚き、何かを道路に落っことし、慌てて拾い上げた。

 それがその青い石の欠片だったのだ。



 (……あぁ、青い岩の周りで話をしていた時だ。

 なぜか洞窟の中にべロスにそっくりな犬がいたんだ)



 唐突に事件は起こった。

 ベロス似の犬が急にオレにタックルしてきてため、洞窟の中で転んでしまったのだ。

 それが直接的な原因であるかどうかは分からない。だが、その直後から耳鳴りが聞こえ始め、オレは洞窟の中で気を失った。


 その間にオレは『これは夢だ』と夢の中で自覚した状態。自覚夢を見ていた。

 自覚夢の中で、オレは銀髪の少女と銀髪の少年に出会う。

 尖った耳に灰色の肌、そして幻想的な銀色の髪に黒い目。まるでゲームの世界のダークエルフのようだった。


 夢の中の少年は嫉妬や憎しみといった負の感情を纏い、世界を手に入れたいと願望を伝えてきた。


 自覚夢から目を覚ますと、オレは真乃の膝枕を満喫中。

 近くで鏡野が様子を窺っていたことに内心かなり慌てたが、慌てふためくと格好が悪いので、冷静を装って体の調子を確認してごまかした。


 驚いたことに、何故だか分からないが体調は完全に回復していた。

 そうはいっても意識を失ったことは事実なので、大事を取って早々に帰宅することになった。


 そして……最寄りの駅で解散し、家の前に到着した時だった。



 (思い出したぞ。洞窟にいたベロス似の犬がオレの前に現れたんだよ)



 ベロス似の犬はオレに触れるくらいの距離まで近寄ると、一言「ワン」と吠えた。

 その後は一瞬だった。オレは強い光に包まれたかと思うと、足元にできた光の穴に落っこちた。この瞬間から自由落下が始まったのである。



--------------------------------------



 「本当に、なんだっていうんだ」


 周囲は白く輝き、何もないように見える。足元には影すら出来ていない。

 まるで四方八方から光を当てられているような空間にオレは立っていた。



 (今回も夢なのか? その前の出来事と同じだとすると。

 もしかしたら、何らかのイベントが始まるかもな)



 まずはイベントの発生を待つべきだろうと考えたオレは、その場に留まりじっくりと周囲の様子を窺うことにする。

 ただ待っているのも時間の無駄なので、体に触れる、つねる、声を出してみる等、自分で出来ることをやってみた。

 検証の結果、今回は今までと違い、夢を見ているとは思えないくらいの妙なリアリティーがあることに気がついた。


 「はぁ。目的無く行動するのは避けたいんだけどな」


 その後も継続して待機していたが、特にイベントが始める気配はない。

 ここにはオレの荷物もあったので、使えるかどうかを確認してみたが、スマホも腕時計も使い物にはならなかった。

 打つ手が無くなったオレは、今後の行動を考え始める。



 (気になるのは、オレの体のことだな。

 あそこで気を失ったとすると、まず間違いなく道路に倒れてんな。

 起きて傷だらけとか、勘弁して欲しいからな。

 このまま何もイベントが起こらないようなら、行動を起こすしかないか)

 

 

 家の前まではたどり着いていた。

 だから、誰かが気づいてくれると信じ、オレは行動を起こすことにした。


 「仕方無いな。どこに向かえばいいのかは分からないが、とにかく進むことにしよう」

 「ううん。その必要はないない!」

 「うわっ!」


 唐突に、かつ妙に近くから聞こえてきた声にオレは驚き飛び跳ねた。

 驚いた姿勢のままで周囲を確認するが、人の姿は見えない。


 「だ、誰だ? どこにいる?」

 「目の前だよ! 良く見て良く見て―。空間が歪んでるでしょ?」


 語尾上がりの口調が特徴的な声に目の前を良く見ろと言われたため、注意深く正面の様子を窺った。

 良く見ると、オレの正面には周囲と同化した“やや光が強い白い球状の何か”があった。



 (まさか、これ?)



 「あの……、少しだけ光の強い球状の物が見えるが」

 「おー、なるほどなるほど。

 私は自分の体が見えているから分からないけど、そう見えているんだ。

 なら、それが私で間違いないわ。

 私もね、頑張ったんだけど、力及ばず実体化できなかった。へへへ。

 結局、あるじを待たせることになっちゃったね」

 「実体化? 主? 悪いけどさ、何を言っているのか分らないんだけど」

 「そうでしょそうでしょ。だって私達は初対面だしね。

 私はそうは思えないんだけど、まあ、それはいいわ。

 兎に角、最低限肉眼で確認できる物に成りたかったんだけど、これが限界!

 まったく、大変だったんだからー!」


 じっと見つめても分からなかったが、近寄って耳を澄ますと、間違いなかった。

 光の球から必要以上に元気で明るい声が聞こえてきている。

 なんだか妙に馴れ馴れしい気はするが、今回は会話ができるだけましだろう。


 銀髪の少女の時はただ見ているだけで、銀髪の少年の時はただ聞いているだけ。

 今回は会話ができるから情報収集が可能だ。情報収集は基本中の基本。当たり前だと思っていることができるようになると少しは気持ちが落ちついた。

 光の球から声をかけてきたのだから、警戒する必要もないだろう。


 「私が貴方を主と呼ぶ理由はね、私の大事な大事な仲間が貴方――野間ヶ坂のまがさか 恵太けいたさんのことをそう呼んでいるから。

 だから、私も便乗させてもらったの」

 「……なんでオレの名前を知っているんだ?」

 「へへへ。さっきも言ったけど、私は主に初めて会った。

 そう、初めて会ったはずなのに、なぜか懐かしい気がするの」



 (えっと、会話はできているんだけど、成り立っているか?)



 「申し訳ないけど、もう少し分かりやすく説明して欲しいんだけど」

 「もちろんもちろん。そのつもりだよ。そのためにここに来たんだから。

 むしろ、お願いするから説明させてほしいくらい。今日の……お詫びも兼ねてね。

 そして、これから主が行く世界の状況と、未来ついてもね」


 語りかけてくる光の球の言葉は急に力強くなり、覚悟を感じさせた。


 「ただね、残された時間はあまりないの。

 だから、だからまずは重要なことを先に説明させてね」


 そう告げると謎の光の球は一方的に説明を開始した。

 直前に不思議な事が起こっていなければ、にわかに信じられない話だった。



 (一通り話しきったら満足したみたいだな。

 しかし……。何を言えばいいのか。

 まずは聞いた内容を整理し、内容が合っているか確認した方がいいかな)



 「確認するけど、貴方は別世界から来た天人族の“スワン”。

 オレの飼い犬のベロスと“魂の融合”? をしたため一つの体に共存している。

 オレの事を主と呼ぶのは、ベロスの影響だ、と。

 それで、この世界に来た目的は、貴方の世界の凄惨な未来を変えるため。

 そのために月の力を利用して時を渡り、オレ達の世界に転移してきた」

 「うんうん。その通り!」

 「今日の耳鳴りは、スワンさんが今回のループで試みた一つのチャレンジ。

 今と同じように、オレと会話をする機会を無理に増やそうとしたが失敗。

 そのお詫びとして、オレの不調を完全に回復した、ということでいい?」

 「スワンでいいよ。それとその認識で正解」


 (うーん。確かに。

 耳鳴りが無くなった後は妙に調子が良かったんだよ)



 「だけどもう一つのチャレンジ――オレに洞窟内の青い岩を触れさせることは成功。

 岩に触れた結果、今までのオレとは違って“スキルを習得している”はずであると。

 今までのオレは岩に触れていない。だから、オレ自身のスキルは持っていない。

 ……えっと、ここまでは合っている?」

 「うんうん。合ってるよ!」

 「それってつまり、ベロス似の犬はスワンだったってこと?」

 「うっ! その、その、ごめんなさい」


 明るく元気な語尾上がりから語尾下がりになり、明らかにテンションも下がった。

 その様子から反省しているのは間違いないだろう。なので、それで良しとした。


 「この先、というか今日か。魔族が月の力を利用し大規模な転移魔法を発動する。

 その結果、オレ達の住んでいる地域ごと別世界に転移させられてしまう。

 魔族の目的は、おそらくだが“結晶石”を回収すること。

 結晶石はスキル所持者が力尽きた際に残すアイテムだ」

 「うんうん!」


 光の球ことスワンが力強い返事でオレの確認に答えた。



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