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サトラセ士ケイタの言霊(旧作)  作者: 海地日向
第一章 デノーフ・バ・フィアー
17/31

第十六話 初めての戦闘(準備)

サブタイトルを修正しました。

※2017年10月30日

※2017年11月26日 再修正しました


 レノとは鍛練という名の戦闘訓練をこなし、濃厚な経験を積むことが出来たが、本当の戦闘は経験したことがない。

 こと戦闘に関しては、引き続き経験を積むしかないのだ。そして旅の目的を考えれば、物理的な戦闘を避けることはできないだろう。


 同様に情報戦を避けることもできない。

 ギブアンドテイクの関係が成り立たなければ交渉は困難だ。

 人は不都合な情報は隠そうとする。秘匿情報を引き出すためには、賄賂等も含めて様々な搦め手で攻める必要がある。

 しかし、オレには情報戦に於いて交換条件に用いれる情報がない。それが実情だ。


 それでも、サトラセがあれば情報戦を効果的に進められると期待している。

 サトラセは本当に有用なパッシブスキルだ。

 無駄な交渉をする必要がないし、記憶力【強】との組み合わせも良かった。

 おかげで、スワンからスキルを受け継いで以降の記憶は、全て詳細に覚えている。


 サトラセはユニークスキルであり、称号扱いのスキルだ。



●ユニークスキル

サトラセ:

 発言を断言することにより“発言の全てを真意と悟らせる”もしくは“情報を知り得ている”と相手に悟らせる。

 相手が知り得ている情報と合致した場合、価値を失った情報を提供させる。



 オレは小声で“サトラセ”と唱えてみた。

 すると、神経が研ぎ澄まされ、何かが体から出ているような感覚があった。

 もう一度“サトラセ”と唱えてみるとその感覚が消失する。

 この感覚がスキルの発現によるものだと考えて間違いないだろう。


 そして、レノやルーネとの会話から得られた結果から、サトラセの効果は説明通りで間違いない。



 例えば、オレが“分からない”と断言すれば、相手は本当に“オレは分かっていない”と悟る。

 もしかすると、“分かっている”のに“分からない”と言っているかもしれないが、相手は“オレは分かっていない”と悟ってしまう。


 オレがレノに“重要な情報がある”と言ったことも同じだ。

 確かにオレは違う世界にいたのだから、レノが持っていない情報があるのは当たり前だ。

 だが、“重要な情報”かどうかはレノが判断することである。

 それでもレノはオレが“重要な情報”を持っていると悟った。


 決め手は最後にオレが“魔族だ”と断言したことだ。

 レノはオレが“魔族が魔法を発動したということを知っている”と悟った。オレは真実を知らない。スワンから間接的に教えてもらっただけなのに。

 結果として、レノにとってこの情報は“交渉に使える情報”ではなくなり、オレとレノの間で“お互いに知っている情報”となった。

 そのため“価値を失った情報”をオレに漏らした。



 条件は断言することだけ。

 会話の中で断言しないように話をすれば、スキルを有効化したままでも問題ない。

 ただし、注意すべきこともある。

 一対一であれば良いが、一対複数だと事情が複雑になる。

 便利ではあるが、使いどころは注意が必要だ。


 「なれるまでは、集団の中では使わない方が良いかもな。

 もし、阻害するスキルを持っている者がいたらまずい。

 身内が急に情報を漏らし始めれば、何かあったと怪しむに違いない」


 サトラセにより交渉の場では優位に立つことができる。

 知っている情報に価値は無い。

 相手は勝手にオレが知っていると錯覚する。

 つまり、知らなかった情報でも知っていた事にして交渉すればいい。


 「ユニークスキルの称号スキル、サトラセか。

 つまり、オレは“サトラセ士”になったってことなのかな」


 言霊の発現条件と効果も確認する必要があるが、まずは一つのスキルを確実に使いこなせるようになったほうが良いだろう。


 「何事も、コツコツとコツコツと積み上げる。それがオレ的ルールだ」


 思考は次に進む。

 サトラセは戦闘でも活用できるのか、そんなことを考え始めていた。

 オレの少し前を歩くルーネは、オレの様子を気にすることもなく、街に向かって歩き続けている。



--------------------------------------


 それからしばらく街道を歩き続けていた時のことだった。


 森の中をしばらく進んだところで、血生臭い臭いに気がついた。

 少し先の方から、風に乗って運ばれてきているようだ。

 ルーネも気がついたようで、しきりに周囲を気にしている。


 索敵【気配】を使うが周囲に反応はない。

 念のため索敵【嗅覚】を使ってみると、気配を絶っている反応を発見した。



 (これは、獣の匂いだ。

 まだ少し先だけど、このまま進むと出くわすぞ。

 もしかして、待ち伏せているのかも)



 「この先に索敵反応があるよ」

 「反応? ちょっと待って」


 そう言うとルーネは神経を研ぎ澄まさるように集中する。


 「私の索敵には反応はないんだけど。貴方……、まあ、いいわ。

 この臭いに引き寄せられた魔物の可能性が高いわね。

 また、きっとあいつらだわ」


 ルーネの顔色は優れない。

 なにやら思い当たるところがあるみたいだ。


 「どういうこと?」

 「魔物を討伐したら素材を剥ぎ取り、速やかに結晶石化させる。

 それが最低限のルールよ。理由は他の魔物をおびき寄せるから。

 でも、最低限の対応をせずに、放置している者達がいる」

 「そっか。ルーネはその者達を知っているってことだね」

 「ええ。トクネス達でしょうね」


 ここでトクネス達の名前が出てきたことで、オレのトクネス達に対する印象が下がっていく。


 「でも、ここで足止めされる訳にはいかないわ。

 このままのペースで進んでいくと、街に着くころには午後になる。

 貴方の索敵のスキルって、どこまで分かるのかしら?」

 「このスキルは使い始めたばかりでさ。存在有無位しか分からないよ」

 「そう。でも、ないよりはましね。先制攻撃は避けられるわ」


 索敵【嗅覚・聴覚】の熟練度は無星だったが、確かにルーネの言う通りで、先制攻撃を避けられるだけでも利便性は高い。

 率先する必要はないだろうが、このスキルの熟練度も上げていいだろう。


 「さすがに中級レベルの魔物と言うことはないと思うけど。

 警戒しながら進みましょう。

 私は後衛だけど、この辺りの魔物なら問題ないはずよ」

 「あのさ、オレも戦えるんだけど」

 「……さっきも言ったけど、レノの体を傷つけて欲しくないの」

 「だけど、この先もずっと“戦わない”なんてことはできないだろ」


 ルーネの眉の中心が押し上がり八の字になる。

 思っていることが顔に出やすいタイプのようだ。


 「分かったわ。でも無茶はしないと約束して」

 「了解」



 周囲を警戒しながら街道を街に向かって歩き続けると、その途中で道の中央にそれらを見つけた。

 血溜まりとともに何かの死骸が放置されている。


 「フォレストラビット。魔物よ。間違いなくトクネス達の仕業ね」

 「なぜ分かるんだ?」


 オレはそうルーネに言って魔物の死骸に近寄る。

 レノの記憶から辛うじてフォレストラビットであると分かった。

 魔物は首、手、足を切断後、放置されている。


 「なるほど、ね。愉快犯?」

 「あいつ達は命を軽んじている。いつか痛い目にあうわ」

 「その前に、オレ等が二次被害に遭遇しないように注意しないと」


 オレがそう言うとルーネは警戒を強めた。

 ルーネも感じ取ったらしい。

 さっきまで気配を絶っていた何かが、殺気を放ちながら近寄ってきていた。


 「来た。魔物で間違いないと思うけど、一匹は大型だよ」

 「なんでなの。信じられないけど、気配を消すスキルを持っているようね。

 スキルを解除したのか、今は私も察知できるわ。

 しかもこれは……よりによって中級レベルの魔物かもしれない」


 初戦が中級レベルの魔物との戦闘。そう考えると、頭に血が集まったように顔がかっと熱くなった。

 全身の血が暑くなったような感覚を覚え、身体が微妙に震え出す。



 (冷静になれ。鍛練で何回死んだと思っている。

 あれを無駄にしてはいけない。あれより辛い事なんてそうそうない。

 落ちついて対応すれば、絶対に大丈夫だ。

 全ての基礎は、レノから叩き込まれたはずだろ?)


 レノとの鍛練を思い出し、深く息を吸い、肺の中の空気を全て吐き出すつもりで息を吐く。


 「すぅぅぅぅ……はぁぁぁぁ……。よしっ!」


 意外にも冷静になった頭で準備を整える。

 腰の裏の鞘から黒石のダガーを抜き出し、臨戦態勢で迎え撃つ。


 そっとルーネの様子を窺うと顔色は優れなかった。

 中級レベルの魔物は想定外だったのかもしれない。

 怪我で済むのであれば良い。

 下手したら“死”の可能性が有ると考えているのだろう。


 それでも覚悟を決めたのか、ルーネは杖を真正面に構え、魔法発動の準備を始めた。


 「……全部で気配は三つね。正面からは大きい気配が一つ。

 右側面から小さい気配が二つ。あぁ、もう。

 厄介ね、同時に来るつもりだわ」

 「正面はオレが相手するよ。右側面の二匹を相手してもらえるか?」

 「正気? 正面から来る魔物は中級レベルの可能性があるのよ!」

 「だからこそだよ。オレとレノは前衛だから」


 ルーネの体から隠し切れていない殺気がオレに向かって放たれてきた。

 レノとの鍛練がなければ、ちびりかねない殺気だ。


 「私達は初対面だし、連携の経験なんてない。

 それに後衛の私が三匹の魔物を同時に相手するのは、はっきり言って無謀だわ。

 だから、セオリーに従うことにするわ。

 でもその体に傷の一つでもつけたら……絶対に許さないわよ」


 オレからすれば迫ってきている魔物より、よっぽどルーネのほうが恐ろしい。

 いずれにしても、方針が決定したら後はやるだけ。

 前衛のオレが大型の魔物を相手し、オレが討伐するまでの間、後衛のルーネが小型の魔物を引きつける。


 「分かった。任せて。来たよっ!」



 ガサガサと草木をかきわけ、そいつらは姿を現した。

 中級レベルの魔物、フックネイルベアが一匹。

 低級レベルの魔物、ブラウンスピアボアが二匹。

 魔物の姿を現した直後、ルーネがボアに向けて魔法を発動した声が聞こえた。



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